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覚醒
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その美しい海は、俺に絶望を与えた。
俺の知っているネルト村は近くに絶対に海なんてなかったからだ。
薄々感じていた。
ネルト村から遥か彼方に来てしまったんじゃないかと。
あんな大きな霊獣が、そこらへんに居る訳ないのだ。
国の軍隊が束で戦っても勝てないような霊獣がここには多すぎる。
ここは大陸の端っこなのか、それとも島なのか。
島な気がする。
こんな場所、人が住めるとも思えないからだ。
化物のような霊獣だらけの島で、俺は一人で居る。
こんなオモチャのような槍一つで。
笑えてくるな。
けど、まだ生きている。
こんな地獄でもまだ生きている以上、動かないと。
「洞窟に戻ろう」
湖が近くにないと死んでしまう。
俺は記憶を頼りに、再び森に戻る。
パニックになっていたせいで全く覚えていない。
所々折れている草木から自分の進んだであろう道を探して歩く。
あのゴリラと猪はどうなったんだ?
まだいるなら引越しも考えないといけない。
こんな所じゃ自分の居場所もないな。
不幸中の幸いかあれほど大きな霊獣であれば、遠くからでも分かりやすいはず。
そんなことを考えながら歩いていると、背後から気配を感じた。
何かいる。
俺は少しずつ速度を上げる。
だが、相手も追いかけてきているようだ。
「畜生……なんでどこに行っても霊獣が居るんだよ!」
背後から追いかけてきていたのは狼だった。
速い。
逃げ切れない。
徐々に距離が詰められる。
そして遂に奴の牙が俺の足に突き刺さる。
「ぐうっ……!」
痛い!
足をやられた。
逃げられない!
「放せ、化物!」
俺は必死で、狼に槍を突き立てる。
だが、大きな傷は与えられない。
狼は俺の一撃が煩わしかったのか、牙を足から抜き距離を取った。
頼む……逃げてくれ。
だが、俺の祈りはむなしく狼は再度襲い掛かって来た。
俺は必死で突きを放つも、あっさりと躱され奴の牙が肩に刺さる。
牙が肉を突き破る音がした。
「ああああああああああああああああああああ!」
痛い痛い痛い!
死。死。死。
痛みで何も考えられない。
涙が出た。
「誰か助けて!」
叫ぶが、助けに来る者など居るはずもない。
どんどん牙が俺の体の奥深くまで刺さっていく。
ここで死ぬのか。
「あ、あ……」
意識が遠くなる直前、俺が思ったのはただ一つだった。
死にたくない。
死にたくない!
「ああああああああ!」
ずりゅ。
腰の下あたりに何か違和感を感じた。
だが、その違和感の原因はすぐに分かった。
尻尾。
俺の腰の下あたりから尻尾が生えていた。
深紅の鱗に包まれたトカゲのような一ユードを超える長い尻尾。
え?
だが、初めて見た尻尾の使い方は本能的に分かった。
俺はすぐさまその尻尾を思い切り狼に叩きつける。
「ギャウウウッ!」
狼の骨が折れる音と共に、悲鳴が上がる。
強い。この尻尾は俺の体より格段に。
狼は危険を感じたのか、逃げるような動作をとる。
だけど、逃がさない。
俺は尻尾を狼の首を狙い巻き付けると、そのまま締め付ける。
骨が軋む音が響く。
そして、最後には首が折れる音と共に、狼を仕留めた。
「い……生きている」
肩からは血が溢れ出ている。
このまま、死んでしまうかもしれない。
けど、今まだ俺は生きている。
背中からは太い尻尾が見えている。
俺は命を救ってくれた尻尾をじっと見つめる。
けど、せっかく生き残ったのに俺の頭の中は真っ白だった。
「え? どうして尻尾なんて……? 俺は……いったい何者なんだ!」
頭が混乱して、何も分からなくて叫んだ。
分からない。
だって俺に尻尾があるなんて、おかしいじゃないか。
父さんは森人族のエルフ。母さんは人間族。
だから……蜥蜴(とかげ)族のような尻尾なんて生えるはずがない!
これは全部夢。
そうとしか思えない。
けど、肩の痛みが現実であることを教えてくれる。
これが現実だとしたら……母さんは俺の母さんじゃない。
だって俺は蜥蜴族のような獣人種の血が混じっているんだから!
「ああ……何も分からない」
もしかして父さんも俺の父親じゃないのかもしれない。
だから……俺はここに居るのか。
実の子供じゃないからここに捨てられたの?
辻褄があってしまう。誰も助けにこないのも。
こんな場所に捨てられたことも。
俺はただ絶望した。
俺の知っているネルト村は近くに絶対に海なんてなかったからだ。
薄々感じていた。
ネルト村から遥か彼方に来てしまったんじゃないかと。
あんな大きな霊獣が、そこらへんに居る訳ないのだ。
国の軍隊が束で戦っても勝てないような霊獣がここには多すぎる。
ここは大陸の端っこなのか、それとも島なのか。
島な気がする。
こんな場所、人が住めるとも思えないからだ。
化物のような霊獣だらけの島で、俺は一人で居る。
こんなオモチャのような槍一つで。
笑えてくるな。
けど、まだ生きている。
こんな地獄でもまだ生きている以上、動かないと。
「洞窟に戻ろう」
湖が近くにないと死んでしまう。
俺は記憶を頼りに、再び森に戻る。
パニックになっていたせいで全く覚えていない。
所々折れている草木から自分の進んだであろう道を探して歩く。
あのゴリラと猪はどうなったんだ?
まだいるなら引越しも考えないといけない。
こんな所じゃ自分の居場所もないな。
不幸中の幸いかあれほど大きな霊獣であれば、遠くからでも分かりやすいはず。
そんなことを考えながら歩いていると、背後から気配を感じた。
何かいる。
俺は少しずつ速度を上げる。
だが、相手も追いかけてきているようだ。
「畜生……なんでどこに行っても霊獣が居るんだよ!」
背後から追いかけてきていたのは狼だった。
速い。
逃げ切れない。
徐々に距離が詰められる。
そして遂に奴の牙が俺の足に突き刺さる。
「ぐうっ……!」
痛い!
足をやられた。
逃げられない!
「放せ、化物!」
俺は必死で、狼に槍を突き立てる。
だが、大きな傷は与えられない。
狼は俺の一撃が煩わしかったのか、牙を足から抜き距離を取った。
頼む……逃げてくれ。
だが、俺の祈りはむなしく狼は再度襲い掛かって来た。
俺は必死で突きを放つも、あっさりと躱され奴の牙が肩に刺さる。
牙が肉を突き破る音がした。
「ああああああああああああああああああああ!」
痛い痛い痛い!
死。死。死。
痛みで何も考えられない。
涙が出た。
「誰か助けて!」
叫ぶが、助けに来る者など居るはずもない。
どんどん牙が俺の体の奥深くまで刺さっていく。
ここで死ぬのか。
「あ、あ……」
意識が遠くなる直前、俺が思ったのはただ一つだった。
死にたくない。
死にたくない!
「ああああああああ!」
ずりゅ。
腰の下あたりに何か違和感を感じた。
だが、その違和感の原因はすぐに分かった。
尻尾。
俺の腰の下あたりから尻尾が生えていた。
深紅の鱗に包まれたトカゲのような一ユードを超える長い尻尾。
え?
だが、初めて見た尻尾の使い方は本能的に分かった。
俺はすぐさまその尻尾を思い切り狼に叩きつける。
「ギャウウウッ!」
狼の骨が折れる音と共に、悲鳴が上がる。
強い。この尻尾は俺の体より格段に。
狼は危険を感じたのか、逃げるような動作をとる。
だけど、逃がさない。
俺は尻尾を狼の首を狙い巻き付けると、そのまま締め付ける。
骨が軋む音が響く。
そして、最後には首が折れる音と共に、狼を仕留めた。
「い……生きている」
肩からは血が溢れ出ている。
このまま、死んでしまうかもしれない。
けど、今まだ俺は生きている。
背中からは太い尻尾が見えている。
俺は命を救ってくれた尻尾をじっと見つめる。
けど、せっかく生き残ったのに俺の頭の中は真っ白だった。
「え? どうして尻尾なんて……? 俺は……いったい何者なんだ!」
頭が混乱して、何も分からなくて叫んだ。
分からない。
だって俺に尻尾があるなんて、おかしいじゃないか。
父さんは森人族のエルフ。母さんは人間族。
だから……蜥蜴(とかげ)族のような尻尾なんて生えるはずがない!
これは全部夢。
そうとしか思えない。
けど、肩の痛みが現実であることを教えてくれる。
これが現実だとしたら……母さんは俺の母さんじゃない。
だって俺は蜥蜴族のような獣人種の血が混じっているんだから!
「ああ……何も分からない」
もしかして父さんも俺の父親じゃないのかもしれない。
だから……俺はここに居るのか。
実の子供じゃないからここに捨てられたの?
辻褄があってしまう。誰も助けにこないのも。
こんな場所に捨てられたことも。
俺はただ絶望した。
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