55 / 75
牙を
しおりを挟む
(駄目だ……子供とはいえ火龍! 勝てん!)
「なに逃げているんだ?」
必死で逃げるケルベロスの両足を、リオルは宙から爪で斬り裂く。
それにより、ケルベロスはバランスを崩し、地面に倒れ込む。
その顔は恐怖で歪んでいた。
その目の前に火龍となったリオルが降り立つ。
「お前はずっと自分が捕食者だと思ったか? この世界は、喰うか、喰われるかだろ? なら……お前が喰われる側に回るのはなんらおかしくない」
リオルは淡々と告げる。
(この声……やはり先ほどの人間なのか?)
「クゥーン……」
ケルベロスは勝つことを諦め、必死に媚びたような声を出す。
だが、次の瞬間、残りの二つの首はリオルの爪によって落とされた。
◇◇◇
俺は自らが完全獣化したことにすぐ気付いた。
溢れるような力。
鋭い爪と牙に、大きな翼。
勝てるとは思えない程強いケルベロスは、完全獣化した自分にとって雑魚も同然だった。
けど、そんなことはどうでもいい。
俺はケルベロスを殺した後すぐ、ネロの元に駆け寄る。
「ネロ!」
俺は声をかけるも、反応はない。
ただケロベロスは食べ始めたばかりだったのか、呼吸はしている。
だが、明らかに重傷だった。
俺はケルベロスの霊胞を取り出し、ネロに食べさせようとするも、とても食べられる状態ではないようで吐き出してしまった。
まずい……このままじゃネロが。
俺はネロを抱きかかえると、師匠の元へ走った。
「し、師匠――――!」
俺は叫ぶ。
師匠は俺の声から、緊急の事態であることを察したのかすぐさまやって来てくれた。
そして、ネロの様子を見て大声を上げる。
「なんだ、この怪我は!? 一体何があった……?」
「ご、ごめんなさい……俺が馬鹿だからケルベロスと戦って……。俺は負けて、ネロが庇ってくれて……ごめんなさい」
言いながら、自分の馬鹿さ加減に涙が溢れる。
俺が自分の実力を過信したせいで、ネロは今死にかけているのだ。
「泣くな。今泣いても何も変わらん」
「……はい。ネロは治りますか⁉」
俺は師匠に尋ねる。
けど、この島に医者など居ない。どうしたらいいんだ。
「このレベルの傷を治せるのは、大陸でも優秀な変主の治療が必要だろうな」
「そんな……この島には、俺達以外には……」
俺は項垂れる。
「落ち着け、リオル」
師匠はそう言いながら、何か考えるようなそぶりを見せる。
「何か手があるんですか⁉ 教えてください、お願いします!」
「上級ポーションを作れば、あるいは……」
「本当ですか! じゃあすぐに作りましょう! 何が必要なんですか?」
「素材は揃っている。後一つを除いてな」
師匠は顔を歪ませながら言った。
そこで俺は思い出した。
上級ポーションの作り方を習えなかった理由は、素材の一つが手に入らなかったからだ。
「最後の一つはベルクマンモスの牙。厄災級の霊獣だ」
師匠は淡々と言った。
「あの山みたいな霊獣ですか⁉」
前に一度この島で見たことがある。
全長五十ユードを超える、動く山のようなマンモスである。
「ああ。それでも行くか?」
「分かりました。俺があの牙を折って必ず持ってきます」
行かない選択肢なんて最初からない。
俺を守ってくれたネロを見捨ててまで、この島で生きる気なんてないからだ。
「……はあ、そう言うと思ったよ。私も行く。一人だと間違いなく死ぬぞ。二人でも変わらないがな」
「ですが、師匠はもう……」
あんな霊獣と戦う体力なんてないんじゃ、という言葉が出かかった。
「舐めるな。長時間戦う時間はないが、短時間ならまだやれる。時間がない。最低限だけ作戦を練ってすぐに動くぞ」
「はい!」
俺達はベルクマンモスを探すために動き始める。
「なに逃げているんだ?」
必死で逃げるケルベロスの両足を、リオルは宙から爪で斬り裂く。
それにより、ケルベロスはバランスを崩し、地面に倒れ込む。
その顔は恐怖で歪んでいた。
その目の前に火龍となったリオルが降り立つ。
「お前はずっと自分が捕食者だと思ったか? この世界は、喰うか、喰われるかだろ? なら……お前が喰われる側に回るのはなんらおかしくない」
リオルは淡々と告げる。
(この声……やはり先ほどの人間なのか?)
「クゥーン……」
ケルベロスは勝つことを諦め、必死に媚びたような声を出す。
だが、次の瞬間、残りの二つの首はリオルの爪によって落とされた。
◇◇◇
俺は自らが完全獣化したことにすぐ気付いた。
溢れるような力。
鋭い爪と牙に、大きな翼。
勝てるとは思えない程強いケルベロスは、完全獣化した自分にとって雑魚も同然だった。
けど、そんなことはどうでもいい。
俺はケルベロスを殺した後すぐ、ネロの元に駆け寄る。
「ネロ!」
俺は声をかけるも、反応はない。
ただケロベロスは食べ始めたばかりだったのか、呼吸はしている。
だが、明らかに重傷だった。
俺はケルベロスの霊胞を取り出し、ネロに食べさせようとするも、とても食べられる状態ではないようで吐き出してしまった。
まずい……このままじゃネロが。
俺はネロを抱きかかえると、師匠の元へ走った。
「し、師匠――――!」
俺は叫ぶ。
師匠は俺の声から、緊急の事態であることを察したのかすぐさまやって来てくれた。
そして、ネロの様子を見て大声を上げる。
「なんだ、この怪我は!? 一体何があった……?」
「ご、ごめんなさい……俺が馬鹿だからケルベロスと戦って……。俺は負けて、ネロが庇ってくれて……ごめんなさい」
言いながら、自分の馬鹿さ加減に涙が溢れる。
俺が自分の実力を過信したせいで、ネロは今死にかけているのだ。
「泣くな。今泣いても何も変わらん」
「……はい。ネロは治りますか⁉」
俺は師匠に尋ねる。
けど、この島に医者など居ない。どうしたらいいんだ。
「このレベルの傷を治せるのは、大陸でも優秀な変主の治療が必要だろうな」
「そんな……この島には、俺達以外には……」
俺は項垂れる。
「落ち着け、リオル」
師匠はそう言いながら、何か考えるようなそぶりを見せる。
「何か手があるんですか⁉ 教えてください、お願いします!」
「上級ポーションを作れば、あるいは……」
「本当ですか! じゃあすぐに作りましょう! 何が必要なんですか?」
「素材は揃っている。後一つを除いてな」
師匠は顔を歪ませながら言った。
そこで俺は思い出した。
上級ポーションの作り方を習えなかった理由は、素材の一つが手に入らなかったからだ。
「最後の一つはベルクマンモスの牙。厄災級の霊獣だ」
師匠は淡々と言った。
「あの山みたいな霊獣ですか⁉」
前に一度この島で見たことがある。
全長五十ユードを超える、動く山のようなマンモスである。
「ああ。それでも行くか?」
「分かりました。俺があの牙を折って必ず持ってきます」
行かない選択肢なんて最初からない。
俺を守ってくれたネロを見捨ててまで、この島で生きる気なんてないからだ。
「……はあ、そう言うと思ったよ。私も行く。一人だと間違いなく死ぬぞ。二人でも変わらないがな」
「ですが、師匠はもう……」
あんな霊獣と戦う体力なんてないんじゃ、という言葉が出かかった。
「舐めるな。長時間戦う時間はないが、短時間ならまだやれる。時間がない。最低限だけ作戦を練ってすぐに動くぞ」
「はい!」
俺達はベルクマンモスを探すために動き始める。
16
あなたにおすすめの小説
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?
さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。
僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。
そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに……
パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。
全身ケガだらけでもう助からないだろう……
諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!?
頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。
気づけば全魔法がレベル100!?
そろそろ反撃開始してもいいですか?
内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる