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黒王猿
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黒王猿。
全長十ユードを超える四本腕の黒いゴリラ。
鋼のような筋肉に、常に燃えている背中。
まさしく食物連鎖の頂点とも言える風格が確かにあった。
俺は島に来てすぐの時、その姿を見た。
あの時は、ただ恐怖だった。
人間が勝てるなんて到底思えない。
生物として圧倒的な力の差を感じた。
ただ震えて、逃げ回ることことしかできなかった。
黒王猿はその四本の腕で、大量の果物を貪っている。
その目がこちらに向くと、静かに果物を地面に置いた。
前回会った時は、俺に気付いてすらいなかった黒王猿が俺を敵と見定めた。
怖い。
だが、同時に得も言われぬ喜びを感じていた。
この一年半、必死で鍛錬を続けていた。
その結果、この怪物が敵と認めてもらえる程度には成長できたのだ。
黒王猿がその太い四本の腕で胸を叩く。
その轟音と共に、木々が、大地が震える。
「ウホオオオオオオオオオオオオオオオ!」
叫び声と共に、黒王猿は立ち上がった。
「心に灯火を、剣に魂を。全身獣化」
恐怖に襲われた時ほど、心に灯火を。
師匠の教えを思い出しながら、俺は全身獣化を行う。
体中が鱗で覆われ、翼が、尻尾が生える。
手足には大きな爪が、その顔には大きな牙が。
初めての厄災級との一騎打ちが始まる。
地が揺れる音と共に、黒王猿はこちらに向かって走る。
拳に炎を纏わせ、大きく振りかぶっている。
尻尾で受け止めるか、考えるもすぐに考えを改める。
危険だ!
黒王猿がその拳を振り下ろすと同時に、俺は地面を蹴り、その一撃を回避した。
その拳は比喩ではなく、地面を叩き割った。
まるで地震が起こったのかと錯覚するほど地面が裂ける。
「まじかよ……」
まともに殴り合うのは論外だな。
命がいくらあっても足りそうにない。
速さはこちらに分がある。
至近距離で躱しながら、削る。
俺は翼を広げると、空を飛びながら一気に距離を詰める。
それに合わせるように黒王猿は拳を振るう。
ぎりぎりの距離でそれを躱しながら、その爪を振るう。
わずかに黒王猿の皮膚を削る。
硬い……。
全身が筋肉の塊であることを今一度感じさせる硬度だ。
俺は奴の周囲を飛び回りながら、少しずつ様々な場所を爪で裂く。
だが、どれもそこまでダメージを与えられていない。
それに……思ったよりも危険だな。
黒王猿の振るう拳一撃一撃が凄まじい。
俺は背後に回るように移動する。
すると、背中の炎が突然大きく燃え盛った。
視界全てが炎で埋まる。
見え……ない……。
次の瞬間、俺は何かが風を切る音を聞いた。
まずい!
俺は咄嗟に上空に避難する。
黒王猿は半円状に腕を振り、裏拳を放ったようだ。
その後もその四本の腕を縦横無尽に振るう。
背後も隙が無いな。
ならば、正面から行く。
俺は真正面から加速して、突撃する。
黒王猿の拳を躱し、そのまま尻尾で突きを放つ。
霊気で強化されたその一撃は確かに黒王猿の胸に刺さった。
だが、その一撃は奴の胸を完全に貫くことなく、途中で止まる。
まだ威力が足りないのか。
そう思って、尻尾を引き抜こうとした瞬間、異変に気付く。
尻尾が抜けない。
筋肉で止められている。
「ウホオオオオオオオオオオオオオオオ!」
咆哮と共に、その拳が俺に向かって叩き込まれる。
「があっ!」
俺はその一撃を受け、吹き飛ばされる。
全長十ユードを超える四本腕の黒いゴリラ。
鋼のような筋肉に、常に燃えている背中。
まさしく食物連鎖の頂点とも言える風格が確かにあった。
俺は島に来てすぐの時、その姿を見た。
あの時は、ただ恐怖だった。
人間が勝てるなんて到底思えない。
生物として圧倒的な力の差を感じた。
ただ震えて、逃げ回ることことしかできなかった。
黒王猿はその四本の腕で、大量の果物を貪っている。
その目がこちらに向くと、静かに果物を地面に置いた。
前回会った時は、俺に気付いてすらいなかった黒王猿が俺を敵と見定めた。
怖い。
だが、同時に得も言われぬ喜びを感じていた。
この一年半、必死で鍛錬を続けていた。
その結果、この怪物が敵と認めてもらえる程度には成長できたのだ。
黒王猿がその太い四本の腕で胸を叩く。
その轟音と共に、木々が、大地が震える。
「ウホオオオオオオオオオオオオオオオ!」
叫び声と共に、黒王猿は立ち上がった。
「心に灯火を、剣に魂を。全身獣化」
恐怖に襲われた時ほど、心に灯火を。
師匠の教えを思い出しながら、俺は全身獣化を行う。
体中が鱗で覆われ、翼が、尻尾が生える。
手足には大きな爪が、その顔には大きな牙が。
初めての厄災級との一騎打ちが始まる。
地が揺れる音と共に、黒王猿はこちらに向かって走る。
拳に炎を纏わせ、大きく振りかぶっている。
尻尾で受け止めるか、考えるもすぐに考えを改める。
危険だ!
黒王猿がその拳を振り下ろすと同時に、俺は地面を蹴り、その一撃を回避した。
その拳は比喩ではなく、地面を叩き割った。
まるで地震が起こったのかと錯覚するほど地面が裂ける。
「まじかよ……」
まともに殴り合うのは論外だな。
命がいくらあっても足りそうにない。
速さはこちらに分がある。
至近距離で躱しながら、削る。
俺は翼を広げると、空を飛びながら一気に距離を詰める。
それに合わせるように黒王猿は拳を振るう。
ぎりぎりの距離でそれを躱しながら、その爪を振るう。
わずかに黒王猿の皮膚を削る。
硬い……。
全身が筋肉の塊であることを今一度感じさせる硬度だ。
俺は奴の周囲を飛び回りながら、少しずつ様々な場所を爪で裂く。
だが、どれもそこまでダメージを与えられていない。
それに……思ったよりも危険だな。
黒王猿の振るう拳一撃一撃が凄まじい。
俺は背後に回るように移動する。
すると、背中の炎が突然大きく燃え盛った。
視界全てが炎で埋まる。
見え……ない……。
次の瞬間、俺は何かが風を切る音を聞いた。
まずい!
俺は咄嗟に上空に避難する。
黒王猿は半円状に腕を振り、裏拳を放ったようだ。
その後もその四本の腕を縦横無尽に振るう。
背後も隙が無いな。
ならば、正面から行く。
俺は真正面から加速して、突撃する。
黒王猿の拳を躱し、そのまま尻尾で突きを放つ。
霊気で強化されたその一撃は確かに黒王猿の胸に刺さった。
だが、その一撃は奴の胸を完全に貫くことなく、途中で止まる。
まだ威力が足りないのか。
そう思って、尻尾を引き抜こうとした瞬間、異変に気付く。
尻尾が抜けない。
筋肉で止められている。
「ウホオオオオオオオオオオオオオオオ!」
咆哮と共に、その拳が俺に向かって叩き込まれる。
「があっ!」
俺はその一撃を受け、吹き飛ばされる。
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