僧侶アイーシャは生活費のために一人でダンジョンに挑むが不思議な魔導人形を手に入れる。そして彼女の運命が動き始める。

登美川ステファニイ

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第二話 魔導人形

2-4

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「早速これから鑑定に持っていくとしよう。内職の品物を持っていく用があるから、ついでに両替商の所に行くよ」

「うん、お願い! あっ、ちょっと待って」

「何じゃ?」

 アイーシャはじっと魔導人形を見つめた。

「この魔導人形も売れるかな?」

「何だって?」
「何じゃと?」
 魔導人形とエルデンが一緒に声を上げた。

「その金のタイルはダンジョンで見つけた。こいつもダンジョンで見つけたんだから、ひょっとするとすごい値打ち物かもしれない。おつむの方はちょっと怪しいけど、一応一人で動けるし会話もできる」

「ううむ、確かに価値はあるかも知れんが……彼はお前の恩人じゃぞ?」
 エルデンは戸惑うように言った。

「恩人って言ったって所詮人形でしょ? お金になるんならその方がいいわ。別に用心棒も下男も必要ないし」

「しかし僕は君を守る使命がある。売られて君以外の他人の物にされては困る」
 魔導人形は立ち上がり抗弁した。しかし言葉ほどには、その表情は困っているようには見えなかった。

「ふん! そんなのあんたの都合でしょ? 大体あんたがまともな魔導人形かなんて分からないわ! だって自分の名前さえ覚えてないんでしょ?!」

「何、名前を覚えとらんのか、彼は」
 エルデンが心配そうな視線を魔導人形に向けた。

「はい。主を守るために作られたことは覚えてるんですが、それ以外のことが今一つ……。名前……どっかに書いてないかな?」
 そう言いながら魔導人形は自分の腕や脇の下を確認する。

「ポンコツね! お前なんか売り払ってやるから、早くこの契約とやらを解除しなさいよ!」
 アイーシャは左手の甲の模様を見せながら言った。赤い腫れの色は引いて普通の肌の色になっていたが、模様そのものはくっきりと残ったままだった。これからずっとこのへんな模様をつけたままなんて、アイーシャはまっぴらごめんだった。

「契約は主側から成される。解除もしかりだ。解除したければお好きにどうぞ」
 魔導人形はそっけなく言った。

「何よそれ! じゃあ解除! 解除解除! クビ! 解雇! 暇をくれてやるわ! 一昨日来やがれ!」

 アイーシャは矢継ぎ早に叫んだが、左手の甲も魔導人形にも何の変化も起きなかった。ただエルデンがアイーシャの剣幕に驚いただけだった。

「アイーシャ。彼は命の恩人なんじゃ。もう少し礼儀を持って話しかけなさい」

「おじいちゃんは黙ってて! これはこいつと私の問題よ。解除ができないなら……こき使ってやる!」

「命令には従うが……何をすればいいんだ?」
 魔導人形はどこか面倒くさそうな様子で聞いた。

「料理に洗濯、掃除に薪割り。仕事なんかいくらでもあるわよ! でもそうね……あんたせっかく剣を持っているんだし……あんた強いの?」

「強い……? さあ? よく分からない」

「分からないって、そんなんで私を守るとか言ってた訳? はぁ?! ふざけてんの?! 大体あんたひょろひょろじゃない!」

 言いながらアイーシャは魔導人形の腕を指差す。腕や脚は木の枝と言っても過言ではないほどに細い。まるで肉をそぎ落とした鳥の骨だった。

「手足は確かに細いが、剣の使い方は分かる」
 魔導人形は左手を腰の剣の柄尻に置いた。

「しかし、具体的にどう戦うのかというとよく分からないな。戦えるような気はするが、自分が強いのかどうか見当もつかない」

「何よそれ! 肝心なところがポンコツじゃない! じゃあ……試してみるか」
 アイーシャは腕組みをし、窓の外を眺めた。視線の先には裏山とその麓の森が広がっていた。

「何をだ?」
 魔導人形はアイーシャの言葉に首をかしげる。

「あんたの腕前をよ! あんたの見た感じは戦士っぽいけど、戦士として役に立つかどうか確認してあげる! もし役に立つなら売り払うのはやめて私の従者としてこき使ってあげる」

「こき使われるのか……確認というと、何をするんだ?」

「決まってるでしょ! 狩りよ」

「狩り? 何を狩るんだ」
 魔導人形は首を傾げる。

「決まってるでしょ。魔物よ、ま、も、の。あんたがポンコツか使える魔導人形か見極めてやるわ!」
 アイーシャは不敵な笑みを浮かべ、魔導人形を睨みつけた。
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