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10話 答え
しおりを挟む「無理なの。私ね新しい彼氏が出来たの」
時が止まった。吹く風の音も。車の音。全てが止まる。
そして急に胸が高鳴り動揺を隠しきれない。とっさに立ち上がり彼女と距離を置く。
ー新しい彼氏が出来たって。だって...ー
別れた時もまだ好きって。忙しいから別れるって。嫌いじゃないって事だけが俺の中の安心だった。だからこうやって別れても仲良く出来たし。仲良くしようと思ったのに。
ー結局は他の男がいたから。俺は捨てられたのか。ー
「ふははっ。そっか。良かったじゃん」
なんで笑ったのか。笑うしかなかったから。
「おめでとう。じゃあ」
「待ってよ」
俺は歩みを止めない。すぐに後を追って再び俺のシャツを掴む。
「ごめん。本当にごめん。でも...」
「でも何?」
冷たい言葉が喉を通る。俺は彼女に向き直る。予想はしていた。付き合ってた時から君は大変だった。男友達が多いとは知っていたけど大丈夫だと。一線は越えないと。信じていた。でもそれは違っていたのかもしれない。でもそれを一度も注意できなかった。友達から何を聞いても気にしなかった。したくなかった。その相手もきっとあいつだって。目の奥で嫌なイメージが流れる。
ーやめろー
「先輩なんだろ。相手って」
「...うん」
ーやっぱりー
「ごめん」
「なんで謝るんだよ。別に悪い事じゃないだろ。」
今までの先輩との出来事がよぎる。俺が別れてからちょっと仲良くなった気がした。でもそれは俺をあざ笑う行為だった。
「おめでたいじゃん。おめでとう。離して」
離さない。より一層彼女の掴む手の力は強くなっていく。
「離さないよ。離したくないもん」
ーもうダメだ。ー
黒い塊が俺を支配する。
「離せ」
その言葉に驚いたのか。力が弱まる。その瞬間、俺はその手を振り払った。こんなこと付き合っていた時にはありえない一言と態度だった。
「もういいだろ。どこまで俺を惨めにするんだよ」
「そんなつもりじゃ。」
「俺が悪いんだよ。全部。君を幸せに出来なかったから」
「違う」
「違わない。だから俺はふられ、君は新しい相手を選んだ。ただそれだけ。それ以外何もないんだよ」
彼女は顔をうずめて泣いている。いつもなら抱き締めていた。でももう無理だった。その相手は俺じゃない。新しい相手がいる。虚しさと憤りに襲われ苦しかった。
「もうすがるのは俺じゃないだろ。」
ーさようなら、もう二度と君の事を好きにならないー
慌ただしく過ぎて行く日々を俺はただ何事もないようにただ流されるまま生きていた。そうすれば嫌な事を考えずにいられると思っていた。ふと目につく思い出の場所も、いつも待ち合わせた食堂の席さえも今となってはただの景色の一つ。未練はもうない。通り過ぎて行く。日々が俺の中を巡って行く。
「おーい、こんなとこで何してんの」
昼下がり、俺は1人で昼食を食べていた。無言で隣の荷物を降ろし、座れるスペースを空ける。そこに腰をおろした友人がコンビニの袋を探っている。
「1人で昼食かよ、誘えよ」
「ん、今度は誘うよ」
「お前、変わったよな」
「...そうかな」
「どうだろ、良くも悪くも変わったよ」
ー変わらない、何もかもー
「前からお前1人でいたけどよ。最近は特に」
「みんなといるとしんどい。色々気をつかわせるし」
「まだそんな事言ってんのかよ、次だよ次!」
そう言って目の前を通る女子の集団に目がいく。可愛い系。背は低い。内2人は...目をそらす。
「今のどうよ?」
「...あんまり」
顔を伏せる。隣で笑う友人が食べ終え荷物を背負った。次は一緒の授業か。ゴミを袋に詰め込むと立ち上がった。池を挟んだ向かいの道に見慣れた人影が通る。その瞬間、気を使ったのか、無理やり俺の肩を掴み方向を変えると教室へと向かって歩き出す。
「さ、これが終わったら部活行こうぜ」
「...絶対お前来ないだろ」
俺はこうして今も生きている。表面では何ともないように、でも
ー俺はまだ君を忘れられない。ー
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