ふたつ目の僕

ちより

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5.化け物

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 扉を開けると、意外にも明るい空間が目に入った。開放的な空間とすら思える。本物の木々が植えられており、おそらく外の川をひいて作られた小川が流れている。人口太陽まであるではないか!!地下とは思えないすんだ空気に、想像よりはひどくないのかもしれないと思ってしまう。

 

「あれは、家?」

 ドアには生体認証がついておらず、簡単に入れる。すぐにカメラがついているのを見つける。

 なるほど、あの男はちゃんと見てくれているようだ。だが、カメラのみでマイクはなさそうだ。

「こんにちは」

 中に入るが返事はない。2階はなく、リビングを抜けたところに部屋がある。

「こんにちは?」

 今度はドアをノックし声をかける。

「…………」

「僕は前田歩、15才だ。ええと、勉強はたぶん、よく出来るかな。でも学校は好きじゃない。甘いお菓子は好きだ。それと……たぶん、君と同じで、目が2つしかない」

 その時、ドアの向こうから音が聞こえる。どうやら、ベッドから降りてきたようだ。

 カチャリ

 少しだけあいた隙間から、目が合った。ソレではない、2つの目だ。

「~~~~っ!!」

「あ、やぁ」

 そのまま勢いよくドアが開くと、その男の子は腕をつかんできた。

「助けて」

「え、どうしたの?」

「ここは……化け物がいるんだ」

「化け物?」

「人間みたいなのに、ここに、目がついているんだ。ぎょろぎょろソレが動いて、俺を見るんだ」

「それは、眼なんだからそういうものだろう?」

 当たり前のことを言っているが、なぜかすごくおびえているようだ。まるで、眼がある人間を知らないような。

「もしかして、君の家族は……目が2つなの?」

 聞いていて恥ずかしくなる。遺伝性でないことは何度も検査して分かっていることだし、この姿のせいで、母さんは自分を責め、毎日泣いていたんだから。母さんは悪くない。遺伝子の突然異常だと、何度も励ましてきた。それなのに、僕は今、他にもふたつ目がいるかもしれない、そんな可能性に胸が高なってしまっている。


「当たり前だろうっ!!」

 彼はそう言うと、少しだけ落ち着いてきたのか、つかんでいた腕を離してくれた。

「俺は、気がついたらここにいたんだ。塾の帰りに、大雨の中走っていたら、突然知らない景色になっていて……気がついたら周りには目が3つある化け物だらけだった」

「化け物……」

 彼の中では、目が2つある僕は普通なのだろうか。話していても、当たり前のようにソレとではなく、ふたつ目と目が合うことがたまらなく嬉しい。

「俺和田翔わだかけるっていうんだ。同じ15才だ」

「え?」

「自己紹介だろう? さっきはごめん。腕、痛くないか?」

「うん、大丈夫」

 同い年の子に気軽に話されるなんて、初めてだ。

「お前……歩もここに連れてこられたのか?」

「僕は、その……家から父さんと来たんだ」

 本当のことを言ったら、どう思われるだろうか。迷ったが、嘘はつきたくない。

「そうなのかっ!? 化け物に会わなかったか!?」

「その……君の言う化け物って、おでこに眼がある人たちのことだよね?」

「そうだ、やっぱり会ったんだな? 大丈夫だったか?」

 本気で心配してくれる彼にどう言ったら良いのだろう。

「うっ……」

「どうしたの!?」

 突然膝から崩れ落ちるように座り込む。

「なんか、ここに来てずっと緊張していたから……腹……へっちゃって」

 そういえば、ここに来てから食事も拒否していると聞いた。

「これなら、あるんだけど……」

 持って来たリュックから、朝ごはんを車で食べるようにと、母さんに持たされたおにぎりを取り出す。緊張で食べれず、そのまま入れっぱなしにしていた。

「食べる!!」

 翔はおにぎりをわしづかみにすると、口にめいっぱい詰め込む。

「ゴホッ」

「大丈夫? お茶、飲んで」

 水筒から注いだお茶を一気に飲み干すと、生き返ったように笑う。

「ありがとうっ、助かったぜ」

 歩もなんだかおかしくて、声を出して笑った。感情を出してもソレがこちらを見ない。妙な安心感があった。

「それで、おにぎりとお茶をもって、どうしてこんなところに?」

「うん。僕もここで検査を受けていて……」

「やっぱり捕まったのか!?」

「違うんだ。僕の……周りは……親も……ここに眼があるんだ」

 そう言っておでこを指す。

「え……」

 一瞬固まる彼の目が見れない。

「僕だけが、ソレがないまま生まれて……ふたつ目の人間なんて異常だから……ずっとこの研究所で定期検査を受けているんだ」

「……」

「それで、僕と同じ見た目の子が保護されたからって……会いに来たんだ」

 翔からの返事がない。化け物の子だと言われるだろうか。せっかくの楽しかった時間が、その分胸を締め付けてくる。

「……なら、あいつらは人間、なのか?」

「え?」

「あいつらは化け物じゃなくて、人間なのか?」

 翔の目は真剣だ。

「そう、だよ」

「……あいつら、俺に無理やり点滴させたり、変なガスで気絶させたりしたんだ」

「うん。君が食べないからって……」

「俺の身体を無理やり調べたり、頭に管をつけたりしたんだ!!」

「うん……」

 それは検査する為とは言えなかった。本人の同意なしでの強制は、彼の為とは言えない。食事を無理にとらせるのは……仕方ない。でも、それ以外の行為はどうだろうか。翔が化け物と言う理由が見た目だけではない気がする。

「……あいつらに頼まれて来たのか?」

「それは……」

「…………」

 翔はそのまま部屋へと閉じこもってしまった。

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