ふたつ目の僕

ちより

文字の大きさ
7 / 15

7.友達

しおりを挟む
「ねぇ、新しいコミュニティに行ってみない?」

 あれから1週間、研究所には2度行ったが、翔が部屋から出てくる様子はない。最初は歓迎ムードだった男も、父さんの前ですら無愛想になっていた。

 もちろん、僕はすぐに会ってもらえないことも想定済みだ。1時間ほど部屋の前で僕が経験したことを喋っては帰る。

 この見た目を気味悪がる人も多いが、小学生にもなればそれぞれがスマホやタブレットに夢中になるから、そんなに悪くはない。最近ハマったゲームや、目に悪いからとそんなにさせてもらえないからハッキングした話など、ふたつ目の僕でもこの町ではそれなりに暮らしていることを伝えたい。

 毎回必ず、美味しいと言ってくれていた多めにおにぎりを持っていく。返事はなくても、それだけは食べているらしい。

 それでいい。強制麻酔で身体に管を入れられて栄養を流しこまれるよりはマシだ。

 そう思っていたところに、母さんが別の視覚障害のコミュニティに行かないかと提案してきた。

「どうして?」

 何度も参加してきたが、結局みんなソレはある。見た目で怖がられてことすらあるというのに……

「だって、あなた最近ずっと家にこもっているじゃない? 出かけるのもお父さんと研究所に行く時だけだし……」

「家にこもるのは前からだよ」

「そうだけど、学校があった時は毎日外に出てたじゃない」

 それは登校しているからだろう。とは言わない。口に出さないだけで、機密事項だからと何も聞かされない母さんは心配しているのだろう。

「大丈夫だから。ゲームも約束した時間しかしてない」

「でも、最近パソコンをずっと使っているでしょう。やっぱり目にも悪いし、あなた研究所に行ってから父さんとばかり話しするじゃない? コミュニティが嫌なら、母さんと出かけてみるのはどうかしら?」

 正直、遠出はこの見た目だからしたくない。翔にはブラックジョークのように面白おかしく話しているが、傷つかないといったら嘘になる。

「やめておく」

「そう……分かったわ」

 正直、母さんには感謝している。だが、いつまでも子ども扱いなのは困る。僕がこんな身体だから、余計に心配しているとは分かっているんだが。

「母さん」

「何かしら?」

「明日、デパートに連れて行ってくれる?」

「っ!! もちろんよ。服かしら? すぐ大きくなるものね。それなら靴も見なきゃね!! あっ、そうだわ。髪も切っちゃう? あそこならロボットタイプもあるから、好きだったでしょう?」

 それはもっと小さい頃の話だ。服も靴も全部ネット注文で買えるし、髪も、出かけるのが面倒で自分で切っている。でも、母さんはどうやら服を合わせたり試着させるのが楽しいらしい。

「好きなの買ってもいい?」

 ネットで買うと言っても、カードは親のだ。当然、チェックされる。

「えぇ、もちろんよ」

 上機嫌で階段を降りていく。

 研究所に行く日には、毎回早朝からおにぎりを作ってくれている。自分も車の中で父さんと食べるが、具はどれも凝っている。たまには母さんに付き合わないとな。





「久しぶりねっ!! どこから見ましょうか」

 久しぶりの外出は、父さんは仕事があるからと2人で行くことになった。元々、そのつもりだったが、実際父さんがいないと僕に話しかけてくる量が倍になるので、少しだけ期待していただけに残念だ。

「あっ、ほら!! 歩の好きなメーカーが置いてあるわ。ほら、素材も肌に優しそうよ。フードもあるし、試着してみない?」

 デパートは最新の技術の集合体だ。接客も含め、品出し、会計も全てロボットによる全自動だ。念のため、義眼シールをおでこに貼り、帽子を深めにかぶる。すれ違うだけなら、ふたつ目の子どもとは思わないだろう。

「あれ? お兄ちゃん眼が変だよ!!」

 急に声をかけられ、心臓がはね上がる。

 小さな子どもはまだ眼と目の両方を使う。眼は目よりも顔認識をしないようだが、目も使って人を見る子どもは、シールだと気づいてしまった。

「シールって、偽物? えっ、もしかして歩くん?」

 一緒に歩いていた姉らしき人が反応する。ソレと眼が合う。

「外歩くんだ」

 見覚えのあるソレは、話したことのないはずのクラスの女子だ。

「あら、お友達?」

 母さんが反応する。

「どうして偽物つけてるの?」

「しっ、それ以上は言っちゃダメ」



 これ以上恥ずかしさに耐えられず、その場を逃げるように離れる。

「待って!! 走ったらあぶな……」

 母さんの声は聞こえていたが、それが余計に、1人では何もできないと言われている気がした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アリアさんの幽閉教室

柚月しずく
児童書・童話
この学校には、ある噂が広まっていた。 「黒い手紙が届いたら、それはアリアさんからの招待状」 招かれた人は、夜の学校に閉じ込められて「恐怖の時間」を過ごすことになる……と。 招待状を受け取った人は、アリアさんから絶対に逃れられないらしい。 『恋の以心伝心ゲーム』 私たちならこんなの楽勝! 夜の学校に閉じ込められた杏樹と星七くん。 アリアさんによって開催されたのは以心伝心ゲーム。 心が通じ合っていれば簡単なはずなのに、なぜかうまくいかなくて……?? 『呪いの人形』 この人形、何度捨てても戻ってくる 体調が悪くなった陽菜は、原因が突然現れた人形のせいではないかと疑いはじめる。 人形の存在が恐ろしくなって捨てることにするが、ソレはまた家に現れた。 陽菜にずっと付き纏う理由とは――。 『恐怖の鬼ごっこ』 アリアさんに招待されたのは、美亜、梨々花、優斗。小さい頃から一緒にいる幼馴染の3人。 突如アリアさんに捕まってはいけない鬼ごっこがはじまるが、美亜が置いて行かれてしまう。 仲良し3人組の幼馴染に一体何があったのか。生き残るのは一体誰――? 『招かれざる人』 新聞部の七緒は、アリアさんの記事を書こうと自ら夜の学校に忍び込む。 アリアさんが見つからず意気消沈する中、代わりに現れたのは同じ新聞部の萌香だった。 強がっていたが、夜の学校に一人でいるのが怖かった七緒はホッと安心する。 しかしそこで待ち受けていたのは、予想しない出来事だった――。 ゾクッと怖くて、ハラハラドキドキ。 最後には、ゾッとするどんでん返しがあなたを待っている。

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

6桁の数字と幻影ビルの金塊 〜化け猫ミッケと黒い天使2〜

ひろみ透夏
児童書・童話
ねこ目線のミステリー&ホラー&ファンタジー。知恵と根性だけでどうにかする少女《黒崎美玲》と化け猫《ミッケ》は、家出の途中で怪奇クラブ部長《綾小路薫》と遭遇。朝まで一緒に過ごす約束である場所へ向かった。それはある条件の夜にしか現れない幻影ビル。十億円以上の旧日本軍の金塊が隠されているという都市伝説のビルだった。足を踏み入れた二人と一匹。彼らの前に突如現れた男の正体と、怪奇的な6つの世界が混在する幻影ビルの真実とは……。戦後80年。昭和と令和のキャラが織りなす、現代の子どもたちに届けたい物語です。 ※ 演出上の理由により算用数字を使用しています。 ※ すでに完結済みですが、推敲しながら毎日1〜3話づつ投稿します。

その怪談、お姉ちゃんにまかせて

藤香いつき
児童書・童話
小学5年生の月森イチカは、怖がりな妹・ニコのために、学校でウワサされる怪談を解いてきた。 「その怪談、お姉ちゃんにまかせて」 そのせいで、いつのまにか『霊感少女』なんて呼ばれている。 そんな彼女の前に現れたのは、学校一の人気者——会長・氷室冬也。 「霊感少女イチカくん。学校の七不思議を、きみの力で解いてほしい」 怪談を信じないイチカは断るけれど……? イチカと冬也の小学生バディが挑む、謎とホラーに満ちた七不思議ミステリー!

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

【完結】またたく星空の下

mazecco
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 君とのきずな児童書賞 受賞作】 ※こちらはweb版(改稿前)です※ ※書籍版は『初恋×星空シンバル』と改題し、web版を大幅に改稿したものです※ ◇◇◇冴えない中学一年生の女の子の、部活×恋愛の青春物語◇◇◇ 主人公、海茅は、フルート志望で吹奏楽部に入部したのに、オーディションに落ちてパーカッションになってしまった。しかもコンクールでは地味なシンバルを担当することに。 クラスには馴染めないし、中学生活が全然楽しくない。 そんな中、海茅は一人の女性と一人の男の子と出会う。 シンバルと、絵が好きな男の子に恋に落ちる、小さなキュンとキュッが詰まった物語。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

まぼろしのミッドナイトスクール

木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。

処理中です...