ふたつ目の僕

ちより

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8.本音で話そう

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 デパートから帰ってから、部屋に閉じこもる。

 やっぱり、外になんて出なければ良かったんだ。

 どんなに成績が良くても、この世界の評価は『眼』なのだ。ふたつ目の僕は、何も出来ないと思われていた。

 母さんは子どもの頃何度も言い聞かせていた。

 眼がないのだから、人より注意して行動しなければならない。感情が高ぶれば、注意力が落ちる。だから、心よりも頭を常に使うようにとたたきこまれた。

 まぁ、感情が高ぶると、ソレも反応してくるから、あの教訓は嫌でも身についた。

 だけど、今回は浮かれていた。この僕が誰かを助けられるかもしれないと、調子に乗ってしまっていたんだ。

 部屋に閉じこもる僕とは違って、翔は、家を飛び出すほど辛い思いをしてきたんだ。




 部屋を出て、1階にいる両親のもとへ向かう。休日出勤していた父さんも帰ってきているはずだ。



「歩っ!! 今日はごめんなさい。母さんが無理に外へ誘ったから……」

「大丈夫。それより、父さん」

「なんだ?」

「明日、研究所へ連れて行ってほしい」

 もう母さんも何も言ってこない。

「分かった」






「あれ、また来たの? まぁ、君が食べ物を持ってくるおかげで、彼も倒れないんだけどね。それとも、そろそろ話してくれる気になった?」

「はい」


 男は眼鏡に映るモニターから目線を外し、こちらを見る。

「本当!? なんだ、よく来てくれたね。飲み物でもどうだい?」

「結構です。水筒を持ってきたので。それより、翔についてですが」

「うんうん、翔君って名前なんだね。年は?同じくらいなの?| 」

「同い年です。でも、それ以上は聞けなくて……今日は彼を家の外へ連れ出せたらと思っているんですけど、もし彼がまた急に態度を変えたらどうしようかなって」

「いいね!! 確かに、いつもドア越しで君を見る時は怖い顔してるもんね。それなら川の手前までにしておいて。そこまでならいつでも君の助けに入れるから、安心していいよ」

「分かりました。お願いします」


 父さんはまた1時間後に迎えに来ると言って車に戻る。


「翔、僕だよ。歩だ……今日は謝りに来たんだ。開けてくれる?」

 いつもとは違って、翔の名前を呼ぶ。少しだけドアが開いて、顔を出してくれた。

「この間は、ううん、ずっとごめん。僕、翔の名前教えてもらったのに、名前全然呼んでなかったよね。それから、同じふたつ目に会えたことが嬉しくて、翔の気持ち全然分かってなかった!! ごめんっ」

 たぶん、こんなに大きい声を出したのは初めてだ。どうしても、翔に部屋の外に出てきてもらう必要がある。だから、全力で引っ張り出す。
 

「なんだよ、別にそんな大きな声で謝らなくても」

 翔が部屋から出てきた。すぐに手をつかむ。

「何するんだ?」

「いいから、外に行こう」

「なんでっ……」

「僕も君に話さないといけないことがある」

 最初の印象と違うからか、勢いに押され、言うがままに川まで走る。

「はぁはぁ、それで、話って?」

「人間は3つ眼に進化した」

「はっ?」

「だけど、なぜか僕たちはふたつ目で、そんな僕たちを彼らは化け物として扱うんだ」

「何言ってんだ?」

 やっぱり、一晩考えて導き出した仮説。翔は本当にふたつ目の世界から来たんだ。
昨日、部屋に閉じこもった時、どうして翔は外に飛び出したのかが疑問だった。最初は飛び出したいほど辛い思いを家族からしたのかと思ったが、違う。僕らが外に飛び出すなんてありえない。外で1人で生きていけるはずないんだから。

「翔、歩いていたら突然景色が変わったって言ってたよな?」

「あぁ、そうだけど」

「そうか、先にもう一度謝っておく。ごめん」

「何をあやまっ!?」

 バランスを崩したように見せかけ、2人で川に落ちる。

「ごほっ、何してるんだよ!?」

「川の中ならカメラに映らないんだ」

「あいつら、やっぱり俺を監視してたんだなっ!?」

「うん。でも、川の端までしか確認出来ないって言っていた。たぶん、電波の問題で音声も入らない。だから僕を君のところへ行かして、調べさせようとしているんだ」

「っ!?」

「ごめん。あいつを油断させるために、名前と年齢を教えた」

「それは別にいいけど、音声入らないならなんで川に飛び込むんだよ」

「これを、渡したかったんだ」

 そう言って、防水ケースに入れたスマホを渡す。

「これは、スマホ?」

「良かった。君の世界にもあるんだね。映像が映るなら、メッセージも送れるはずだと思って、ここのネットワークをハッキングしたんだ」

「ハッキング!?」

「うん。あいつ、数字の語呂合わせが好きなんだ。だから、暗証番号も数字のパターンだけだから、すぐにハッキング出来たよ」

 本当はハッキングシステムのパターンを作るのに、1週間は徹夜した。ハッキング自体はすぐに出来たから、嘘ではない。

「新しくつなげた別の回線だから、あいつにメッセージを読まれることもない。これでやり取り出来るだろう?」

「歩……俺もごめんな」

「いいんだよ、僕たち……友達だろう?」

「ああっ!!」
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