聖女に生まれた私は元魔王の娘でした 〜勇者との結婚は避けたいところです〜

ちより

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紅の花と真実

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「おい、話はついたか?」

 男がいらついたように声をかける。

「ミリアちゃん……」

 ニーロンも心配そうに声をかける。

「もう話はつきますわ」

 ミリアはにっこり微笑むと、腕を引っ張る。

「さぁ、行きましょう。あなたの魔力を魔王に渡してくれるのなら、私がもう一度転生の術をしますわ」

「ちょっと、そんなことしたら私の魂が消えてしまうわ。それに、あなたが欲しいこの身体ごと消えてしまってもいいの!?」

「それなら大丈夫ですわ。あなたの魂も聖女の身体のおかげで聖魔法と同一化してますもの。魔族としての魔力がなくなっても、魂の消滅には至りませんわ」

「ど……同一化?」

「……聖魔法を使って彼をあんな頭にしたのでしょう?」

 ニーロンは頭への視線に気づくと毛を慌てておさえる。

「まさか自覚しておりませんでしたの? ふふっ、まぁいいですわ。あなたの身体は私のものに。あなたも魂が死滅せずにこのミリアの……魔族の身体が手に入りますのよ?」

 それは、ずっと望んでいたことね。ランクが落ちるとはいえ、魔族としての身体が手に入る。ゼビル姫として復活出来ないのなら、それが最善かもしれないわ。


「…………あなた、聖女なのよね? 魔王の復活なんて手伝って、どういうつもり?」

「……私はただ間違いを正したいだけですわ。それに、リーグ国には手を出さないように言っておりますわ」

「他の国はどうなってもいいわけ?」

「魔族が他の国の安全まで心配なんて、おかしなことをおっしゃいますのね」

「もう待てないぞ!? そっちが動かないなら我がやる」

 男が突っかかってくる。

「あなた……聖女をこの場へ連れてきて何を言っているのかしら?」

「はぁ!? この女は聖女じゃないと言ってたぞ!? それに、お前がこいつを連れてくれば魔王様を復活させると言って……」

「えぇ。ですが、彼女は聖女ですわ。魔力をよく見れば分かるでしょう……全く、態度の大きいわりに観察力がまだまだではなくて? 私の言うことを聞けば魔王はすぐに復活します。でも、この場を取り乱すなら、王の眠る神聖なこの場に聖女を連れてきたあなたもただでは済まないでしょうね」

「お前っ」

「ミリアちゃん!?」

 ニーロンが心配そうに名前を呼ぶ。

「さっさとするんだ」

 こんなでも上級魔族であるニーロンがいることで男がミリアに手を出さない抑止力にはなっているのだろう。でなければ、下級魔族のミリアがこんな大口たたけるはずがない。

「大丈夫ですわ。私が彼女を説き伏せ魔王をすぐに復活させますから」

 ミリアは腕を離すとゆっくりと前を歩く。

「さぁ、聖女様。来ていただけますね?」

「…………えぇ」

 確かに私らしくないわ。魂が無事で魔族に戻れるんですもの。それに、ミリアが下級でも、魔王復活に貢献したとなれば、相応の待遇が待っているわ。

 ミリアの後をついていく。

「あなた達2人ここで待っていてくださいね」

 ミリアの言葉に2人は黙って従っているようだ。


「……あの男、かなり実力者のようだけど、見たことない顔だわ」

「当然ですわ。彼は私たちの子どもですもの」

「っ!!??」

 魔族の子どもは、番つがいの魔力を1つの魔石に込めることで生まれる。だが、その成功率は低い。まして、ランクが違えば魔力のバランスが崩れ、より困難となる。それが、あんな上級が生まれるなんて。


「反抗期で困りますわぁ~~。他人のふりをしないと、とっても怒るんですのよ。上級だから見逃してますけど、もし下級ならとっくに魔力を回収してますわ」

 あの男がミリアに手を出さないのは、親だからだったのね。

 魔族の親は唯一、無条件で子の魔力を奪える。元お父様が私にしたようにね。

「…………」

「着きましたわ。感動の親子の対面ですわね!!」

「お父……様」


 そこに眠るのは、魔力が不足した状態の無防備な魔王がいた。

「さぁ、手を出して下さいね」

「っつ……」

 ミリアは爪で2人の指を切ると、その血を白ユリの根に吸わせる。

「これって……」

「真実の花ですわ。魔力のこもった地で育った花に聖女の血で作るんですのよ。今回はあなたの身体と、私の魂2つが必要ですけれど。ふふっ、聖女ならお告げの力で何でも知ることが出来ますのよ」

「…………」

 悪かったわね。身体だけで!!

「それじゃあ、これをお飲みなって」

 紅に染まった花びらをしぼると、グラスを渡す。

「分かったわ。魔王への魔力はどうなるの?」

「あなたがそれを飲めば魂が身体から出て、魔族の分の魔力がすぐに吸収されるわ。まぁ、その分ミリアの身体に入ってしばらくは動けないでしょうけど」

「そう」

 今はこの身体のおかげで加護されているのね。私って聖女だったのね。

「ふっ」

 笑えてくる。まさか、本当に聖女だったなんて。

「何?」

「なんでもないわ。早くやりましょう」

「えぇ、嬉しいわ。ようやくおぞましいこの身体から解放されるなんて」

 ミリアの言うことは無視し、一気に飲み干す。彼女もそれを見届けるとすぐに飲んでいるのが見える。

「~~っつ」

 身体が熱い。

 この感覚は、初めて魔力を全て持っていかれそうになった時のものだわ。あの時の呪いがずっとかかっていたなんて。頭が割れるようだわ……ごめんなさい。オリバー、最後にあなたに好きと言えて良かったのかもしれないわ……でも、もしあの女がこの身体に入ったら? まさか、オリバーと一緒になるつもり? 目的のためならニーロンとも子どもを作る女よ。そんな女が!? それは……それだけはっ

「許せないわ」


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