聖女に生まれた私は元魔王の娘でした 〜勇者との結婚は避けたいところです〜

ちより

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真実の口づけ

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 意識を引っ張られ、全身が熱くなる中気付けばミリアの腕をつかんでいた。

「ちょっ……何を……」

 ミリアも顔が真っ赤になっている。

「ダメよ。オリバーだけは……」

「やめなさいっ!! それに、今更拒否しても無駄ですわよっ、もう成功したんですから!!」

 うっ、ダメだわ。力が入らなくなってきたわ。

 気づけば涙で前が見えなくなる。身体に力が入らなくなり、何も考えられなくなる。身体中のエネルギー全てが抜かれるようだ。

 こんなの、絶対に嫌だわ。この身体を受け渡すくらいならいっそのこと……

 残りの力を振り絞って魔力をかき集める。

『私ごと…………消えなさい』


 その時、魔王の気配が変わったのを感じた。

 
「魔王様!!」

「おおっ、遂に!!」

 山が揺れ、あふれ出る強い魔力。

 ニーロン達はそれが魔王の復活だと歓喜する。


 魔王が立つ。強烈な光と真っ黒な覇気の中、上級魔族が小物に見えるほどの強さを放つ。


「…………」

「魔王様、復活おめでとうございます」

「こたびの早い復活に関しましては、我らが尽力した次第で……」

「どうなっている……」

「はっ?」

「なんで……私ワタクシがこんな身体にぃぃぃいい!!??」

「魔王様、しっかり!!」

「どうなされたのですかっ!?」

「魔王などではないっ!!!! 私は、聖女なのよぉおおお!!!!」


「「っ!?!?!?!?」」

 2人は混乱する。誇り高き魔王が内股で座り込み、頭を抱えているのだから。


 その時、魔王の魔力で居場所を察知したオリバーが猛烈なスピードでケロベロスとともに飛んできた。

「リアっ!!!!????」

「お前は……」

「ひぃっ!!」


 魔王を守るべく、ニーロンとミリアの子である男はすぐに戦闘体制をつくる。だが、後ろに控えていたはずの魔王が泣き叫びながらオリバーにしがみつく。

「勇者様っ!! お助けくださいっ!!!!」

「はっ!? 何をっ!!」

「私はケダモノではありませんっ!! あの女が……聖女のふりをしたあの女が邪魔をしたのでございます!!」

「聖女って……リアはどこだ!?」

「いいえっ!! 聖女は私でございます!! こうなれば、勇者様!! 私とキスを……真実の口づけをして下さい!!」

「なっ!? 離せ!!」

 オリバーはしがみつく魔王を突き飛ばす。

「ぎゃあっ……うっ、ひどいですわ。私は魔王ではないというのに……今なら、まだ魂が定着していない今であれば間に合います!! 勇者様!! どうか私の真実の姿を見てくださいませっ!!」

 反撃せず、べそをかきながら口付けをと叫ぶ相手が魔王にはとても見えない。

「魔王様ここは我が相手を!!」

 すかさず男は火の球をオリバーに投げ入れる。剣を失った彼にもう叩き切れるものはないはずだ。

「ふんっ!!」

 リアを失い、怒り心頭のオリバーは全身に聖光をまとい、拳でそれを叩き割る。

「っ!?」

「お前、さっきはよくもリアを……」

 先ほどの闘いとは比べ物にならない聖魔法を放っている。リアを気遣いながら戦っていた時とは、明らかにスピードも力も増していた。

 ドンっ

 歩くたびに地面に穴があくほどの威力を放ち、聖魔法を完全に使いこなしている。

『無効』

 すぐに無効化の魔法を発動させるが、オリバーのスピードは変わらない。

「剣なんかより、こっちの方が得意でな!!」

 そう言うと、一瞬にして距離を詰め、男がその距離に気づいた時には、拳が胴体に食い込んでいた。

「っぐ……」

 そのまま大木へと身体をたたきつけ、気を失う。地上戦でなら負けない。オリバーの圧勝だった。


「勇者様!!」


 声の主はやはり魔王だった。

「真実の愛があれば魂の姿が現れるはずです。ですが、それが出来るのは勇者様……あなた様でございます!!」

「何を言ってるか知らんが、お前に用はない!!」

 オリバーは、聖魔法で拳に光をまとうと、魔王めがけ飛びかかる。


「消えろっ!!!!」

「きゃあっ!!」



「~~ぎゃあっ」

 魔王をかばい、ニーロンがその光を背中に受ける。

「っ!?」

「うっ……大丈夫かい? ミリアちゃん……」

 オリバーの前に、ニーロンがふらふらと立ち上がる。

「なっ……」

「ミリアちゃんなんだろう? 我には分かる。その瞳は、君だ」

「…………」

 魔王の手を取り、ニーロンはその瞳をまっすぐ見つめる。

「ニー君……」

「ふふっ、やっぱり君だ。なぜ、魔王様に……でも関係ない。君がどんな姿になろうが、大丈夫だ。ほら泣かないで」

 魔王の涙をハンカチでぬぐい、優しく抱きしめる。

「もう、我に反撃する力は残っていない……だが、君を守って死ねるなら本望だ……本物の魔王様ではなくてね」

「~~っ、私は……ミリアじゃないわ……」

「我が17年、一緒にいたのは君だろう? 君がミリアだ。こんなに優しい魔族の女と一緒になれるなど、これ以上の喜びはない……」

「…………今なら、今ならまだ……あの女の魂は助かるわ」

 オリバーに向かって、話出す。

「リアのことか?」

「えぇ。魂の術が失敗したのなら、魔王とあの女の魂がまだ離れた状態にあるはずよ……私はこの身体に入ってしまったようだけど……」

「どうすればリアは助かるっ!?」

「私たちに手を出さないと約束するなら、彼女の魂を探すのを手伝うわ」

「…………いいだろう。早くしろっ」



 洞穴の中には、倒れたままのリアとミリアの身体がある。

「リアっ!!」

「…………魔力が、足りないなんてありえないはずですわ。彼女の魔力は復活に十分だったはずですもの。それが失敗するなんて、何かしたに違いありませんわ……彼女の特殊魔法は消滅でしたわよね? ありえないことですけど、直前に腕をつかまれて止められた気がしますの」

「…………」

「……まさか、自分の魂を消滅させようとしたんじゃ……」

「…………もし、彼女が目を覚さない時は……」

「わ、分かってますわ。大丈夫ですわ、身体がまだあるってことは、全てを消したわけではありませんもの……神の啓示で、彼女を救う方法を……でも、この身体では聖魔法が使えないですわ……」

「だったら俺が」

「無理ですわ、神の啓示は聖女のみ使える聖魔法。私しか出来ませんわ」

「なら、どうすれば……」

「ですから……真実の口づけが必要と……」

「断る」

「彼女の為ですのよ?」

「……君を……愛してなどいない。それは効果がないだろう」

「ですが、聖女を愛するのは勇者と決まってますわ。それに、キスするのはあちらの身体ですわ」

「…………」

「待て」

 ニーロンがオリバーを止めに入る。

「ミリアちゃんに真実の口づけが必要なら、我以上の相手はいない」

 そう言うと、倒れた身体のミリアを優しく抱き起こすと、ニーロンはそっと彼女に触れる。

「ニー君、いくらあなたが私を愛していても、所詮魔族では奇跡は……」

 その時、魔王とミリアの身体が光輝く。

「っ!?」
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