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12.秘密
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自白……剤?
ドアの方で、何やら侍女頭と医師が言い争っている声がする。
まさか、お湯にすらそんなものが……なんておそろしいのかしら……これが、公爵家に嫁ぐということだとは。私の覚悟は甘かったようですわね。今すぐにでも、エル様への想いを叫びたいこの衝動は、まさか薬の影響だなんて。
「ハァ……ハ……ァ」
ダメですわ。エル様を想うだけで動悸が止まらない上に、身体中が熱くなってしまってますわ。
あぁ、エル様、エル様!! エル・ニシェード・ブラン様!!!! あなた様を間近で見たあの日以来、抑えていた感情が今にも口から出てしまいそうですわ。
「ぐっ、うぅ……」
「カレン様っ!?」
侍女頭が慌てる声がする。
「うーーん、微量でこれほど症状が出るとは……持続時間は長くないでしょうが、本来はお酒を飲んだあとのようなフワフワとした気分のいい状態になるはずなんです。私が分量を測り間違えるなんてありえないですし。よほど抑えているものがあると考えるのが自然か……」
悠長に、しかし的を得た推理をするヤドラ医師だが、さすがに震えだすカレンの姿に少し慌て始める。
「落ち着いてください。そのように我慢されればお身体にさわります。もし体調などくずされでもすれば、さすがにウェイド様に拷問……いえ申し分が立ちません!!」
「ふっ、……うぅ」
「大丈夫です。ここで聞いたことは絶対に口外致しません。我慢をやめればすぐに楽になるはずですから!!」
「カレン様!!!! 私も決して誰にも……旦那様にも絶対に漏らしません。ですから、どうか!!」
「…………っ、私は……」
「「っ!!??」」
「私は……私が、好……き……なのは……エッ、エル……エルモスです」
「「????」」
「あの、ブランドのエルモスですか?」
「…………えぇ」
「ふむ、次期公爵夫人ともなれば王室御用達のマルティアがふさわしいかと思いますが……なるほど。ご自分の好みがあるのは恥ずかしいことではありませんよ。公爵様であれば店ごと買い上げてプレゼントされますでしょうに」
「そっ、そうですよ。カレン様が秘密にとおっしゃるのであれば、墓場まで持って行く覚悟ですが、旦那様はカレン様がお気に召すものを着られる方が絶対喜ばれるはずです」
2人は疑うことのない目をこちらに向ける。
良かったですわ。なんとか耐えましたわ。少しの量でこれほどの効力とは、なんて恐ろしい効果を引き出すのかしら。今後は、ヤドラ医師の渡すものには注意が必要ですわね。
そっと左手をどかすと、右腕には握りしめたアザが出来ていた。2人に見られないようそっと袖を隠す。
「今日は疲れたわ。2人とも下がってくれるかしら?」
「いえっ、次期奥様。念の為体調の確認を」
「あなたの作った薬湯に自信がないとでも?」
「まさか!! そのようなことはありえません」
「では、良いでしょう。今日はもう横になりたいわ」
「はい……失礼しました」
「それと、先ほどの出来事はウェイド様には他言無用でお願いします」
「カレン様、もちろん……あの件については口外しないですが、ヤドラ医師の調合の一件については……」
「他言無用よ」
「…………はい」
ふぅ、良かったわ。ようやく帰ったわね。エル様への想いを口外すれば、迷惑がかかってしまうわ。もうあの方は妻をもつ身の方。ささいな言動が万が一にでもエル様の評判を落とすようなことになれば……考えただけでも恐ろしいですわ。
あの2人が誰かに告げ口をするとは考えられないが、今は彼らの主人はウェイド公爵だ。主人の裏切りを疑う発言が出れば何をするか分からない。
「……お慕いしておりますわ」
誰にも聞こえないほどの小さな声で、本音をもらす。
「っ!!!!」
驚くほど心が静かになり、ヤドラ医師が言っていたように、気持ちが軽くなるのが分かる。幸せな気持ちに包まれるとすぐ、深い眠りに入っていた。
目を覚ますとまだ外は暗く、起きるには早かったようだ。昨夜は大変な目にはあったが、ヤドラ医師の薬湯は効果絶大だったのだろう。短い睡眠時間でも、身体が軽いのが分かる。
もう少し眠ろうかしら。
ベッドへ戻ろうと窓から背を向けた瞬間
「っ!?」
「大人しくするんだ」
後ろから腕をつかまれ、口をふさがれる。心臓が強く脈を打ち、足が震えるのが分かる。
「~~~~っ!?」
「声を出さなければ命を奪うまではしない」
男の言葉に、なんとか首をわずかに動かし、うなずいてみせる。
王室にも引けを取らない公爵家に侵入してくるなんて、いったいどうやって? この男の落ち着き具合、かなり慣れていますわ。でも、私を連れてこの屋敷から出るなんて、不可能……ですわよね。目的が誘拐であれば、わざわざ警備の厳しい屋敷に侵入するなどリスクが大きすぎますわ。このタイミングで考えられるのはおそらく1つ……
「動くなと言っているだろう」
男は刃物を喉に突き立てる。
婚約の無効……。
貴族同士の結婚で、もし女性側に不義理が分かれば即婚約解消となる。それが、同意のもとでなくてもだ。
一体、誰に雇われて?
リドル家の夫人の座を狙う者は多い。地位や名誉はもちろんだが、容姿端麗なウェイド公爵を密かに慕い、熱い視線を送るレディの噂は数えきれないほどある。
「そのまま動くんじゃないぞ?」
男はロープのようなものを出すと手首をそのまま縛りつけようとする。刃先が首から離れたその一瞬を見逃さない。
「ふんっ!!!!」
肘を腹部下におもいきりくらわし、足を宙に舞い上げそのまま勢いよく男の首横に振り落とす。
「ぐはぁっ!?」
ドアの方で、何やら侍女頭と医師が言い争っている声がする。
まさか、お湯にすらそんなものが……なんておそろしいのかしら……これが、公爵家に嫁ぐということだとは。私の覚悟は甘かったようですわね。今すぐにでも、エル様への想いを叫びたいこの衝動は、まさか薬の影響だなんて。
「ハァ……ハ……ァ」
ダメですわ。エル様を想うだけで動悸が止まらない上に、身体中が熱くなってしまってますわ。
あぁ、エル様、エル様!! エル・ニシェード・ブラン様!!!! あなた様を間近で見たあの日以来、抑えていた感情が今にも口から出てしまいそうですわ。
「ぐっ、うぅ……」
「カレン様っ!?」
侍女頭が慌てる声がする。
「うーーん、微量でこれほど症状が出るとは……持続時間は長くないでしょうが、本来はお酒を飲んだあとのようなフワフワとした気分のいい状態になるはずなんです。私が分量を測り間違えるなんてありえないですし。よほど抑えているものがあると考えるのが自然か……」
悠長に、しかし的を得た推理をするヤドラ医師だが、さすがに震えだすカレンの姿に少し慌て始める。
「落ち着いてください。そのように我慢されればお身体にさわります。もし体調などくずされでもすれば、さすがにウェイド様に拷問……いえ申し分が立ちません!!」
「ふっ、……うぅ」
「大丈夫です。ここで聞いたことは絶対に口外致しません。我慢をやめればすぐに楽になるはずですから!!」
「カレン様!!!! 私も決して誰にも……旦那様にも絶対に漏らしません。ですから、どうか!!」
「…………っ、私は……」
「「っ!!??」」
「私は……私が、好……き……なのは……エッ、エル……エルモスです」
「「????」」
「あの、ブランドのエルモスですか?」
「…………えぇ」
「ふむ、次期公爵夫人ともなれば王室御用達のマルティアがふさわしいかと思いますが……なるほど。ご自分の好みがあるのは恥ずかしいことではありませんよ。公爵様であれば店ごと買い上げてプレゼントされますでしょうに」
「そっ、そうですよ。カレン様が秘密にとおっしゃるのであれば、墓場まで持って行く覚悟ですが、旦那様はカレン様がお気に召すものを着られる方が絶対喜ばれるはずです」
2人は疑うことのない目をこちらに向ける。
良かったですわ。なんとか耐えましたわ。少しの量でこれほどの効力とは、なんて恐ろしい効果を引き出すのかしら。今後は、ヤドラ医師の渡すものには注意が必要ですわね。
そっと左手をどかすと、右腕には握りしめたアザが出来ていた。2人に見られないようそっと袖を隠す。
「今日は疲れたわ。2人とも下がってくれるかしら?」
「いえっ、次期奥様。念の為体調の確認を」
「あなたの作った薬湯に自信がないとでも?」
「まさか!! そのようなことはありえません」
「では、良いでしょう。今日はもう横になりたいわ」
「はい……失礼しました」
「それと、先ほどの出来事はウェイド様には他言無用でお願いします」
「カレン様、もちろん……あの件については口外しないですが、ヤドラ医師の調合の一件については……」
「他言無用よ」
「…………はい」
ふぅ、良かったわ。ようやく帰ったわね。エル様への想いを口外すれば、迷惑がかかってしまうわ。もうあの方は妻をもつ身の方。ささいな言動が万が一にでもエル様の評判を落とすようなことになれば……考えただけでも恐ろしいですわ。
あの2人が誰かに告げ口をするとは考えられないが、今は彼らの主人はウェイド公爵だ。主人の裏切りを疑う発言が出れば何をするか分からない。
「……お慕いしておりますわ」
誰にも聞こえないほどの小さな声で、本音をもらす。
「っ!!!!」
驚くほど心が静かになり、ヤドラ医師が言っていたように、気持ちが軽くなるのが分かる。幸せな気持ちに包まれるとすぐ、深い眠りに入っていた。
目を覚ますとまだ外は暗く、起きるには早かったようだ。昨夜は大変な目にはあったが、ヤドラ医師の薬湯は効果絶大だったのだろう。短い睡眠時間でも、身体が軽いのが分かる。
もう少し眠ろうかしら。
ベッドへ戻ろうと窓から背を向けた瞬間
「っ!?」
「大人しくするんだ」
後ろから腕をつかまれ、口をふさがれる。心臓が強く脈を打ち、足が震えるのが分かる。
「~~~~っ!?」
「声を出さなければ命を奪うまではしない」
男の言葉に、なんとか首をわずかに動かし、うなずいてみせる。
王室にも引けを取らない公爵家に侵入してくるなんて、いったいどうやって? この男の落ち着き具合、かなり慣れていますわ。でも、私を連れてこの屋敷から出るなんて、不可能……ですわよね。目的が誘拐であれば、わざわざ警備の厳しい屋敷に侵入するなどリスクが大きすぎますわ。このタイミングで考えられるのはおそらく1つ……
「動くなと言っているだろう」
男は刃物を喉に突き立てる。
婚約の無効……。
貴族同士の結婚で、もし女性側に不義理が分かれば即婚約解消となる。それが、同意のもとでなくてもだ。
一体、誰に雇われて?
リドル家の夫人の座を狙う者は多い。地位や名誉はもちろんだが、容姿端麗なウェイド公爵を密かに慕い、熱い視線を送るレディの噂は数えきれないほどある。
「そのまま動くんじゃないぞ?」
男はロープのようなものを出すと手首をそのまま縛りつけようとする。刃先が首から離れたその一瞬を見逃さない。
「ふんっ!!!!」
肘を腹部下におもいきりくらわし、足を宙に舞い上げそのまま勢いよく男の首横に振り落とす。
「ぐはぁっ!?」
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