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37.恋敵
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「ふむ、興味深いですね。どうやら男性を惹きつけるフェロモンが入った香水のようですね。それ以外にも、興奮を高める作用があるようですね。ただの香りというよりも、これはもっと薬に近いものかもしれませんね」
公爵が用意した馬車は3つ。1つはカレンと2人で乗る予定だった馬車。使用人たちや荷物を積めた馬車、そして、今ニーナ夫人とともに乗っているこの馬車には、2人が座っている向かい合わせの席ともう1つ、前向きの席が設けてある。背もたれが高いため、そこに人が座っているとは気づきにくい。ニーナ夫人が手に持っていた香水をそこからサッと取り、香りをかいだのちそう発言する失礼極まりない者は1人しかいない。
「ご機嫌よう、次期公爵夫人にニーナ伯爵夫人」
席から身を乗り出し、挨拶をするのはヤドラ医師だ。
「あっ、あ……」
殿方に今の話を聞かれたと知られ、みるみる真っ赤になるニーナ夫人と、目が合い真っ青になるカレン。
「ヤッ、ヤドラ!? あなたなぜこの馬車に!?」
「いや最初からこちらにはブラン伯爵ご夫妻が乗るからと、護衛と体調管理の為に私がご同行するよう公爵様に言われていたのですが……なぜお2人がこちらに?」
にこりと笑うヤドラ医師に、言い返せない。まさかエル様の生の笑顔にあやうく反応しそうになったなど、言えるわけがない。ましてや、ニーナ夫人がいるのだから。
「そっ、そう。ミクリと一緒の馬車に乗っているものだと思っていたわ」
「当然、護衛で周りも固めていますが、王都へ行くのに過度な護衛も、怪しまれますでしょう?」
「そうね」
目を合わせないでいるカレンが質問に対して返事をしない為、そのまま会話が止まってしまう。
「…………」
「…………」
「…………あの、今のお話……」
沈黙に耐えられず、ニーナ夫人が話を切り出す。
「はい、なんでございましょう?」
ニーナ夫人の背もたれ側にいるヤドラ医師は、香水を手に持ったままで返す気はないように見える。
「その、お話……聞こえていましたか?」
小さな声をふりしぼって、恥ずかしさ全開の彼女に、紳士なら嘘でも聞こえなかったというはずだ。
「夜の盛り上がりのための話、のことでございましょうか?」
「~~~~っ」
そのまま顔を覆うと目的地に着くまでニーナ夫人が顔を上げることはなかった。
「夫人とは楽しく話が出来たか?」
遅れて出発したはずなのに、なぜかウェイド公爵とエル伯爵の方が先に着いて待っていた。
「いえ……まぁ……」
エスコートされながら気まずい雰囲気のまま降りる。ニーナ夫人に関しては顔が真っ赤なままだ。
「レディの準備とやらには申し訳ないが、やはり君を危険な目にはあわせられないからな。無礼を承知で先に待たせてもらっていた」
「ウェイド様……その話はもういいんですっ!!」
後ろを見ると、赤面のニーナ夫人の顔が噴火しそうになっている。
「そう……か」
「ふぅ……それより、どうして先に着けたんですか?」
見る限りリドル家の馬車はまだ着いていないように見える。
「……馬車はあとから来る。僕らは馬に乗ってきた」
ニーナ夫人を介抱するエル伯爵をちらりと見ると、小声で続けて言う。
「彼と2人でせまい馬車に乗るのは気が進まなくてな」
そうでしたっ!! 恋敵と一緒の馬車なんて私ってばなんてことをしてしまったんでしょう。
自分の浅はかな行動を反省する。
あれ、そういえば私ニーナ夫人は嫌じゃない……ですわ。むしろ、お友達として信頼しているくらい……どうしてでしょう……男女の差でしょうか?
「ではっ、今後は離れないようにっ」
腕に手をかけたカレンの手をもうひとつの手で握ってくる。
「はっ、はい」
何かしら、心臓がまたきゅうってなりますわ。無意識に緊張しているのでしょうか……
婚約関係を結んでから外に出るなど、今までのリドル家ではありえない流れだ。だが、さすがに王族主催となると訳が違う。圧倒的な警備力を誇るこのパーティになら出席する。それは、リドル家が王族へ信頼を寄せているともとれる。主催者であるダガレ殿下の株が上がるのだから、接触方法としては悪くないはずだ。
「上着をお返ししますわ」
長く借りていたことを思い出し、脱ごうとしたところ、公爵は先に断る。
「いや……いい」
「えっ、ですが……あっ、分かりましたわ」
確かに、公爵の上着を羽織ったままの登場の方が、ラブ度が高いように見えますわね。さすがですわ。
狙ったとおり、会場入りするやすぐにまさかの本人から近づいてきた。
「これは、リドル家当主が我がパーティに来てくれるなど、光栄でございますな」
「殿下、この度はお招き感謝致します。こちらは、婚約者の……」
「お父様、ウェイド様がいらっしゃったそうですね」
確実に狙っただろうそのタイミングで、胸元が大きく開いたドレスに身を包んだアイリン殿下が現れた。
公爵が用意した馬車は3つ。1つはカレンと2人で乗る予定だった馬車。使用人たちや荷物を積めた馬車、そして、今ニーナ夫人とともに乗っているこの馬車には、2人が座っている向かい合わせの席ともう1つ、前向きの席が設けてある。背もたれが高いため、そこに人が座っているとは気づきにくい。ニーナ夫人が手に持っていた香水をそこからサッと取り、香りをかいだのちそう発言する失礼極まりない者は1人しかいない。
「ご機嫌よう、次期公爵夫人にニーナ伯爵夫人」
席から身を乗り出し、挨拶をするのはヤドラ医師だ。
「あっ、あ……」
殿方に今の話を聞かれたと知られ、みるみる真っ赤になるニーナ夫人と、目が合い真っ青になるカレン。
「ヤッ、ヤドラ!? あなたなぜこの馬車に!?」
「いや最初からこちらにはブラン伯爵ご夫妻が乗るからと、護衛と体調管理の為に私がご同行するよう公爵様に言われていたのですが……なぜお2人がこちらに?」
にこりと笑うヤドラ医師に、言い返せない。まさかエル様の生の笑顔にあやうく反応しそうになったなど、言えるわけがない。ましてや、ニーナ夫人がいるのだから。
「そっ、そう。ミクリと一緒の馬車に乗っているものだと思っていたわ」
「当然、護衛で周りも固めていますが、王都へ行くのに過度な護衛も、怪しまれますでしょう?」
「そうね」
目を合わせないでいるカレンが質問に対して返事をしない為、そのまま会話が止まってしまう。
「…………」
「…………」
「…………あの、今のお話……」
沈黙に耐えられず、ニーナ夫人が話を切り出す。
「はい、なんでございましょう?」
ニーナ夫人の背もたれ側にいるヤドラ医師は、香水を手に持ったままで返す気はないように見える。
「その、お話……聞こえていましたか?」
小さな声をふりしぼって、恥ずかしさ全開の彼女に、紳士なら嘘でも聞こえなかったというはずだ。
「夜の盛り上がりのための話、のことでございましょうか?」
「~~~~っ」
そのまま顔を覆うと目的地に着くまでニーナ夫人が顔を上げることはなかった。
「夫人とは楽しく話が出来たか?」
遅れて出発したはずなのに、なぜかウェイド公爵とエル伯爵の方が先に着いて待っていた。
「いえ……まぁ……」
エスコートされながら気まずい雰囲気のまま降りる。ニーナ夫人に関しては顔が真っ赤なままだ。
「レディの準備とやらには申し訳ないが、やはり君を危険な目にはあわせられないからな。無礼を承知で先に待たせてもらっていた」
「ウェイド様……その話はもういいんですっ!!」
後ろを見ると、赤面のニーナ夫人の顔が噴火しそうになっている。
「そう……か」
「ふぅ……それより、どうして先に着けたんですか?」
見る限りリドル家の馬車はまだ着いていないように見える。
「……馬車はあとから来る。僕らは馬に乗ってきた」
ニーナ夫人を介抱するエル伯爵をちらりと見ると、小声で続けて言う。
「彼と2人でせまい馬車に乗るのは気が進まなくてな」
そうでしたっ!! 恋敵と一緒の馬車なんて私ってばなんてことをしてしまったんでしょう。
自分の浅はかな行動を反省する。
あれ、そういえば私ニーナ夫人は嫌じゃない……ですわ。むしろ、お友達として信頼しているくらい……どうしてでしょう……男女の差でしょうか?
「ではっ、今後は離れないようにっ」
腕に手をかけたカレンの手をもうひとつの手で握ってくる。
「はっ、はい」
何かしら、心臓がまたきゅうってなりますわ。無意識に緊張しているのでしょうか……
婚約関係を結んでから外に出るなど、今までのリドル家ではありえない流れだ。だが、さすがに王族主催となると訳が違う。圧倒的な警備力を誇るこのパーティになら出席する。それは、リドル家が王族へ信頼を寄せているともとれる。主催者であるダガレ殿下の株が上がるのだから、接触方法としては悪くないはずだ。
「上着をお返ししますわ」
長く借りていたことを思い出し、脱ごうとしたところ、公爵は先に断る。
「いや……いい」
「えっ、ですが……あっ、分かりましたわ」
確かに、公爵の上着を羽織ったままの登場の方が、ラブ度が高いように見えますわね。さすがですわ。
狙ったとおり、会場入りするやすぐにまさかの本人から近づいてきた。
「これは、リドル家当主が我がパーティに来てくれるなど、光栄でございますな」
「殿下、この度はお招き感謝致します。こちらは、婚約者の……」
「お父様、ウェイド様がいらっしゃったそうですね」
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