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40.陛下
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相手は殿下。もし、正当防衛を訴えようと、このパーティはアイリン殿下の息がかかった者ばかりのはず。最悪、王族侮辱罪で極刑があるかもしれないが、そんなことは言ってられない。カレン夫人が悲鳴をあげたと同時に身体が動く。
「ニーナさんっ!!!!」
「きゃあっ!?」
ニーナさんをかばい彼女を後ろへひっぱると、身代わりになるように前へ出る。両手を広げ、彼女には傷1つつけさせるものかと立ちはだかる。
振り下ろされる瞬間、悔しいが目を閉じる。キズモノになれば、公爵夫人は無理だろう。公爵が良いと言っても、この国を代表する公爵家の夫人の顔に大きな傷があれば大問題だ。良くて第2夫人といったところだろう。
ウェイド様、ごめんなさい。でも、眼だけは……視力だけは守ります。あなた様が、仮面の公爵だなんて呼び名にふさわしくないあの微笑みを見られるなら、私は十分です。
「っ!!」
「きゃあっ!?」
ニーナ夫人ではない悲鳴が聞こえる。
「?」
そこには、手首を抑えられ、床に座り込むアイリン殿下が悲鳴をあげていた。
「ヤ……ドラ?」
どうして彼が?
会場の中には、ウェイド公爵にカレン、事前に参加の了承を得たエル伯爵夫妻しか入れなかった。護衛の関係上、人数をしぼった入場制限は王族のパーティではよくあることだ。
「無礼者っ!! 早く、誰かこの者を捕えなさい」
叫ぶ殿下に血の気が引く。
まさか、私たちを守ろうとして? ニーナさんは……
さすがにあの悲鳴で動かないわけにはいかなかったのだろう。カレン夫人をしっかり後ろでキャッチし、そのまま一緒に倒れている。だが、その片手には振り払えなかったのだろう、子どもも抱きかかえたままだ。
良かったですわ。とりあえず、ニーナさんは無事ですわね。でも……私を守るために殿下を押さえつけたヤドラは……
「早くどかせなさい。あなた……分かっているわよね? 王族への不敬どころではないわよ!? 暴行よ? それに、会場へ不法侵入し騒がせたことも考えると、あなた1人でおさまる問題ではないわよ!!」
顔を真っ赤に怒るが、どう制裁しようかと高揚とした表情が抑えられないでいる。
「殿下、この者は私の……」
主人をかばっての行動だと叫びたくなる。だが、ここで震えてはダメだ。圧倒的に不利な状況だとしても、冷静に、慎重に言葉を選ばなくては余計に追い込まれる。
「しぃーーっ」
「っ!?」
こんな状況だというのに、人差し指を口元に近づけ、いつもの余裕の笑みさえ浮かべている。
「あなたっ……気がおかしくなったんじゃないのっ!? 何してるのっ!! 早く、早く誰か!!」
そういえば、なぜ誰も動かないのかしら。殿下が取り押さえられ、あげくに自分で拾ったガラスで手を怪我してさえいるっていうのに……
「落ち着いてください。これ以上騒ぐと、毒が全身にまわりますよ?」
「どっ!?」
毒という言葉に、さすがの殿下も静かになる。その様子に満足したのか、こちらを見て余裕のウインクを送ってきた。
っ!? 何を考えているのかしら。それに、一体どういうことなのかしら……
「さすがリドル家に仕える医師。迅速な対応、見事であった」
護衛たち、が誰もアイリン殿下のもとへ駆けつけなかった理由、それはこの方が動くなと指示したからだとようやく合点がいく。
「身に余る光栄でございます。陛下」
さすがのヤドラ医師も、アイリン殿下の出血する手を抑えたまま、もう片方の手を胸にあて、最大限の敬意を払って頭を下げる。
「良い、手のかかる姪の命を救ってくれた恩人に頭を下げるべきは我にある……礼を言おう」
「~~~~っ!? へっ、陛下!?」
会場中が騒然とする。誰もがアイリン殿下を押さえつける無礼者に、陛下が直接お礼を言うこの状況に困惑する。そして、アイリン殿下本人が訳が分からない。
「???」
「カレン、大丈夫か?」
「ウェイド様、これは……」
優しく肩を叩かれ、公爵の顔を見て力が抜ける。
「おっと……すまない。まさか、彼女がこんなにもすぐに動くとは……」
「いえ、それは私もですから」
まさか、本当に、こんなにすぐに危害を堂々と加えてくるとは。ヤドラ医師の身体にあった色濃いアザの顔を思い出す。
「…………それでこれは一体」
「とりあえず、説明はあとで……今日はお開きだろう。ミクリに馬車の用意をさせている」
「あっ、そうですわね。すみません……もう大丈夫です、わっ!?」
「どうした?」
どうしたとは!? いえ、もうウェイド様が当たり前のように抱えることにいちいち反応すべきではありませんわね。ましてや、今日は大勢の方がいらっしゃるのですし。
「いえっ……ぃぇ……」
無理ですわ、無理ですわ!?
一度はフリをしようと公爵に寄りかかり、あくまでも品位を忘れず見つめようとした。が、公爵と目が合った瞬間、何もかもが恥ずかしくなってしまったのだ。
おっ、重くないでしょうか。うぅっ、少しですがアルコールも飲んでしまいましたが、匂いとか……まっ、また心臓がきゅうって縮んで……あっ、私ったらずっとウェイド様の上着を着たままですわ……
「あ、あの!!」
「ん?」
ひゃーーーーっ!! そんな甘い笑い方されてましたっけ? 外用ですか!? 屋敷では加減されていたのですか!?
「上着を……シワがついてしまいますので……」
上着を羽織ったまま抱えられては、しわになる。そう思って返そうとするが、一瞬困った顔をされる。
あぁ、もう今更ですわよね……気づくのが遅れるなんて、私の大馬鹿者ですわ。つい、ウェイド様がお近くにいるような心強さに甘えてしまって……
「……ダメだ」
すみませんんんんんっ!!!!
「他の者に見せるわけにはいかないからな」
「はい?」
なぜか顔を真っ赤にする公爵に、よく分からないがこちらまで赤くなってしまった。
「ニーナさんっ!!!!」
「きゃあっ!?」
ニーナさんをかばい彼女を後ろへひっぱると、身代わりになるように前へ出る。両手を広げ、彼女には傷1つつけさせるものかと立ちはだかる。
振り下ろされる瞬間、悔しいが目を閉じる。キズモノになれば、公爵夫人は無理だろう。公爵が良いと言っても、この国を代表する公爵家の夫人の顔に大きな傷があれば大問題だ。良くて第2夫人といったところだろう。
ウェイド様、ごめんなさい。でも、眼だけは……視力だけは守ります。あなた様が、仮面の公爵だなんて呼び名にふさわしくないあの微笑みを見られるなら、私は十分です。
「っ!!」
「きゃあっ!?」
ニーナ夫人ではない悲鳴が聞こえる。
「?」
そこには、手首を抑えられ、床に座り込むアイリン殿下が悲鳴をあげていた。
「ヤ……ドラ?」
どうして彼が?
会場の中には、ウェイド公爵にカレン、事前に参加の了承を得たエル伯爵夫妻しか入れなかった。護衛の関係上、人数をしぼった入場制限は王族のパーティではよくあることだ。
「無礼者っ!! 早く、誰かこの者を捕えなさい」
叫ぶ殿下に血の気が引く。
まさか、私たちを守ろうとして? ニーナさんは……
さすがにあの悲鳴で動かないわけにはいかなかったのだろう。カレン夫人をしっかり後ろでキャッチし、そのまま一緒に倒れている。だが、その片手には振り払えなかったのだろう、子どもも抱きかかえたままだ。
良かったですわ。とりあえず、ニーナさんは無事ですわね。でも……私を守るために殿下を押さえつけたヤドラは……
「早くどかせなさい。あなた……分かっているわよね? 王族への不敬どころではないわよ!? 暴行よ? それに、会場へ不法侵入し騒がせたことも考えると、あなた1人でおさまる問題ではないわよ!!」
顔を真っ赤に怒るが、どう制裁しようかと高揚とした表情が抑えられないでいる。
「殿下、この者は私の……」
主人をかばっての行動だと叫びたくなる。だが、ここで震えてはダメだ。圧倒的に不利な状況だとしても、冷静に、慎重に言葉を選ばなくては余計に追い込まれる。
「しぃーーっ」
「っ!?」
こんな状況だというのに、人差し指を口元に近づけ、いつもの余裕の笑みさえ浮かべている。
「あなたっ……気がおかしくなったんじゃないのっ!? 何してるのっ!! 早く、早く誰か!!」
そういえば、なぜ誰も動かないのかしら。殿下が取り押さえられ、あげくに自分で拾ったガラスで手を怪我してさえいるっていうのに……
「落ち着いてください。これ以上騒ぐと、毒が全身にまわりますよ?」
「どっ!?」
毒という言葉に、さすがの殿下も静かになる。その様子に満足したのか、こちらを見て余裕のウインクを送ってきた。
っ!? 何を考えているのかしら。それに、一体どういうことなのかしら……
「さすがリドル家に仕える医師。迅速な対応、見事であった」
護衛たち、が誰もアイリン殿下のもとへ駆けつけなかった理由、それはこの方が動くなと指示したからだとようやく合点がいく。
「身に余る光栄でございます。陛下」
さすがのヤドラ医師も、アイリン殿下の出血する手を抑えたまま、もう片方の手を胸にあて、最大限の敬意を払って頭を下げる。
「良い、手のかかる姪の命を救ってくれた恩人に頭を下げるべきは我にある……礼を言おう」
「~~~~っ!? へっ、陛下!?」
会場中が騒然とする。誰もがアイリン殿下を押さえつける無礼者に、陛下が直接お礼を言うこの状況に困惑する。そして、アイリン殿下本人が訳が分からない。
「???」
「カレン、大丈夫か?」
「ウェイド様、これは……」
優しく肩を叩かれ、公爵の顔を見て力が抜ける。
「おっと……すまない。まさか、彼女がこんなにもすぐに動くとは……」
「いえ、それは私もですから」
まさか、本当に、こんなにすぐに危害を堂々と加えてくるとは。ヤドラ医師の身体にあった色濃いアザの顔を思い出す。
「…………それでこれは一体」
「とりあえず、説明はあとで……今日はお開きだろう。ミクリに馬車の用意をさせている」
「あっ、そうですわね。すみません……もう大丈夫です、わっ!?」
「どうした?」
どうしたとは!? いえ、もうウェイド様が当たり前のように抱えることにいちいち反応すべきではありませんわね。ましてや、今日は大勢の方がいらっしゃるのですし。
「いえっ……ぃぇ……」
無理ですわ、無理ですわ!?
一度はフリをしようと公爵に寄りかかり、あくまでも品位を忘れず見つめようとした。が、公爵と目が合った瞬間、何もかもが恥ずかしくなってしまったのだ。
おっ、重くないでしょうか。うぅっ、少しですがアルコールも飲んでしまいましたが、匂いとか……まっ、また心臓がきゅうって縮んで……あっ、私ったらずっとウェイド様の上着を着たままですわ……
「あ、あの!!」
「ん?」
ひゃーーーーっ!! そんな甘い笑い方されてましたっけ? 外用ですか!? 屋敷では加減されていたのですか!?
「上着を……シワがついてしまいますので……」
上着を羽織ったまま抱えられては、しわになる。そう思って返そうとするが、一瞬困った顔をされる。
あぁ、もう今更ですわよね……気づくのが遅れるなんて、私の大馬鹿者ですわ。つい、ウェイド様がお近くにいるような心強さに甘えてしまって……
「……ダメだ」
すみませんんんんんっ!!!!
「他の者に見せるわけにはいかないからな」
「はい?」
なぜか顔を真っ赤にする公爵に、よく分からないがこちらまで赤くなってしまった。
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