狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより

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44.誤解

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「ウェイド様、一体……急にどうされたのですか?」

 その穏やかな表情も、温かい手も、甘い言葉全てが経験したことのない気持ちになりそうになる。

 これ以上は危険です。なぜか心臓がはりさけそうですわ。

「どうとは……何かおかしいことでも?」

「ここは完全にプライベートが守られているのですよね?」

 公爵がここまで無防備になるのは、開放感からくるとのなのかもしれないと、確認する。

「そうだ。全方位が崖で覆われ、広い敷地には無数のトラップと凄腕の監察官が警備している。その顔ぶれも、何十年と変わらないから潜入も不可能だ」

「そうですか。では、ウェイド様がいつもよりもリラックスされるのもごもっともですわ。ですが、それならば私のことは気遣われなくて大丈夫ですわ」

「……気遣う?」

「パーティでの件は、本当に申し訳ないなどと思わなくて大丈夫です。ですから、無理に褒めたり、仲の良いフリをなされなくても」

 本当は、これがフリだと思う自分が耐えられなくなってしまったのだ。舞い上がりそうになる自分を抑えきれなさそうになる。

「ちょっと待て。無理にとか、フリというのは一体……」

 両腕をそっとつかむ公爵に、カレンの理性が切れる。

「私とは形だけの結婚ですよね?」

「えっ……」

「私は、別に想う方がいます。ウェイド様もそうなのですよね? だから、私とは世間体だけの結婚だと理解しております。お慕いしていると、パーティで思わず声に出してしまいましたが……それを気にされているのなら……」

「ちょっと待ってくれ。君に……他に好きな人がいるのは……理解するつもりだ……急な婚姻であればその可能性も考えていた。だが、僕が他に好きな人がいるというのは一体どうしてそう思ったんだ!?」

「それは、リドル家当主である公爵様が、何のメリットもない名ばかりの侯爵家の私を選ばれたのは、それくらいしか理由が思いつきません。それに、ウェイド様が誰かを愛していることくらい分かりますわ。婚約パーティで用意された宝石、特注品で、婚約の話が出る前から注文しなければあのような芸術品は出来ません。身につけた宝石を見た時の眼差しも、とても愛情深いものでしたわ。誰か、他に想う方が……いらっしゃるのでしょう?」

 公爵は完全に固まってしまった。

 侍女頭に言われたことを思い出す。

 言わなければ伝わらない。まさにその通りだ。

 なんてことだ。思わぬカタチでこんな大きな誤解をされていることに気づいていなかったとは。

 彼女がアイリン殿下に僕を愛しているフリをしていると言われても、構わなかった。自白剤入りのお酒を飲んだ彼女が好きだと言ってくれたのだから、それ以外はどうでも良かった。

 あの時、彼女のすぐ後ろでその言葉を聞いた時、人前だというのに思わず赤面してしまった。それを見た殿下はなぜか戦意を喪失してしまったようだが、ひそかにヤドラは親指を立てていた。



 だが、思わず喜びでうかれ過ぎてしまった……

 まさか、そんな誤解があったなんて。いや、確か最初の頃にそんなことを言っていたような……あの時の言葉は、なるほど。それご原因だったのか。

 どうすればいいっ!? 実はずっと前から想っていて、つい瞳の色と同じ宝石の一級品が手に入るたびに彼女をイメージしたドレスやアクセサリーを注文していただなんて。ひかれないかっ!?

 そもそもっ、慕っているってのは誰だ!? 気にしないなんてつい強がってしまったが、気になる。そんな気配まったくなさそうだったのに。まさか、最初に婚約を受け入れる予定だった男か!? それとも……まさかヤドラ!? 妙に距離が近い気がしているが……どうすればいいっ。何から返すのが正解なんだ!?

「…………」

「すみません。出過ぎた発言でした」

 そう言うと、カレンは1人先に屋敷へと戻ってしまった。






 あぁ、最低ですわ。その話題は暗黙の了解だと最初に学んだことですのに。どうしてあんな困らせることを……

「それにしても、勢いで戻ってきてしまいましたが、どうしましょう……」

 顔を上げると、小さな呼び鈴が置いてあるのに気づく。

「こう、すれば良いのかしら」

 チリン……チリン……

 こんな小さな音であの老夫婦のどちらかが? これなら声を出して探した方が早いのではと想ってしまう。

「いかがなさいましたか?」

「っ!? えっ、いつのまに?」

 女性の方がいつのまにか後ろに立っている。

「ご安心ください。私どもはその呼び鈴だけはこの敷地内のどこにいても聞こえる訓練をしておりますので。それ以外のお話は耳に入りません」

「いえ、そうではなくて……」

「ウェイド様は呼び鈴を鳴らすときは一度切り、それも少し高めの位置からでございますので、きっと奥様の方かと思い、私が来させていただきました」

「なるほど?」

「それで、いかがなさいましたか?」

「えぇ、あの……お風呂へ入りたいのだけど……」

「ご案内いたします」

 1人でいることに触れることもなく、部屋へ案内してくれる。

「これは……」

 広々とした空間には、数種類のお風呂が設けられていた。

「この土地の地下からは熱いお湯が湧き出ておりますので、それをちょうど良い湯加減になるようひいてございます。いつ入っても温かいですので、どうぞ外でも中でも、お好きなところをお使いくださいませ。必要であればお手伝いもいたしますが?」

「お願いします」

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