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北の森のダンジョン編
第89話 ピートの過去
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「ピートは帝都の出身ではないよね?」
「僕は帝都よりももっと北の村で暮らしてました。」
「リポポさん、なんで帝都出身じゃないって分かるんですか?」
ピートの休憩に合わせて雑談をしていた。
ジャックさんは無理するなよと言い残して、往診へと出かけて行った。
「昔から獣人を攫って奴隷にする輩は多かったですからね。帝都では警戒されているので狙われるのは離れた村や集落が多いと聞いています。」
「なるほど。」
ピートもその例に漏れず田舎の村で育ったそうだ。
帝都へ届け物をしている道中、野盗に襲われて奴隷商へと売られてしまったらしい。
その後は王都の闇オークションに出されて、その場で大商人がピートを落札したそうだ。
しばらくは労働力として、積み荷運びをさせられていたが、その大商人が裏仕事の報酬の一部として雷鳴に譲ってしまったらしい。
そこからは碌な訓練も装備も与えられないまま、戦闘や雑事に酷使され続けていたそうだ。
そんな話をレナさんは悲痛な面持ちで聞いている。
「本当に。ごめんなさい。」
レナさんは涙を流して消えてしまいそうな声で謝った。
「ううん。レナさんは優しくしてくれたから。」
謝罪するレナさんをピートも辛そうに見ている。
おそらく、こんなやり取りを何度も繰り返しているのだろう。
「私は・・・彼を止められなかった。彼を止められるのは私しかいなかったのに。」
レナさんの心の内が、思い悩み、苦しんだ心の傷が目に見えるかのようだ。
この人は残りの人生をずっと苦しんで生きていくのだろうか。
俺はそんな彼女に言葉をかける事さえ出来ずにいた。
「あなたが苦しいのは分かったわ。でも、それだけでは誰も救われないのよ?」
淡々とした口調でリポポさんが続けて言い放つ。
「あなたが辛い顔をしていると、ピートだって辛くなってしまうわ。雷鳴の彼は死んでしまったから、悔いる事も詫びる事も出来ないけど。あなたは違うでしょ?」
リポポさんの言っている事は正しいと思う。
命で以って罪を償う事もあれば、生きる事で償い続ける事もあるだろう。
もしかすると、後者の方が厳しい罰なのかもしれない。
「僕もまた歩いてみせるから。レナさんも元気になってくれるといいな。」
ピートの素直な気持ちに思わず涙が出そうになってしまった。
俺まで泣いてしまうのは恥ずかしいので上を向いて必死に我慢した。
「そうですよね・・・私に何が出来るのか。考えてみようと思います。」
涙を拭いて、ポツリと呟いたレナさんの瞳には少しだけ生きる意志を感じられた。
次の日、ピートは杖を使えば日常生活を問題無く過ごせるレベルにまでなっていた。
本人も村へ一旦帰りたいと言っていたので、俺たちがついでに送って行く事にしたのだ。
レナさんの方は、王都の教会で修業を積んでから各地を巡礼する旅に出ると決めたそうだ。
病気や怪我で苦しんでいる人を助けて回るつもりらしい。
長い贖罪の旅になるのだろうが、俺はレナさん自身の心が救われる事を祈っている。
俺が自宅の工房で旅支度をしていると、サラがやって来た。
「師匠、今回は同行出来ず。すみません。」
「俺なら大丈夫だよ。仕事の依頼もあるし、そろそろ留守を任せるのも良いかもしれないしな。」
「師匠!」
「うん。留守は任せるぞ。」
「はい!師匠の期待に応えてみせます!!」
と言う訳で、サラには留守番を任せる事にした。
この経験は彼女の成長と自信に繋がってくれると思っている。
代わりと言ってなんだが、今回は心強い護衛がついてくれる事になっている。
スミスさんに依頼した剣が出来上がるまで、しばらくかかるらしくリポポさんが同行してくれるとの事だ。
しかも馬の扱いも知っているそうで、御者も出来るらしい。頼もしい限りである。
レナさんも王都までは一緒に行ってくれるので、ピートも安心してくれるだろう。
それに、俺にはライコがいますから。
新しいゴーレムボディを作る時間はなかったけど、常時守護してくれている存在は大きい。
今は大きな鼻提灯をつくって寝てるけどね。
馬車は快調に王都への道を走っていた。
野営地を通過し、次の中継地を目指して走っていると、パーンっと盛大な破裂音が鳴り響いた。
突如、馬車はガタガタと揺れて走る。
「ガ、ガ、ガルドさん、馬車に何か起こったみたいです。停めますね。」
「あー、これはたぶんアレですね。」
馬車を降りてタイヤを確認してみると、見事に萎んでいた。
やっぱりパンクしてしまったのだ。
舗装されていない道をチューブタイヤでは無理があったのかもしれない。
仕方ないのでパンクした1輪はゴムタイヤを外して強行した。
車体のバランスが悪くなったし、揺れと振動が酷い。
これはまたお尻が痛くなるヤツだ!
ゴムタイヤはまだまだ改善の余地だらけだな。
「僕は帝都よりももっと北の村で暮らしてました。」
「リポポさん、なんで帝都出身じゃないって分かるんですか?」
ピートの休憩に合わせて雑談をしていた。
ジャックさんは無理するなよと言い残して、往診へと出かけて行った。
「昔から獣人を攫って奴隷にする輩は多かったですからね。帝都では警戒されているので狙われるのは離れた村や集落が多いと聞いています。」
「なるほど。」
ピートもその例に漏れず田舎の村で育ったそうだ。
帝都へ届け物をしている道中、野盗に襲われて奴隷商へと売られてしまったらしい。
その後は王都の闇オークションに出されて、その場で大商人がピートを落札したそうだ。
しばらくは労働力として、積み荷運びをさせられていたが、その大商人が裏仕事の報酬の一部として雷鳴に譲ってしまったらしい。
そこからは碌な訓練も装備も与えられないまま、戦闘や雑事に酷使され続けていたそうだ。
そんな話をレナさんは悲痛な面持ちで聞いている。
「本当に。ごめんなさい。」
レナさんは涙を流して消えてしまいそうな声で謝った。
「ううん。レナさんは優しくしてくれたから。」
謝罪するレナさんをピートも辛そうに見ている。
おそらく、こんなやり取りを何度も繰り返しているのだろう。
「私は・・・彼を止められなかった。彼を止められるのは私しかいなかったのに。」
レナさんの心の内が、思い悩み、苦しんだ心の傷が目に見えるかのようだ。
この人は残りの人生をずっと苦しんで生きていくのだろうか。
俺はそんな彼女に言葉をかける事さえ出来ずにいた。
「あなたが苦しいのは分かったわ。でも、それだけでは誰も救われないのよ?」
淡々とした口調でリポポさんが続けて言い放つ。
「あなたが辛い顔をしていると、ピートだって辛くなってしまうわ。雷鳴の彼は死んでしまったから、悔いる事も詫びる事も出来ないけど。あなたは違うでしょ?」
リポポさんの言っている事は正しいと思う。
命で以って罪を償う事もあれば、生きる事で償い続ける事もあるだろう。
もしかすると、後者の方が厳しい罰なのかもしれない。
「僕もまた歩いてみせるから。レナさんも元気になってくれるといいな。」
ピートの素直な気持ちに思わず涙が出そうになってしまった。
俺まで泣いてしまうのは恥ずかしいので上を向いて必死に我慢した。
「そうですよね・・・私に何が出来るのか。考えてみようと思います。」
涙を拭いて、ポツリと呟いたレナさんの瞳には少しだけ生きる意志を感じられた。
次の日、ピートは杖を使えば日常生活を問題無く過ごせるレベルにまでなっていた。
本人も村へ一旦帰りたいと言っていたので、俺たちがついでに送って行く事にしたのだ。
レナさんの方は、王都の教会で修業を積んでから各地を巡礼する旅に出ると決めたそうだ。
病気や怪我で苦しんでいる人を助けて回るつもりらしい。
長い贖罪の旅になるのだろうが、俺はレナさん自身の心が救われる事を祈っている。
俺が自宅の工房で旅支度をしていると、サラがやって来た。
「師匠、今回は同行出来ず。すみません。」
「俺なら大丈夫だよ。仕事の依頼もあるし、そろそろ留守を任せるのも良いかもしれないしな。」
「師匠!」
「うん。留守は任せるぞ。」
「はい!師匠の期待に応えてみせます!!」
と言う訳で、サラには留守番を任せる事にした。
この経験は彼女の成長と自信に繋がってくれると思っている。
代わりと言ってなんだが、今回は心強い護衛がついてくれる事になっている。
スミスさんに依頼した剣が出来上がるまで、しばらくかかるらしくリポポさんが同行してくれるとの事だ。
しかも馬の扱いも知っているそうで、御者も出来るらしい。頼もしい限りである。
レナさんも王都までは一緒に行ってくれるので、ピートも安心してくれるだろう。
それに、俺にはライコがいますから。
新しいゴーレムボディを作る時間はなかったけど、常時守護してくれている存在は大きい。
今は大きな鼻提灯をつくって寝てるけどね。
馬車は快調に王都への道を走っていた。
野営地を通過し、次の中継地を目指して走っていると、パーンっと盛大な破裂音が鳴り響いた。
突如、馬車はガタガタと揺れて走る。
「ガ、ガ、ガルドさん、馬車に何か起こったみたいです。停めますね。」
「あー、これはたぶんアレですね。」
馬車を降りてタイヤを確認してみると、見事に萎んでいた。
やっぱりパンクしてしまったのだ。
舗装されていない道をチューブタイヤでは無理があったのかもしれない。
仕方ないのでパンクした1輪はゴムタイヤを外して強行した。
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これはまたお尻が痛くなるヤツだ!
ゴムタイヤはまだまだ改善の余地だらけだな。
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