目醒めたら武闘家でした。俺だって魔術が使いたい!

アマクニノタスク

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第1話

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「おい、起きろ! 起きろって!」

「ん~?」

「おい、いい加減に起きろよブルース。」

ブルースって誰だよ。
人が気持ち良く寝てるってのに。
あれ?そう言えば俺ってなんで寝てるんだっけ?

「ふあぁ~。。。」

「やっと起きたか。この寝坊助。」

「あなた誰ですか?」

「はぁ?寝ぼけてんのか?」

「ん~。」

「ほれ、さっさと寝床から出ろ。」

俺は乱暴に藁の寝床から放り出された。
え?藁???なんで?
眠くて重い瞼を開けるとそこは知らない質素な空間だった。
藁が何箇所にも敷いてあり、壁は剥き出しで所々に綻びが出来ている。

「ここは?」

「早く準備しろ。朝の鍛錬が始まるぞ。」

さっきから話しかけてきていた少年が部屋を出て行ってしまった。
仕方ない。着いて行ってみるか。
ゆっくりと立ち上がる。
何だかいつもより視界が低い?
足元を見ると裸足の自分の足が小さい。
驚いて自分の手を見る。
手ちっさ!指短い!子供の手みたいだ。

「どうなってんだ?」

俺が立ったままフリーズしていると、さっきの少年が戻ってきた。

「お前、今度は立ったまま寝てるのか?みんな行っちまったぞ!早くしろって!」

見知らぬ少年に手を引かれ隣の部屋へ、部屋には扉もないし、そこら中が質素な作りだ。
部屋の中には木製の棚がたくさんあり、全てに竹籠が置いてある。旅館とかの脱衣所みたいだ。

「ほれ、これに早く着替えろ。」

頭から被るだけの布を脱いで、ボロ布のズボンを履く。腰を紐でくくる。ボロ布の上着を羽織る。前で合わせて帯紐で止める。

「柔道着みたいだな。」

「は?何言ってんだ?これは道着だ。しっかりしてくれよ。」

着替えを終えると、また手を引っ張られて移動しだした。

「急げば師範が来る前に行けるぞ。」

少年は更に力を込めて俺を引っ張って走る。
廊下を抜けると広場?運動場?みたいになっていた。
そこには多くの少年達がパンチや蹴りの素振りをしたりとトレーニングに精を出していた。

「少林寺みたいだな。」

「何をさっきから訳のわからん事を言ってるんだよ。って師範が来たぞ!行くぞ。」

一斉に少年達が髭のおっさんの前に整列して行く。
俺もヤバそうなので大人しく列に並んだ。

「師範、おはようございます。」

「「「おはようございます」」」

背の高い少年が挨拶すると全員が続けて挨拶をしている。

「みんな、おはよう。それでは朝の鍛錬を始めるぞ。まずはリンゴの型からだ!始め!」

「「「はい!」」」

ハッ!  ハッ!  ハッ! ハッハッ!


え?なに?リンゴ?
何が始まったの?

完全に置いてけぼりを食らっている俺。
ポツンと1人だけ取り残されていると、髭のおっさんがこちらへやって来た。

「どうした、ブルース。鍛錬を始めんか。」

「え、あの。どうやればいいんですか?」

「師範、こいつ朝から変なんです。」

「ふむ。弛んでおるな。」

「えっ?」

「喝っっっっっつ!」

俺は突如、ビンタされた。
そして見事に宙を舞って意識を失った。



「おーい、ツッチー!次の授業始まるぞ!」

「おー、今行く。」

あー、そうだ。これだよ俺の日常は。
大学に行って友達と興味もない授業に出て、そのまま友達の家で酒を飲む。
多分、今日もあいつらと馬鹿話をして酒飲んで楽しく過ごすんだ。


「おーい、そろそろ起きろー。」

バシャー

「わっ!冷た!」

「やっと起きたか。午後の鍛錬に出ないと、また1発お見舞いされるぞ!」

「あれ?リズム。僕はなんで寝てたんだっけ?」

「あらら、記憶もぶっ飛ばされたか?」


これは僕が7歳の春の時の出来事だった。
この出来事の後から、しばしば変な夢を見たり、記憶が混乱したりする事が起きていた。
僕の頭は変なのではないかと悩む時もあった。


それから3年後。
僕は10歳になり季節は秋が過ぎようかとしていた頃だった。
近くの小川のほとりにある大岩の上で瞑想をしていた時、何の前触れもなく、僕は覚醒した。

「こ、これは。」

今まで頭の中にかかっていた濃霧が一斉に晴れた様な、乱雑だった本棚が綺麗に整頓された様な、スッキリとした晴れやかな気持ちに包まれた。

「そうか。俺は転生していたのか。」

3年前から俺を悩ませていたのは、俺の前世の記憶だったようだ。
今までは断片的に思い出され、現世の記憶を混乱させていたのだ。

なぜ急に覚醒したのかは分からない。
偶然なのか?年齢的なものか?今までは頭脳の容量が足りてなかったからとか?
考えても分からないが、これだけは理解できた。

「俺は前世の記憶を手に入れた。」
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