1 / 7
第1話
しおりを挟む「おい、起きろ! 起きろって!」
「ん~?」
「おい、いい加減に起きろよブルース。」
ブルースって誰だよ。
人が気持ち良く寝てるってのに。
あれ?そう言えば俺ってなんで寝てるんだっけ?
「ふあぁ~。。。」
「やっと起きたか。この寝坊助。」
「あなた誰ですか?」
「はぁ?寝ぼけてんのか?」
「ん~。」
「ほれ、さっさと寝床から出ろ。」
俺は乱暴に藁の寝床から放り出された。
え?藁???なんで?
眠くて重い瞼を開けるとそこは知らない質素な空間だった。
藁が何箇所にも敷いてあり、壁は剥き出しで所々に綻びが出来ている。
「ここは?」
「早く準備しろ。朝の鍛錬が始まるぞ。」
さっきから話しかけてきていた少年が部屋を出て行ってしまった。
仕方ない。着いて行ってみるか。
ゆっくりと立ち上がる。
何だかいつもより視界が低い?
足元を見ると裸足の自分の足が小さい。
驚いて自分の手を見る。
手ちっさ!指短い!子供の手みたいだ。
「どうなってんだ?」
俺が立ったままフリーズしていると、さっきの少年が戻ってきた。
「お前、今度は立ったまま寝てるのか?みんな行っちまったぞ!早くしろって!」
見知らぬ少年に手を引かれ隣の部屋へ、部屋には扉もないし、そこら中が質素な作りだ。
部屋の中には木製の棚がたくさんあり、全てに竹籠が置いてある。旅館とかの脱衣所みたいだ。
「ほれ、これに早く着替えろ。」
頭から被るだけの布を脱いで、ボロ布のズボンを履く。腰を紐でくくる。ボロ布の上着を羽織る。前で合わせて帯紐で止める。
「柔道着みたいだな。」
「は?何言ってんだ?これは道着だ。しっかりしてくれよ。」
着替えを終えると、また手を引っ張られて移動しだした。
「急げば師範が来る前に行けるぞ。」
少年は更に力を込めて俺を引っ張って走る。
廊下を抜けると広場?運動場?みたいになっていた。
そこには多くの少年達がパンチや蹴りの素振りをしたりとトレーニングに精を出していた。
「少林寺みたいだな。」
「何をさっきから訳のわからん事を言ってるんだよ。って師範が来たぞ!行くぞ。」
一斉に少年達が髭のおっさんの前に整列して行く。
俺もヤバそうなので大人しく列に並んだ。
「師範、おはようございます。」
「「「おはようございます」」」
背の高い少年が挨拶すると全員が続けて挨拶をしている。
「みんな、おはよう。それでは朝の鍛錬を始めるぞ。まずはリンゴの型からだ!始め!」
「「「はい!」」」
ハッ! ハッ! ハッ! ハッハッ!
え?なに?リンゴ?
何が始まったの?
完全に置いてけぼりを食らっている俺。
ポツンと1人だけ取り残されていると、髭のおっさんがこちらへやって来た。
「どうした、ブルース。鍛錬を始めんか。」
「え、あの。どうやればいいんですか?」
「師範、こいつ朝から変なんです。」
「ふむ。弛んでおるな。」
「えっ?」
「喝っっっっっつ!」
俺は突如、ビンタされた。
そして見事に宙を舞って意識を失った。
「おーい、ツッチー!次の授業始まるぞ!」
「おー、今行く。」
あー、そうだ。これだよ俺の日常は。
大学に行って友達と興味もない授業に出て、そのまま友達の家で酒を飲む。
多分、今日もあいつらと馬鹿話をして酒飲んで楽しく過ごすんだ。
「おーい、そろそろ起きろー。」
バシャー
「わっ!冷た!」
「やっと起きたか。午後の鍛錬に出ないと、また1発お見舞いされるぞ!」
「あれ?リズム。僕はなんで寝てたんだっけ?」
「あらら、記憶もぶっ飛ばされたか?」
これは僕が7歳の春の時の出来事だった。
この出来事の後から、しばしば変な夢を見たり、記憶が混乱したりする事が起きていた。
僕の頭は変なのではないかと悩む時もあった。
それから3年後。
僕は10歳になり季節は秋が過ぎようかとしていた頃だった。
近くの小川のほとりにある大岩の上で瞑想をしていた時、何の前触れもなく、僕は覚醒した。
「こ、これは。」
今まで頭の中にかかっていた濃霧が一斉に晴れた様な、乱雑だった本棚が綺麗に整頓された様な、スッキリとした晴れやかな気持ちに包まれた。
「そうか。俺は転生していたのか。」
3年前から俺を悩ませていたのは、俺の前世の記憶だったようだ。
今までは断片的に思い出され、現世の記憶を混乱させていたのだ。
なぜ急に覚醒したのかは分からない。
偶然なのか?年齢的なものか?今までは頭脳の容量が足りてなかったからとか?
考えても分からないが、これだけは理解できた。
「俺は前世の記憶を手に入れた。」
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる