目醒めたら武闘家でした。俺だって魔術が使いたい!

アマクニノタスク

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第2話

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俺は前世の記憶を手に入れた。
現世の記憶もハッキリと覚えている。

前世の俺は、どこにでもいる普通の大学生だった。
勉強する為ってよりも仲間に会う為に大学へ通っていた。
毎日のように夜は仲間たちと酒を飲んで盛り上がっていた。
惜しむらくは彼女ができなかった事だろうか。

前世での最後の記憶はやっぱり酒を飲んで酔っ払っていた。
友人のアパートで酒盛りをして、酔っ払って寝てしまった。
そして俺はそのまま目覚めなかった。
その後の俺がどうなったのかは分からない。

次の記憶は現世の3歳ぐらいの時のものだ。
現世の俺は戦争孤児だった。
俺は国境付近の小さな村で暮らしていた。
辺鄙だけど、のどかな農村だった。

小競り合いを繰り返す国同士の戦火に村は巻き込まれた。
突如として現れた鎧の騎士達に村は焼かれ、大人達は全滅させられた。
生き残ったのは俺とリズムの2人だけ。
リズムの親父さんが俺たち2人を抱えて馬で村を脱出してくれたのだ。
しかし、隣の村へ着く前に親父さんは亡くなってしまった。
親父さんの背中は黒く変色した血で染まり、大きく斬り付けられた傷があった。

俺たち2人は泣きじゃくる事しか出来なかったが、幸いにして隣の村の近くまで来ていたので通りがかった農夫に発見され、その後は国に保護された。

この国の孤児は数多くある道場のいずれかに引き取られ、育てられる。
勿論、武術の鍛錬は強制であり、国の兵力強化の一環としてである。

そもそもこの国は戦いの神を崇める武闘派国家であり、隣国の商いの神を崇める資本主義国家とは争いの種が尽きない。

この国では武術が盛んで、剣術や弓術から武闘術など多くの流派が出来ている。
俺たちが暮らしている道場はフルーツ流闘術道場で、拳術や棒術を得意としている。

道場は完全実力主義なので武闘術の腕前が最重要視されている。
俺の序列は36人中の21番目。中の下なのだ。
リズムは俺よりも成長が早く背も高いので2位と上位をキープしている。
俺も今まで真面目に鍛錬していたのだが、どうやら俺は体の成長が遅いようだ。
背も低いし筋肉もついていない。
俺にはこの先、将来性があるのだろうか?
今まではかなり閉鎖的な世界で暮らしてきたが、もっと外の世界も知りたいと正直思う。

将来について思案していると、小川の向こうの茂みが揺れる。
動物か?熊ならヤバイな。
いつでも逃走できるように構える。

ガサガサ ゴソ ガサ バタン

茂みから出て来たのは人間だった。
出てくるとそのまま倒れてしまった。気絶した様だ。

「おーい、大丈夫かぁ?」

声をかけてみるが返事がない。
小川を渡り、近づいて確認してみる。

「おーい、気絶してるのか?」

突いてみても反応しない。息はしている様だ。気を失っているだけの様なので、小川の水をすくって顔の付近にかけてやった。

「うぅ。食い物を。。。」

どうやら空腹で倒れた様だ。
おやつ用に持っていた干し芋を顔に近づけると鼻をクンクンとさせて目を開いた。

「いーーもーー!」

すごい疾さで干し芋を奪われるとバクバクと食べられてしまった。
途中で喉を詰まらせると小川に走って行き水をガブ飲みしている。
どうやらボロボロのローブを着た男性だったみたいだ。

「ゴホッ ゴホッ。 いやぁ、助かった。恩にきるぞ、坊主。」

「おっさんは何で倒れてたんだ?」

「おっさん!?俺はまだ28歳だぜ。お兄さんと呼べ!」

「髭とかボーボーだし、おっさんで十分だよ。それにこっちは命の恩人だよ!」

「な、生意気な坊主だな。お前さんはこの辺の道場の子か?」

「そうだよ。おっさんこそ何者なの?」

「ふむ、俺はな冒険者だ。あるものを探して仲間と旅をしていたんだがな、仲間とはぐれてしまってなぁ。」

「へぇー、冒険者なんだ。仲間もこの辺りにいるのか?」

「それがさっぱり分からん。まずは近くの村か町に出て情報を集めんとな。」

「ふーん。近くの村ならここから2日ぐらいだよ。」

「なに!遠いな。水も食料も無いと言うのに。」

「おっさん、冒険の話を聞かせてくれるなら俺の水筒をあげるよ?それに食料ならその辺の獲物を仕留めれば良いんじゃない?」

「ふむ。そうだな。坊主、もう食べ物は持ってないのか?」

「もうないよ。道場に戻ればあるけど、俺の分からしかあげられないよ?」

「頼む!食べ物を分けてくれ。空腹状態では魔力が回復せんのだ。」

「え、魔力? おっさん魔法が使えるの?」

「魔法ではなく魔術な。俺は魔術師だからな、そこそこ使えるぞ。」

「じゃあ食べ物を分けてあげたら魔術を見せてくれる?」

「んー、そうだな満腹とは言わんが腹8分目まで食わせてくれたら見せてやれるぞ。」

「うーん。わかった。夕飯から持ってくるよ。おっさん、ここで待ってて!」

「そろそろお兄さんと呼べよ~。」

俺は道場へと駆けて行った。
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