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女騎士の父親について

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女騎士「うーん」



剣士「どうした?」



女騎士「実は、実家に置いてきた父上のことが気になっていた」



剣士「そうなのか…父さんは結構お年なのか?」



女騎士「いや、私の一つ上だ」



剣士「どういうことだよ…」



女騎士「それは冗談だが、我が家は少し複雑な家庭環境でな」



剣士「あ、もしかしてその義理のお父さんだったり?」



女騎士「いや、ギリギリの父上だな」



剣士「どういうポジションなんだよ…お前の父ちゃんってことは、お前の父ちゃんも騎士なんだよな」



女騎士「ああ。父上は誇り高き戦士だった。 

思い出すよ。いつもコンビニの裏側から廃棄の弁当をもらってくる仕事をしていた事」



剣士「仕事……?」



女騎士「何をいっている。これも立派な女騎士の仕事だろう」



剣士「お前の父ちゃん「女」騎士なの……?」



女騎士「それから父上はバイオリンを弾いてくれた」



剣士「へえ、いいな」



女騎士「あ、バイオリンといってもエアーの方だがな」



剣士「引いてねえじゃねえか」



女騎士「今でもあの懐かしい音色を思い出せるよ」



剣士「幻聴だよ」



女騎士「毎晩村人達が集めて演奏会を開いていた」



剣士「カルト宗教か」



女騎士「CDも売れるほど人気だったんだぞ」



剣士「病気だよ」



女騎士「よく父のCDでドミノ倒しして遊んだものだ」



剣士「だいぶ売れ残ってんじゃねえか」



女騎士「父上は私が音楽を好きなことを知っていたから…誕生日にはいつも素敵なプレゼントをくれたものだ」



剣士「何をもらったんだ?」



女騎士「コオロギ1000匹だ」



剣士「きもっ!」



女騎士「私は嬉しくなって、全部父上の寝室に解き放ったっけ」



剣士「仕返ししてんじゃねえか!」



女騎士「そんな父上も、私が家を出て冒険者になると言ったら反対していた」



剣士「まあ大事な娘が一人旅に出るんだから不安だよな」



女騎士「『お前が家を出たら父さんの髪は誰が切るん!』と怒っていた」



剣士「反対してる理由がくだらねえ」



女騎士「私はいつも父上を三つ編みにしていた」



剣士「ガーリー!」



女騎士「時々ポメラニアンカットにもした」



剣士「何で犬のラインナップなんだよ!」



女騎士「最近は面倒くさくなってザビエルカットにしているがな」



剣士「もうただの嫌がらせじゃねえか!」



女騎士「聞いてくれてありがとう。少しスッキリした」



剣士「俺はもやもやする一方だが」



女騎士「父上のためにも、私は必ず、立派なグルメリポーターになってみせる!」



剣士「……女騎士は?」



おわり

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