職場は超ブルー

森山 銀杏

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死するべき戦いの始まり1

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俺は撤退してゆく防衛軍の車両を見送り、ポイントA地点に来ていた。

ビルの屋上で周囲が見渡しやすく、通りにも面している。

戦いを始める場所としてはここ以外には無いポジションだ。

俺は戦いの準備をするためしっかりと筋を伸ばし、体をほぐす。今日は無理をするつもりだったから入念にだ。

三十二歳。良い年のおっさんだ。

体の筋肉は若い頃と比べてやはり落ちている。

特に持続力が落ちているのは感じるが、それはユニフォームのおかげで問題はない。

ユニフォームを着れば、着た瞬間の状態を保ってくれる。だから全速力でいつまでも走れるし、体を痛める事も無い。 それゆえにベストな状態で変身する事が求められる。

体を温めた俺の耳につけたイヤホンから声が入る。

「次元振動感知。F7地点、怪人出現します」

その声を聞き、俺は研究員から受け取った銀色のケースを開き、注射器を取り出す。

袋を開け、思い切ってむき出しにしていた肩に刺した。

「いっ!」

思わず顔をしかめて、声を上げるくらいには痛い。そこから中の液体を流し込む。

それから服を着込む。

聞いた話だと反応はすぐ出るって話だが……。

そう思ったときだった。大きく心臓が鼓動して、目の奥が熱くなる。

気がつけば、膝をついていた。

俺が打ったのは神経増強剤。いわゆるドーピング。

集中力の著しい向上を行い、同時に肉体へのリミッターを緩くする。その試薬である。

副作用の話は効いたが、それでもやらなくてはならない。

立ち上がり、空を見る。

青い。実に青い。やけにすっきりとしている。

なるほど、腕にまいた時計の秒針の動きがやけにのんびりして感じる。

「男の意地を薬品で支えるのもどうかと思うが」

俺はそう呟き、携帯電話を取り出した。

副作用は三分後、だがしかしユニフォームは今の状態を保持してくれる。

つまり副作用が来るのはユニフォームを脱いだ三分後だ。

「ファイバーズ、ブルー。変身!」

俺はそう叫び、携帯電話を腕に付けているバングルに重ねる。バングルは青く輝く。

実は俺はこの変身が嫌いじゃない。機械音声がバングルから出る。

「 装着者認識! チェンジ、ファイバーズ」

青いユニフォームが俺を覆って行く。

俺がこれを脱ぐときは副作用でゲロをぶちまけるか、あるいは死んでいるときかのどちらかだ。

青いユニフォームの上には戦闘服とタクティカルジャケット。

マガジンを入れたポーチ。キーホルダーのようにぶら下がった手榴弾。

いつもの戦闘スタイルだが、それらすべてがひどく軽い。

なるほど気分は悪くない。いいや、最高だ。

しかも敵は異世界人、何の遠慮もいらない。

こんな気持ちで戦えるなら、兵隊も悪くない。

俺は禁止されて使ってなかった対物ライフルを手に取り、敵の出現方向に向きなおる。

三脚を出し、ライフルを置いて目を凝らす。遠くの向こうに黒い点が見えてきた。

首から下げていたゴーグルを構えて距離を算出。おおよそ五百四十五。

「良い方向だ。大通り沿いとは運がいい」

幸運な事に俺が居るビルの屋上からは敵の出現位置は丸見えだった。これなら存分に狙える。

ライフルのスコープを距離に合わせて修正しながらレンズの向こうを覗き込む。

そこには黒い点から黄土色を基調とした出来の悪い泥人形みたいなものがわき出してくる。

「よしきた。又来週」

それに合わせて、引き金を絞る。

肩を思い切り蹴り上げられたような衝撃。それを押さえ込み、角度をかえる。再びの衝撃。

発砲した際の揺れの中で、もう一度。続けてもう一度。もう一度。もう一度。これで最後。

六発の弾丸が群れとなって飛んで行く。

まるで吸込まれるように、弾丸はすべてそれぞれ別の怪人へと命中する。

弾が当たった瞬間、怪人の体は上下が捩じれて、千切れ飛ぶ。

俺はその大惨事に呆然とした。

対物ライフル……俺が今使っているのはオートマチックだ。

連射は効くが、その連射を活かしながら別の的に立て続けて当てる事はほぼ無理だ。いや、無理だった。

だが行けると思った。だから引き金を引いた。

その結果が全弾命中。……なるほど、薬の効果はでかいらしい。

俺は下唇を軽く舐めて、マガジンを交換する為に腕を伸ばした。

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