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1章
謁見という名の午後のお茶タイム
しおりを挟む「マイ様、それでは陛下のいる謁見の間までご案内致しますね」
ミーチェさんは扉を開けて、私の前を歩いて先導してくれる。
昨日はヴァレン様と横並びで歩いていたせいか、少しその背中を見て悲しい気持ちになった。
けれど後ろを歩くことで、昨日とはまた違った気分で城内が見られることが嬉しい。
昨日は気付かなかったが、ここは城の入り口から離れた塔のような建物で華美ではないがシンプルで落ち着いた作りだった。
それからしばらく右へ左へと進み、しばらく歩いた所でヴァレン様が立っていた。どうやらここが謁見の間の扉らしい。
確かに装飾が綺麗な扉ではあるが、想像していたような広い通路や赤絨毯、一列に並ぶ近衛兵みたいなのは見当たらない。
こちらに気づいたヴァレン様が、昨日と同じようにキラキラオーラ全開で微笑みながら近づいてきた。
「落ち人様、不都合はありませんでしたか?」
「ヴァレン様、昨日はありがとうございました。とても快適にすごせました。そういえばまだ名前をお伝えしてませんでしたね?私はマイと言います」
「お名前をお聞きすることを失念しておりました。ではマイ様、まずこの先のことについてお伝えしておきますね」
ヴァレン様はそう言って簡単に教えてくれた。
まず、中には陛下と数名の王族と各団体の長、そして宰相。
陛下と王族への挨拶は私が知っているもので特に問題ないとのこと。
終わったら私から、昨日の事についてまず説明をして、その後に質問時間が欲しいという事だった。また、説明はありのまま起こったことを話せばいいとのことで、言葉遣いも気にしなくていいそうだ。
思っていたより随分ラフなのですがいいんでしょうか。
「ではマイ様中へ入りますがよろしいですか?」
「はい、お願いします」
ヴァレン様は扉の前に立ち、斜め後ろに私が立つ。気が付くとミーチェさんはすでにいなくなっていた。
「第3騎士団長ヴァレンティノ、落ち人マイ様をお連れしました」
ヴァレン様のイケメンボイスが更に低く、ピンと張った声になったことで、私の緊張感が一気に高まった。
身分が高い方なんだろうな、とは思っていたがまさか騎士団長様だったとは。
つくづく私は運がいいとこっそり心の中で思い、緊張感を紛らわしていたら中から扉が開かれた。
一歩中へ入ると、目の前には重厚感のある何十人も座れそうな大きな縦長のテーブルがあり、正面に王様と王妃様と思われる二人が座っている。その後ろに立っているのが恐らく宰相。
縦列には二人の男性が座っているが、軍服みたいな服装なので恐らく王族。
その反対側にはヴァレン様と同じような騎士服を着た方が二人。いかにも魔法使いといったローブを着ている方が一人。
恐らくこちら側が各団の団長さんなのだろう。
席に誘導され、椅子を引いてエスコートをしてくれる。ヴァレン様は私の横に座るようだ。
だけど座る前にどうしても一言言いたいことがあった。
「始まる前に一つよろしいでしょうか?この度は手厚く保護して下さりありがとうございました」
私は深く腰を折り、3秒たってから顔をあげそして椅子へ腰かけた。
誰もが驚いた顔で私を見る。
正面に座っている王様も最初は驚いていたがすぐに破顔し、優しい笑みを浮かべた。
「落ち人はマイ殿と言ったか?私はこの国の王をしているヴェルナーレ17世だ。堅苦しいことは好きではないが、マイ殿の心意気に感激した。過去と比べるのはよくないが保護しただけで感謝されたのはマイ殿が初めてだ」
王様はニコニコと笑い軽く手を挙げると、扉が開き侍女さん達が配膳カートを押して中へ入ってくる。
カートの上には人数分のティーセットといくつかのケーキスタンドが置いてあり、各個人へ配膳されていく。
勿論私の前にも紅茶とケーキスタンドが。
「さ、暖かいうちに戴こう」
王様はそう言って、紅茶を一口飲むと目の前のケーキスタンドからお菓子を選び口に運ぶ。
王様に続いて、他の方々も紅茶を飲み軽食やお菓子を摘まんでいる。
驚いている場合ではない!
空気をよんだ私も同じように紅茶をいただく。
茶葉の香りがたっていて温度も最適。お菓子も程よい甘さで、なんと素敵なアフタヌーンティーなんだろう。
「さて、マイ殿。早速本題となって申し訳ないがこちらに来たときの経緯を教えてくれないだろうか」
王様は満足したのか、優しい声で問いかけてきた。
「はい。空も綺麗で日も高かったので昼頃だと思います。気が付くとお城の横にある湖の上に立っていました。私がその前までいた場所、というか世界とあまりにもかけ離れていたのでとりあえず水際に座って状況確認をしていました。
こちらに来る前に、色々とありましたので考え事をしていたら夕方になっていて、その後すぐにヴァレン様に発見していただきました」
簡潔かつ分かりやすく、まず事実だけを述べる。
就職してから身につけた上司への報告方法が、こんなところで役に立つとは思わなかった。
「そうか。ではマイ殿は昨日の昼頃こちらに来たということか」
王様は「ふむ」と少し考え込み紅茶を一口飲む。
「陛下、私からいくつかマイ様へ質問させていただいてもよろしいでしょうか?」
魔法使いと思われるローブを着た人が興奮した様子で私を見る。
「よかろう」
「ありがとうございます。マイ様、私は魔法師団長のナハトと申します。いくつか細かい事を質問させていただきますが、答えたくない時は仰って下さい」
ナハト様は猫っ毛のような癖のある茶髪で、見た目だと私と変わらないか、少し幼くみえる。
団長職についてると言われないと分からないかもしれない。
「では早速。まずマイ様が気付かれたのは昨日の昼ということですが、その前にこちらに来てどこかで宿泊されたりしましたか?」
「いえ、本当に昨日のことです。足が濡れていたのと、先程も申しましたようにこちらに来る前に色々とありましたので気持ちを落ち着けるためにも留まっていようと思いました。どこに泊まるとか、どこかへ行くという考えはありませんでした」
「そうですか、、、。では次にマイ様がいた世界には魔法がありましたか?」
「魔法という概念、というか使用できたらいいなという程度で創作の領域です。魔法は使用できません」
「その概念と創作に非常に興味がそそられます!
後日また詳しく教えてくださいね!!話がそれてしまい申し訳ありません。次が最後になります」
どうやらナハト様は興奮すると話が脱線してしまうようだ。そんなところも幼く見える要因だろう。
「最後に、、、マイ様は瞳の色が黒いようですが髪色は違いますよね?瞳の色、もしくは髪色を変化させているのですか?」
「あ、髪の色は染色?っていえば伝わるのかな?茶色に染めていて地毛は真っ黒ですよ。目は何もしていないので見たままの色です」
「やはりそうでしたか!私からの質問は以上です」
ナハト様は納得したようでニッコリ微笑むと、紅茶を一口飲んで口の乾きを癒していた。ついでに私も戴く。
「他に質問したいものはいるか?」
「父上、質問ではありませんが私からよろしいでしょうか」
王様の横に座っている軍服の男性。
二人いるうちの、王様寄りに座っているところを見ると王子様に当たるのかな。
王様は無言で頷いた。
「私はこの国の第一王子ヴェルサスと申します。これからのことについては私より説明致します」
ヴェルサス王子は艶のある黒髪。王様も王妃様も金髪なのであれ?と思ってしまうけれど、確かにお二方のいいところを受け継いでいるお顔立ちなので正統派イケメン王子様だ。
「まず、マイ様にはしばらく城内で生活をしていただきます。先ほど少し話題に上がりましたがこの世界は魔法を生活にも使用する世界です。現在滞在されている部屋は魔法が使用できなくても問題ない部屋ですので安全面からでもよろしいかと」
「わかりました。ご配慮ありがとうございます」
「あと、マイ様からもご質問があるかと思います。そこは私とヴァレンで後程お部屋に伺いお聞きしたいのですがよろしいでしょうか?」
「わざわざお越しいただけるなんて、逆に申し訳ないのですが、、、」
「構いませんよ。私の執務室だと落ち着かないと思いますし、私も部屋の状況を確認したいですしね」
ヴェルサス王子は柔らかい笑みを浮かべた。
この国の偉い方々は笑顔を武器にしているのだろうか?みんなニコニコしていて想像していたようなピリピリ感を感じない。
まぁ、謁見でお茶とお菓子が出てくる辺りで大分拍子抜けしたけど。
「残念だが時間になってしまったようだ。マイ殿のことはヴェルサスに一任してあるので何かあればすぐに言ってほしい。あと、もし暇になったらまた茶会でもしよう」
「ありがたいお言葉嬉しいです!本日はお忙しい中お時間を割いていただきありがとうございました」
王様がニッコリと微笑み椅子から立ち上がったのに合わせて王妃様も立ち上がった。私も立ち上がってお辞儀をし退出するまで頭を上げなかった。
その後すぐにミーチェさんが私のお迎えにきたので部屋を退出する際にペコリと室内に一礼をして謁見会場を後にした。
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