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2章
縮まる距離
しおりを挟む思ったよりも早く客室掃除が終わってしまった為、早めに部屋に戻ってきた。
ミーチェさんに合格点をもらえ、明日も楽しみだなと思っていたら不敵な笑みを浮かべたミーチェさんが後ろに佇んでいた。
「さぁ、マイ様?マイ様のお陰でお時間がまだありますので、ヴェルサス様との勉強会の前に湯あみとマッサージをしましょうか」
有無を言わさず強引にお風呂に連れていかれ、念入りに体を洗われ、更に念入りにマッサージをされてしまう。
もしや明日からこの地獄のような時間を毎日過ごさなければいけないのだろうか、、、。
掃除していた時間よりも長く湯あみとマッサージの施しを受けたせいか、掃除してた時よりも遥かに疲れた。
主に精神面が。
「マイ様お疲れさまでした。掃除の汚れも落ちましたし、お肌もピチピチですね。昼食の準備をして参りますので、しばしお休みください」
そう言ってミーチェさんはいつもの緑茶ベースのお茶のよく冷えたものを出してくれた。
湯上がりの火照った体に冷たさが染みてすごく美味しい。
気分はお風呂上がりにキンキンに冷えたビールを飲んで「ぷはー」といっているお父さんだが、流石に恥ずかしいのでそれはしない。
しばらくお茶を飲みながらくつろいでいると、ミーチェさんが戻ってきたので昼食。
今日は蒸し鶏の野菜たっぷりサンドイッチとミネストローネみたいなトマト風味のスープだった。
よく異世界ものでご飯が不味いっていうのを見たことがあるが、この世界は自分の舌に合う味だから本当によかったと思う。
本当に美味しいから、いつか作り方教えてくれないかな、、、。
ミーチェさんは片付けと、終わらなかった他の侍女さんのお手伝いに行くと行って部屋を出ていった。
食べ終わってお腹が満たされたせいなのか、はたまた掃除の疲れも合ったのか、急に抗えない眠気が襲ってきてついウトウトしてしまった。
誰かが私を呼んでいる。
酷く悲しい声で。
誰?
翔、、、?
ふっ、と意識が戻ると左側に熱を感じた。
それが人の体温だと分かったのはすぐだった。
心地よいその体温をまだ感じていたくて、もう少しこのままでもいいかなって思ってしまう。
どうやら誰かの肩を借りて眠ってしまっていたらしい。
その誰かからじんわりと何かが伝わってきて身体中を巡った、と思ったら巡った何かが私から抜けていく。その繰り返し。
このままでいたい。
このまま、、、、、、、、
と思っていたら、ふと頭に重さを感じて今度こそ目が覚める。
目線を上に向けてみると、黒髪が見える。
規則正しい呼吸。
視線を落とせば、手元には読みかけの本。
何となく起こしてしまうのは申し訳なくて、どうしようか迷っているとぴくっと相手の体が動いた。
「ん、、、」
耳元で艶のあるイケメンボイスが聞こえて、私の横にいるのがヴェルサス様だとはっきりわかった。
あれ、ヴェルサス様の声が色っぽいぞ。
きっと眠ってるからだよね。
そうだよね?
「マイ、、、?」
あぁ、誰か私の代わりに鼻血を出してくれる人はいませんか?
今私はヴェルサス様の枕なので、鼻血を出すことも動くことも出来ないのです。
そもそも私は鼻血が出せないんです!
そんなことを思っていたら、急に頭が離れヴェルサス様と目が合った。
寝ぼけていてもヴェルサス様はイケメンだなーと思っていたら、急に顔色が悪くなって慌てて謝ってきた。
「わ、悪かった!寝るつもりは全くなかったんだ!執務が早く終わって来てみたら返事がないし、中に入ったら体がかなり斜めって寝てたから横に座って起きるのを待ってたんだ!そしたら急に眠気が襲ってきて、、、」
ヴェルサス様かなりお疲れなのかな。
でもあの時に感じたポカポカ感は、絶対どんな人でも抗えないと思う。
というか、王子様の前で体を斜めにして眠っていた私恥ずかしすぎる。
「あ、いえ私の方こそ凄い眠り方をしていたみたいでご迷惑おかけしました」
「いや、問題ない。それよりもさっき感じたのは魔力の相互交換だった。今まで俺は誰とも出来なかったが、、、」
「魔力の相互交換とはなんですか?」
「あぁ、同じくらいの魔力を持つもの同士が出来る魔力の交換方法だ。例えば魔力が枯渇しているものに魔力を与えたり、上位魔法を唱える際に発動者に魔力を分け与えてより強固ものにできる方法だ。
俺は今まで誰とも出来なかったが、マイとは出来るようだな」
ヴェルサス様は満面の笑顔で私を見る。
ヴァレン様みたいなキラキラオーラだけど、なぜか私は真っ赤になってしまってヴェルサス様の顔を直視できない。
「マイ?」
顔を背けたのが悪かったのか、ヴェルサス様に顔を覗きこまれそうになったので慌てて話題をそらすことにした。
「そ、そういえばヴェルサス様口調が時々変わりますよね?」
「、、、気付いてたのか?」
「私何となくそういうの分かるんです。だから話しやすい方でいいですよ?」
「そうか。ならマイには普通に話すことにするか」
ヴェルサス様は先程と同じように満面の笑顔で、キラキラオーラを放った。
うぅ、誰か私の代わりに鼻血を、、、、
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