彼氏に振られたら、異世界にいました

香月

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2章

騎士団長様と城内見学

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ヴィーノ様の背中が見えなくなったあたりで、ミーチェさんが戻って来た。

「今日もまた輝くくらい磨いて下さったんですね」

キラキラと輝くガラスと調度品。
チリ一つない絨毯。

交差する廊下と比べると、異常に輝いてる。
やりすぎた感はあるけれどやっぱり高貴な方が住むところだし、きっと来客も多いだろうから綺麗すぎる分には問題ないはずだ。

ヴィーノ様との一件で少し落ちていた気分も、ミーチェさんのお陰でなんとか元に戻すことができた。

が、忘れていたのだ。
この後に起こる地獄の時間を。

「さぁ、マイ様。今日はヴァレンティノ様との城内見学ですね。城内の者にマイ様の美しさを見せつけるチャンスですよ!」

「やめてーーーーー!」

昨日より気合いが入っているミーチェさんに、これでもかと念入りにマッサージをされ、挙げ句の果てにいい匂いのするオイルを塗り込まれた。
そしてまたドレス選び。

今日は歩く距離が長そうなので、水色の侍女服に似たシンプルなドレスにした。けれど、艶のある絹糸で縫い付けられた花の刺繍が華やかさを出してくれる。

そして昼食後、控えめに扉がノックされヴァレン様が迎えに来た。

「マイ様お待たせ致しました。今日も素敵ですね」

初日に見たキラキライケメンオーラを纏い、ニッコリ微笑まれる。

「お世辞でも嬉しいです」

「お世辞なんかじゃありませんよ。相変わらず謙虚なんですね」

ヴァレン様は楽しそうに言って、私達は部屋から出た。今日は王宮内と各師団の見学をするらしい。

「ここが本来の謁見の間になります。中に入ることは出来ませんが、各国の来賓を迎える場所になります」

まず連れてこられたのは、謁見の間。
私が本来予想していたとおり、謁見の間に続く通路は広い通路に赤い絨毯。鎧に包まれた兵士が壁際に控えている。
やはりあの謁見は、従来通りではなかったんだ。

「城内と王宮周辺は第1師団が警護にあたります。王族や落ち人様の住居の警護担当も兼ねているので、マイ様が一番目にすることが多い師団ですね」

その後、ヴェルサス様、ヴィーノ様、宰相さんの各執務室の前を通りながら簡単に説明を受ける。

ここの辺りは一定間隔毎に第1師団の方がいるが、各執務室の前の扉には両脇に兵士が立っており、扉の前には槍が交差されていて鍵のように塞いでいる。

「あれは両脇の兵が仮に討たれても、槍が結界の役割を果たしているので、鍵の役割と時間を稼ぐ意味合いがあります。中から開ける分には全く問題ないですよ」


次に案内されたのは先程の執務室から少し入口側に歩いた辺り。絨毯の色も落ち着いた紺に変わっている。この辺りが各師団長の執務室だそうだ。

「王子達の執務室と王宮の入口のちょうど間に師団長の執務室があります。手前から第1、第2、そして私の執務室です。一応最奥が魔法師団長の執務室ですが、彼は普段別棟にいるので転移陣があるくらいですかね」

ヴァレン様は苦笑しながら言った。

「第2師団は剣術を得意とする者で構成されています。城下と、主要都市の警護の為普段は城内にいません。師団長は皆転移が出来る魔力を保持していることが必須なので火急の場合は転移魔法を使って戻ってきます」

執務室を後にし、王宮の入口に向かって歩き出す。

「そういえばちゃんとご説明してなかったですね。私は第3師団長でヴァレンティノが正式名称です。隠すつもりは無かったのですが、なかなかお話するタイミングが掴めず申し訳ありません」

「いえ、話し方や所作から高貴な方だとは思っていました。謁見の際に初めて師団長様だと分かって、恐れ多いなとは思ってました」

私がそういうと、ヴァレン様は困り顔でこちらを見る。相変わらずキラキラオーラが眩しい。

「マイ様のように謙虚な方に最初から肩書きを伝えてしまうと今のように距離を置かれてしまいますからね。出来れば言いたくはなかったのですが」

「でも、言われないで普通に接していても、恐らく周囲の方は良しとしないですよね?」

「、、、そうですね、マイ様の仰る通りです。
話が逸れてしまいましたが、私達は魔法師団になれるほどの魔力はありませんがある程度強い魔力を保持しています。その為剣術と魔法を組み合わせた戦術を得意とする師団です。主に第2師団と似た職務ですが国境警備や魔物の討伐が主となります」

異世界と言えばやっぱり魔物。

「魔物を相手にされているんですか、、、。危険な任務ですね」

魔物の怖さは実際に見ていないから分からないが、本の知識では凶悪で恐ろしい力を持っているものが多かった気がする。

「マイ様が想像されているような大型はほとんど出てきません。たまに背丈くらいの中型が現れるくらいで、基本的には小型ですよ。それに国境付近の警護といっても戦は早々にありませんし、賊などの討伐がほとんどです」

また私は顔に出ていたのか、ヴァレン様に苦笑されてしまった。

気がつけば、初日に入ってきた王宮の入口。
今日は入口の両脇に兵士が立っていた。

あの日興奮して気づかなかったが、入口の壁は汚れのない真っ白な壁。
左右対称の大きな2本の柱の先に、正面から左右に別れる大きな階段。

あの湖からこのお城を見たときと同じような感動を覚えた。

「来賓は通常この階段を登って、先程の謁見の間に行きます。今は別の道を通ってここに来ましたが、この城に来る方は大概道に迷うので必ず入口に案内人が控えています」

ヴァレン様の視線の先には、壁際に数人の侍女が控えていた。いつ来るかも分からない客をずっと待つのは辛いだろうな。

「ご安心ください。基本的に何の連絡もなくこの城へ来ようとするものならば、城の手前にある扉でまず引き留められます。今侍女が控えているということは、元々城へ来る用事があった方が来るということですよ」

またもヴァレン様に先回りされてしまった。

本当にいつからこんなに顔に出てたんだろう?

「まだ国内の貴族にもマイ様のお披露目をしてない以上、今遭遇してはまずいので魔法師団長の所まで転移します。お手をかりてもいいですか?」

ヴァレン様はそういうと私の手を握り、呪文の様なものを唱える。
すると、一瞬にして王宮から本が山高く積まれた薄暗い場所にいた。

「マイ様、お加減はいかがですか?ここが魔法師団の棟の入口。といっても転移陣があるだけなのですが」

「体調は問題ないです。ただ、棟の入口にしては本の山が尋常ではない気がしますが、、、」

「魔法師団は戦闘に参加もしますが、普段は魔法の研究がメインになります。古代魔法や、詠唱不要の魔法の研究をしていますよ」

ヴァレン様に手をとられ、本の山をなんとか越えていくと三方向に扉があった。
そしてそのうち正面の扉が勢いよく開かれると、中から目をキラキラさせたナハト様が出てきた。

「マイ様!やっとお会いすることができました!ヴェルサス様とヴァレンに何回言っても面会させてくれなくて、、、来てくださって本当に良かった~」

涙目のナハト様は私の両手を掴むと、上下にブンブンと振り回す。

「ナハト、マイ様に軽々しく触れるな」

「いいじゃないか!今のでマイ様の魔力が凄い高いのと、どの魔法にも適性があることが分かったんだぞ!」

冷たくいい放つヴァレン様に対して、子犬のように目をキラキラさせているナハト様。恐らく二人の相性は悪いんだろう。

「そういえば、昨日ヴェルサス様から私が魔力相互交換出来る人だと言われました」

「既に実践済でしたか!!あぁ、なんでその場にいなかったのか、、、」

「マイ様、もうここはいいでしょう。あまり長居する場でもありません」

項垂れるナハト様を軽く睨んだヴァレン様は強引に私の手を引くと、先程の転移陣へ歩き出す。

「マイ様!魔法を覚えたい時は是非私を指名して下さいね!それから、、、」



ナハト様の言葉が途中で途切れた。
なぜかというと、私の部屋に戻ってきたからだ。

「マイ様お疲れ様でした。ナハトには掃除をしておくよう伝えておきますので、まずは体についた汚れを落とされてはいかはがでしょうか?」

ヴァレン様はいつものニッコリ顔だったが、なんとなく殺気が含まれているような気がする。

「マイ様お帰りなさいませ。ヴァレンティノ様湯あみの準備は出来ていますが、そんなに汚れる場所へ行かれたのですか?」

ミーチェさんは不思議そうに首をかしげる。

「えぇ、魔法師団の棟に行きましたので。あ、手は特に綺麗にして差し上げてください」

「?よくわかりませんが、ヴァレンティノ様が仰るのですから余程のことでしょう。さ、マイ様綺麗にして差し上げますね」

「ではマイ様、また参りますね」

今度のニッコリには殺気は含まれていなかった。

手はナハトさんと握った後に、ヴァレン様と転移の際にもう一度触れてるんだけどな。

ヴァレン様も手が汚れてるんじゃないかと心の底から心配になった。

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