彼氏に振られたら、異世界にいました

香月

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2章

嵐の前の静けさ

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それは突然のことだった。



朝は侍女さんのお手伝い。

昼食後はヴェルサス様、ヴァレン様の勉強会。

ここに来てから2週間が経って、だいぶこの世界のことについて知識がついた時だった。

今日の講師であるヴェルサス様から、来週他国も交えて私のお披露目を兼ねた夜会をすることになったと告げられた。


「本来はマール国の貴族のみでやる予定だったが、どこで情報が漏れたのか他国より、落ち人がいるのであれば公表しろと言ってきた。確かに感付かれるのも時間の問題であったが、ここまで早いと間者がいるとしか思えなくてな」

ヴェルサス様は眉間に皺を寄せながら、ミーチェさんが入れた紅茶を飲んだ。

「間者、、、この国でもスパイみたいなのがいるんですね?」

「スパイというのは間者のことか?我が国の指針が平和を主としているだけで、他国がそうとは限らない。少なくとも間者を忍ばすくらいはどこの国でもやるだろうな」

ヴェルサス様は何とも言えない顔をする。
そして、私はヴィーノ様が仰ってたあの言葉を思い出して苦笑した。

「マイ?」

「いえ、なんでもないです。夜会までに何か覚えることはありますか?」

「そうだな、、、。この国の3大公爵家については最低限覚えておいてほしい」

ヴェルサス様から公爵家についてのお話を聞き、夜会のドレスや装飾品はヴェルサス様の方で用意してくださるとのことだった。

「あと、1つ相談なのだが、、、髪色を元の色に戻しても問題ないか?」

「それは構いませんが何か理由があるんですか?」

「以前初代落ち人がこの国を作ったと伝えたが、実は初代は黒髪持ちだった。その為この世界では黒髪持ちに尊敬と畏怖の念を抱き、決して危害は加えない。だから当日マイを守るためにも黒髪でいてほしい」

ヴェルサス様の予想外の言葉に私は胸が高鳴るのを感じた。

初代落ち人が黒髪。

勿論日本人でない可能性があるが、滅多にこの黒髪は居ない筈だ。城内でもヴェルサス様だけだし。

じゃあ、ヴェルサス様は? 

そんな視線を向けるとヴェルサス様は素直に答えてくれた。

「俺は恐らく先祖返りしたか、魔力の保有量が高いから黒髪なんだと思う。今この世界で黒髪を持つのは俺とマイだけだな」

「そうなんですね、、、。私は黒髪だろうが茶髪だろうが気にしないのでお任せします」


私はそう言って自然と笑顔が出た。





だって、髪の毛を初めて染めたのは就職前。

翔に就職が決まったからあまり来られないと次げたあの日。

翔から離れる時間が増えるから、少しでもインパクトを残そうと思ってイメチェンを兼ねて髪を明るめの茶色に変えてから家に行ったのに。

彼は全く気づかなかった。

勿論、私が就職する、ということに驚いていたので目に入らなかったのかもしれない。

それから入社前まではずっと通っていたのに、彼は一言も髪については触れなかった。

似合ってるとか

似合ってないとか

髪染めたの?とか

言ってほしかったのに。



考えてみれば、翔はちっとも私のことを見てなかったと改めて気づかされる。

この世界に来てから感じる翔との距離。

翔を考えるのは今日で終わりにしよう。


私が今生きてるのはもう、この世界なんだ。

夢で元の世界を見ることがあっても、起きればミーチェさんやヴェルサス様、ヴァレン様がいるこの世界。

失恋したら、人はよく髪の毛を切ってイメチェンするらしい。
だったら私は髪色を元に戻して、この世界の落ち人として新たに生活していこう。


そう思ったら自然と笑顔がでていた。
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