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2章
嵐の中の
しおりを挟む誰かに手を引かれて少し歩いたと思ったら、体がふわりと浮かんだ。
以前ヴァレン様と魔法師団の棟に行ったときと同じ感覚。
でも一体誰?
「もう目が慣れるはずだ」
ふと声が聞こえたので恐る恐る目を開くと、辺りは暗闇。けれど、湖の反対側にあるお城の光が暗さを感じさせなかった。
私はマール城の外に居るようだ。
そして声の方向を見て、私は息を呑む。
「あなたは、、、、、リヒャル様?」
さらさらの腰近くまである長い銀髪は、こんな暗闇にも関わらず光輝いている。
先程初めてお会いしたのになぜ、、、
「何が目的ですか?」
私は困惑しつつも、リヒャル様を真っ直ぐ見る。嫌な予感が当たらなければいいけど。
リヒャル様はそんな私を見て楽しそうにくつくつと笑った。
「それは貴女ならすぐに分かるであろう?」
まだ握られている手がほんのり熱くなると、また体がふわりと浮いた。
まばたきの間についたのはどこかの部屋の中だった。
マール城とは違う装飾。
豪華な装飾がついたソファーとテーブル。
執務机と思われるものは簡素だが、周りの調度品はすぐに高いものだとわかる。
「ここは、、、?」
「私の私室だ」
リヒャル様は着ていた白い軍服の上着をソファーにぞんざいに投げ、結んでいたネクタイを緩める。
こんな時にこんなことを思う自分もどうかと思うが、リヒャル様もイケメンだからサラリーマンみたいなその仕草でも至極カッコいい!
リヒャル様はそのまま執務机の椅子にドカっと座り長い足を組む。
「まあ、そこに座れ」
促されて、とりあえず上着が掛かっていないソファーに座ることにした。
リヒャル様の態度を見る限り今のところ酷いことにはならないはず。
それに逃げようにも私室と言っていたし、きっと結界的なものも張り巡らされていると思う。
今は下手に逃げるのではなく、リヒャル様の目的を聞こうではないか。
「やはり聡明な女のようだな。ラーナと違って落ち着いて話ができるようで助かる」
リヒャル様は相変わらず楽しそうに笑うと、突然すっと目を細めた。
「さて、結論から言おう。貴女にはマールではなく我が国に居てもらいたい」
「それは落ち人として教育が終わってからでは駄目なんですか?」
「貴女は自分の価値が解ってないようだ。黒髪の落ち人は初代以降いないと言う話は聞いたか?只でさえ落ち人は価値が高いのに、魔力も高い黒髪ときた。各国が喉から手が出るほど欲しい逸材だ。
それに前回のラーナだ。こちらも公爵の件で仕方なく要望を出し、少しでも落ち人の力があればと思ったが、ただの金食い虫に過ぎなかった。あれはヴァレンティノさえいればいいようだし、俺はラーナより貴女が欲しい。」
リヒャル様の真っ直ぐな視線に、ぞわぞわと体が縛られるような気分になる。
「黒髪の落ち人は力があると伺ってますが、私は魔法も使えませんし、この世界の事もまだ分からないことばかりですよ?」
「ふっ」
リヒャル様はまた楽しげに笑うと、椅子から立ち上がり私の前に立つ。
「言葉のままだ。国としては黒髪の落ち人が欲しいが、何のしがらみもなく、貴女が欲しい。私の側に居てほしいそれだけだ」
「なっ」
あまりのストレートな告白に私はつい顔が真っ赤になってしまう。
「でっ、でも、、」
「受け入れられないか。まぁ、貴女の性格を考えるとそれも無理はないか」
リヒャル様は私の隣に座ると、また真っ直ぐ私を見つめる。
「急いで結論を出すことはない。今回のラーナの件は予想外だったが、お陰で貴女がしばらくこの国にいられる大義名分を得た。貴女は何も気にせずこの国にいればいい」
「えぇ!?ちょっと意味が、、、」
「困惑している貴方も可愛いな」
あれ、リヒャル様との距離が気がつくと近くなってるぞ?
あれ、いつのまにか腰に手がまわってる、、、
リヒャル様はうっとりとした目で私をみると、ヒヤリとしたした手で私の頬に触れた。
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