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第一章
24話 皇帝への進言に向けて
しおりを挟む私は明日の進言に向けて、話す内容を箇条書きにしてまとめ、それを基にプレゼン用の資料を作成していた。
だが――
(やっぱり根拠が薄いですわ……!)
勉強の詰め込みすぎが良くないというのは、なんとなく分かるけれど、ただの個人的な意見では説得力に欠ける。陛下を納得させるためには、具体的な事例や証拠が必要だ。
そこで、私は屋敷の使用人たちに少し時間をもらい、過去に似たような例がないか話を聞くことにした。
過去の悲劇————————-
「――そんなことが、本当にあったのですか?」
話をしてくれたのは、昔学園に通っていたという使用人だった。
「ええ、私もその頃、学園に通っていましたので……」
彼が語ったのは、ある少年の悲しい物語だった。
――昔、彼は親から厳しく抑制され、失敗は許されないものだと教え込まれて育った。笑うこともなく、ただ勉強だけに励む日々。
そして学園に入り、彼は二年目にして初めて一位の座を逃した。
二位――それでも十分に素晴らしい成績だった。
だが、彼の両親はそれを許さなかった。
「なぜ一位でないのか。お前には勉強しかないのに、それすらできないとは何事か」
少年は、努力を続ければいつか両親に褒めてもらえると信じていた。
だが、その日は一度も訪れず、彼は絶望の末に命を絶った――。
「……そんな、ひどい。」
「その後、ご両親は教会に送られ、分家の方が家督を継いだと聞いています。」
「罰としては軽い気もしますが……。」
私は衝撃を受けながらも、感謝の気持ちを伝えた。
「貴重なお話を聞かせてくださって、ありがとうございます。」
(やるしかない……! 時間も資料も少ないけれど、今まで培ってきた知識を総動員して、納得のいくものを作り上げるしかない!)
「――かっ、完成しました……!」
ようやく作り終えた資料を前に、私はぐったりと机に突っ伏した。
「この体では、すごく疲れましたわ……もう寝ます……。」
「ですが、お嬢様。明日は陛下にお会いする日ですので――」
「明日、明日お風呂に入りますから、早めに起こしてください……。」
「かしこまりました、お嬢様。」
そして、私はベッドに倒れ込むようにして眠りについた。
――しかし、これが翌朝の地獄を招くことになるとは、このときの私は知る由もなかった。
「――っ!? ちょっと、まっ……!」
朝、私はいつもより四時間も早く叩き起こされ、問答無用でお風呂に入れられた。
「お嬢様、隅々までお綺麗にいたしましょうね♪」
「きゃっ!? ちょっ、あまり強く擦らないでくださいまし!」
容赦のないメイドたちの手により、私は徹底的に丸洗いされる。
(これ、お風呂に入らなかった罰ではなくて!? ただの拷問ではなくて!?)
髪を丁寧に洗われた後、香油を塗り込まれ、ドライヤーで乾かされる。
「はぁ……これで終わりです……?」
と思いきや――
「お嬢様、お体のケアも大切ですよ♪」
クリームを塗られながらマッサージを受ける羽目になった。
「……わ、私は本日戦いに赴くというのに、なぜエステのフルコースを受けねばならないのですか……。」
「お嬢様が最高の状態で陛下にお会いできるようにするためですわ!」
(あぁ……私はただ、ラインハルト様のために頑張ろうと思っていただけなのに……。)
少し離れたところでは、メイドたちが豪華なドレスを用意しているのが見えた。
(……どう考えても、あれを着せられる流れですわね。)
「さぁ、お嬢様、お着替えいたしましょう♪」
「……っ!」
満面の笑みを浮かべたメイドたちが、じりじりと私に迫ってくる。
(ひっ……! 逃げ道がない……!)
そして、あっという間にドレスに着替えさせられ――
「まぁ、大変可愛らしいですわ、お嬢様!」
「本当に! これでは、お城にいらっしゃる殿方の視線も釘付けになってしまいますわ!」
「……ありがとう。でも、そんなに褒められると恥ずかしいですわ。」
メイドたちが満足げに頷いたのを見届けた後、彼女たちはそれぞれの仕事に戻っていった。
身支度を整えた後、私は朝食前の短い時間を使ってマナーの最終確認をした。
(完璧とまではいかなくても、ある程度のレベルまでは仕上がったはず……!)
そして、ついに馬車へ乗り込む時間がやってきた。
久しぶりの馬車移動に少し緊張していると――
「ほら、クリスティア。こっちへ来い。」
「はい――わっ!?」
乗り込むや否や、お父さまの膝の上に乗せられてしまった。
「お、お父さま!? もう私はお膝に乗るような年齢では――」
「いいから乗っておけ。かわいい娘が目の前にいるのに、膝に乗せない親がいるか?」
(え、普通にいますわよ!?)
しかし、お父さまは頑として譲らず、そのまま私を膝に乗せたまま馬車が発進した。
(……せめて馬車の揺れで落ちないように、しっかり支えていただきたいですわ。)
こうして、私は城へ着く前からすでに疲労困憊になったのだった。
次回――ついに陛下との謁見へ! 果たしてクリスティアの進言は無事に届くのか!?
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