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初めての友達
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お祈りする時間はあっという間に過ぎ去り、陽が落ちる前に帰る事にした。
カノンには、いろいろと頼りっぱなしで感謝しかない。
教会の前までカノンと一緒に来て、少し前に出たところで足を止めた。
後ろを振り返ると、カノンが俺を見送るために立っていた。
どうしたらいいのか今は分からない、だけどカノンと知り合いになれて良かった。
カノンがいなかったら、きっと俺は諦めていたかもしれない。
あのプロフィールは脳内に焼き付いて、離れたりしない。
でもそれはきっとカノンと知り合いになっていない世界の俺だ。
今の俺とカノンではない、もしもの話でしかない。
カノンはずっと俺とまっすぐ向き合って話してくれた。
だから、俺も本当の気持ちを隠さずカノンと接したい。
それが、人の心に触れる攻略というものなんだと思う。
そういえば、カノンと自己紹介をしていない事を思い出した。
俺はミッシェルのプロフィールでカノンを知れたが、カノンはきっと俺の名を知らない。
おもちゃをいろんな人に見せる時に、自己紹介をして回った事はない。
周りの人達は、俺の家が有名な金持ちだから名前を知っているだけだ。
カノンもそうかもしれないが、自己紹介は始まりに必要だ。
「俺の名前、フォルテって言うんだ」
「私はカノン、この教会に住んでいる」
「また、教会に来てもいい?」
「祈りを捧げる者は誰だろうと拒んだりはしないよ」
カノンの言葉に、心からの笑みを向けた。
俺の笑みにつられるように、カノンの表情も柔らかくなる。
大きく手を振ってカノンと別れて、自分の家に向かった。
もう外には子供達はいなくて、酒場の灯りが街を照らしていた。
家に帰ると、当然のように母さんに頭の包帯の事を聞かれた。
周りにどう思われてるか、心配掛けるから母さんには言えない。
幸いな事に、母さんは専業主婦で外とはあまり交流がない。
祖父母も後ろめたい仕事をしているから、外と交流する事を嫌がっている。
父さんは仕事上、外に出るのは仕方ないから放置しているが、実の娘である母さんには厳しい。
俺も最初の頃は止められていたが、俺が嫌われていると分かった瞬間に自由にさせた。
とにかく、誰かと仲良くなって秘密を知られるのを恐れているんだろう。
俺がカノンと仲良くしていたら、絶対に妨害しそうで嫌だ。
今は別の国で仕事しているからバレる心配がないから良かった。
何をしているのかは、知りたくないし俺には関係ない。
母さんも、今なら自由に出来るのに幼少期からの言いつけをずっと守っている。
転んだら目の前に石があってぶつかったと嘘を付いた。
母さんには心配掛けたくない、この事は墓場まで持っていくつもりだ。
不安そうな母さんと執事に明るく振る舞って、大丈夫だとアピールした。
何も言わない俺に折れたのは二人の方だった。
心配する母さんに教会に通う事になったと伝えた。
何処に行くか分かれば心配する事もないだろう。
今まで神様を信じている素振りがなかったからか、驚いた顔をしていた。
でも、教会に通うと決めたのは本当だ…カノンを見ていると神様はいると信じさせてくれる。
夕飯と風呂を済ませて、部屋に戻った。
包帯は母さんがやってくれて、包帯に触れた。
母さんの話によると、傷口は小さいものみたいだ。
血が流れていたから死んだと思っていたから、このくらいで済んで良かった。
ベッドに座ってやる事もないから寝ようと思った。
脳内で自称神様が話しかけてきた。
『攻略するつもりが、攻略されてない?』
ミッシェルの言葉にハッと我に返った。
そんな、いつの間に攻略されたんだ?
俺はただカノンに感謝しているだけで、カノンに恋愛感情を抱いているわけではない。
友達として好きも攻略なら、さすが主人公を落とす攻略キャラクターだ。
でもそれのなにが問題なのか分からない。
攻略キャラクターと親しくなるなら、そっちの方がやりやすいのではないのか?
「別にいいんじゃないか?それで」
『君は忘れているみたいだけど、100人を攻略するんだよ…一人に夢中になってどうするの?平等に愛してあげないと』
そんな事を言われても、俺にどうしろって言うんだ?
確かに誰かを傷付けないためには、同じくらい愛する必要がある。
それに、俺が好きになっても片想いで終わるのは目に見えている。
攻略キャラクターは常に好かれ慣れているわけだしな。
俺だってそう簡単に男を好きになる筈もなく、先が見えず真っ暗だ。
それに俺が一番謝らなくてはいけない子があの場にいなかった。
何処にいるんだろう、俺に会いたくないだろうけど会わないと何も始まらないとカノンが教えてくれた。
あの時の誤解をちゃんと晴らさないといけない。
お祈りする時間はあっという間に過ぎ去り、陽が落ちる前に帰る事にした。
カノンには、いろいろと頼りっぱなしで感謝しかない。
教会の前までカノンと一緒に来て、少し前に出たところで足を止めた。
後ろを振り返ると、カノンが俺を見送るために立っていた。
どうしたらいいのか今は分からない、だけどカノンと知り合いになれて良かった。
カノンがいなかったら、きっと俺は諦めていたかもしれない。
あのプロフィールは脳内に焼き付いて、離れたりしない。
でもそれはきっとカノンと知り合いになっていない世界の俺だ。
今の俺とカノンではない、もしもの話でしかない。
カノンはずっと俺とまっすぐ向き合って話してくれた。
だから、俺も本当の気持ちを隠さずカノンと接したい。
それが、人の心に触れる攻略というものなんだと思う。
そういえば、カノンと自己紹介をしていない事を思い出した。
俺はミッシェルのプロフィールでカノンを知れたが、カノンはきっと俺の名を知らない。
おもちゃをいろんな人に見せる時に、自己紹介をして回った事はない。
周りの人達は、俺の家が有名な金持ちだから名前を知っているだけだ。
カノンもそうかもしれないが、自己紹介は始まりに必要だ。
「俺の名前、フォルテって言うんだ」
「私はカノン、この教会に住んでいる」
「また、教会に来てもいい?」
「祈りを捧げる者は誰だろうと拒んだりはしないよ」
カノンの言葉に、心からの笑みを向けた。
俺の笑みにつられるように、カノンの表情も柔らかくなる。
大きく手を振ってカノンと別れて、自分の家に向かった。
もう外には子供達はいなくて、酒場の灯りが街を照らしていた。
家に帰ると、当然のように母さんに頭の包帯の事を聞かれた。
周りにどう思われてるか、心配掛けるから母さんには言えない。
幸いな事に、母さんは専業主婦で外とはあまり交流がない。
祖父母も後ろめたい仕事をしているから、外と交流する事を嫌がっている。
父さんは仕事上、外に出るのは仕方ないから放置しているが、実の娘である母さんには厳しい。
俺も最初の頃は止められていたが、俺が嫌われていると分かった瞬間に自由にさせた。
とにかく、誰かと仲良くなって秘密を知られるのを恐れているんだろう。
俺がカノンと仲良くしていたら、絶対に妨害しそうで嫌だ。
今は別の国で仕事しているからバレる心配がないから良かった。
何をしているのかは、知りたくないし俺には関係ない。
母さんも、今なら自由に出来るのに幼少期からの言いつけをずっと守っている。
転んだら目の前に石があってぶつかったと嘘を付いた。
母さんには心配掛けたくない、この事は墓場まで持っていくつもりだ。
不安そうな母さんと執事に明るく振る舞って、大丈夫だとアピールした。
何も言わない俺に折れたのは二人の方だった。
心配する母さんに教会に通う事になったと伝えた。
何処に行くか分かれば心配する事もないだろう。
今まで神様を信じている素振りがなかったからか、驚いた顔をしていた。
でも、教会に通うと決めたのは本当だ…カノンを見ていると神様はいると信じさせてくれる。
夕飯と風呂を済ませて、部屋に戻った。
包帯は母さんがやってくれて、包帯に触れた。
母さんの話によると、傷口は小さいものみたいだ。
血が流れていたから死んだと思っていたから、このくらいで済んで良かった。
ベッドに座ってやる事もないから寝ようと思った。
脳内で自称神様が話しかけてきた。
『攻略するつもりが、攻略されてない?』
ミッシェルの言葉にハッと我に返った。
そんな、いつの間に攻略されたんだ?
俺はただカノンに感謝しているだけで、カノンに恋愛感情を抱いているわけではない。
友達として好きも攻略なら、さすが主人公を落とす攻略キャラクターだ。
でもそれのなにが問題なのか分からない。
攻略キャラクターと親しくなるなら、そっちの方がやりやすいのではないのか?
「別にいいんじゃないか?それで」
『君は忘れているみたいだけど、100人を攻略するんだよ…一人に夢中になってどうするの?平等に愛してあげないと』
そんな事を言われても、俺にどうしろって言うんだ?
確かに誰かを傷付けないためには、同じくらい愛する必要がある。
それに、俺が好きになっても片想いで終わるのは目に見えている。
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俺だってそう簡単に男を好きになる筈もなく、先が見えず真っ暗だ。
それに俺が一番謝らなくてはいけない子があの場にいなかった。
何処にいるんだろう、俺に会いたくないだろうけど会わないと何も始まらないとカノンが教えてくれた。
あの時の誤解をちゃんと晴らさないといけない。
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