一つ目の世界では龍になったので、二つ目の世界では育成ファンタジーを楽しみます。

たゆ

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アーガルクルム

14 転生

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 どんな生き物からの転生者だとしても、この世界にやって来た協力者である限り、共通語は喋れなくとも理解できるという決まりルールがある。水から顔を覗かせて警戒したままの半魚人たちを見た。

「すみません。ミマス王女より、あなた方を見つけて保護してほしいと依頼を受けて来ました。僕の言葉は分かりますか」
「はい……分かります」

 ん?彼が話した内容が分かったぞ。異種族友好体質ハジメノイッポも成長したりするんだろうか、仲間と認識していない相手の言葉は分からないはずなんだけど、そんな僕の疑問に答えてくれたのは初代千龍皇帝様こと初代様だった。

(コガネ、あやつが使っておるのはコガネと同じ共通語だぞ)

 なんだって!魚からの転生者は、蟻や犬……他の生物からの転生者よりも言語面において優遇されているのか。

「魚から転生したのに、君たち共通語が話せるの?」
「あーこんな姿のまますみません。今はこんな成りすけど全部技能スキルのせいなんです。俺らの前世は人間ですよ」

 岸に上がって来た半魚人の姿が変化する。鱗は無くなり徐々に人の姿に変わる。後ろの三人も半魚人から人の姿へと変化した。黒髪と黒い虹彩、四人の姿は、僕には馴染み深い姿だ。そう日本人である。
 咄嗟に言葉が出てしまった。

「もしかして、日本人なの?」

 と……。

「え――――――、あんたも日本から来たんすか」
「おい、ヨシオ落ち着け」

 ヨシオと呼ばれた男は、泉から上がって僕に詰め寄るが、目の前でフランソワに取り押えられてしまった。

「落ち着いてください。まずは夕飯にしましょう」

 四人に、落ち着いて先に食事にしませんかと提案する。〝ヨイショっ〟ヨークシャーテリア顔のエメリック=ラポルは背負い袋を降ろし、中身を四人に見せた。大量の黒パンである。
 黒パンは名前通り黒い色をした日持ちのするパンで、物凄く硬くこうして袋に詰め込んでもつぶれることのないダンジョン攻略の際に持ち込む保存食の定番だ。
 余程腹を空かせていたのだろう、四人は競うように黒パンに手を伸ばした。

「ストップ!そのまま食べたら硬くて歯が欠けちゃうよ、いまお湯を沸かすからもう少し待っててね」

 僕の言葉に四人は手を止める。ダンジョン攻略の慣れていない四人は黒パンを食べるのもはじめてなんだろう。黒パンはシチューやスープに浸して柔らかくして食べるのが定番だ。湯を沸かし、そこに蜂蜜を溶かしたものを配る。

「蜂蜜茶です。黒パンは硬いので浸して柔らかくしてから食べてください」
「ありがとうございます……でも火を使ったりして狼が来ませんか」

 四人の中で一番背の低い少女が言った。少女の名はヨシノ=カオリ。おかっぱ頭のこけしのような女の子だ。

「大丈夫ですよ。『はるかぜ』ダンジョンの魔物は、格上の相手を襲わない性質があるんです」
「みなさんって、そんなに強いんですか」
「単にレベルが高いだけです。僕はみなさんより早くダンジョンに潜りましたから」
「レベルが高いって十分凄いことだと思うよ、こういうファンタジーな世界は技能スキルとレベルありきだろうし、あなた方の強さを見込んでお願いしたいことがあるんです。友達を助けてもらえませんか、俺達にはもう一人仲間がいるんです。一人狼を引き付けて逃げている仲間が」

 四人の中ではリーダー的な立ち位置にいるのか、整った顔立ちをした少年が立ち上がる。生前はさぞモテたことだろう、少年の名はワタナベ=ナオト。ちなみに、フランソワに最初に取り押さえられた軽い感じの少年はキムラ=ヨシオという名前だそうだ。
 一人囮になった少年の名はタグチ=シンジ。初代様がすでに死亡を確認済みなので間違うはずもなく、もう死んでいる。どう彼らにそのことを伝えるべきか僕は迷った。少し前の僕なら躊躇することなく、囮になった少年タグチがすでに死んでいると伝えただろう。彼はもう狼の胃袋の中だと……追い打ちをかけていたかもしれない。フランソワたちとの何気ない日々が僕の心に変化を与えた。だからといって真実を伝えずに希望を持たせるのも、違うような気もする。
 彼らが食事を終えるタイミングで切り出した。〝キミたちを助けるために囮となった友人を探すのは難しい〟と、それでも彼らは〝友達なんです。お願いします〟と今度は四人揃って頭を下げた。

(コガネよ、真実を伝えるのも優しさだと思うぞ)
「でも、どう伝えればいいのか分からなくて……友人が死んでいると話して彼らは信じるでしょうか」
(それならば、これだけ広いダンジョンの中からこ奴らを見つけたのだ。コガネは生者なら見つけることができるが死者は見つけられんと伝えればいいのではないか?こ奴らならそれで理解すると思うぞ)
「ありがとうございます。そう伝えてみます」

 僕の言葉を緊張した面持ちで待つ四人。僕は初代様のアドバイス通りに伝えた〝ごめん、僕が見つけることができるのは生者だけなんだ。君たちを探しているときに近くに生者の気配は感じられなかった。力になれなくてごめん〟と、一緒にアーガルクルムという異世界にやってきた仲のいい五人組。四人は自分たちを逃がすために犠牲になった友人を想い、むせび泣いた。
 フランソワたち五人は、言葉が届かないながらも四人を慰める。

 九人は、最初の一人が倒れるように眠ると、魔法にかかったかのように……次から次へと倒れるように眠りに落ちた。魔物が蠢くダンジョンの中、ずっと気を張っていたのだろう。フランソワたちも人を勇気づけて慰めるという、初めての経験に疲れたのか眠ってしまった。こうして他人ひとが疲れて眠るのを見ると、自分がどんな存在であるのかを改めて考える。
 人のように眠ってみたいと願えば、好きな時に好きなだけ眠ることもできる。逆に眠らなくてもいいと思えば、睡眠は不要になる。人の形をした龍であると考えれば至極当然のことなのかもしれないが、こういう時に少しだけ寂しいという気持ちにもなる。火を消して近くの木に寄りかかる……ダンジョンにある森の中は完全な暗闇だ。
 月も星も光一つないダンジョンの中、夜動くのはほんのわずかな生き物だけ、もちろんここまで暗いと狼たちですら活動をしない。ダンジョンの奥地に行けば完璧な暗視能力パーフェクトナイトスコープを持った魔物がいるのかもしれない。だとしても、アーガルクルムに来たばかりの協力者転生者がたったの二ヶ月でそれに会うのは無茶というものだ。初代様の話では『はるかぜ』ダンジョンは広く、僕が見たのはその一部にしか過ぎないって話だし、このダンジョンには初心者用以外にも使い道があるのかもしれない。

 日の出の時間なのだろう、ダンジョンも徐々に明るくなる。僕は朝食の準備をはじめた。朝食といっても夕食とそう変わらない。パンを浸すのが蜂蜜茶から干し肉から出汁をとって塩コショウで味を調えた山菜スープに変わったくらいだ。癖のある獣肉の臭みを取るのに多めに入れた香草ハーブが苦手なのか、キムラ=ヨシオは苦い顔をしたまま浸したパンを口の中に放り込んだ。
 四人は改めて僕ら六人にお礼を言った。昨日フランソワたちが彼らを慰めようとがんばった成果が出たのだろう、フランソワとリュカの蟻の顔を見て気味悪がっていた女子、トモサカ=カエデとヨシノ=カオリからは、フランソワたちに対する苦手意識が消えていた。
 フランソワとリュカの二人が同じ女性だと伝えたのも良かったのかもしれない。
 ワタナベ=ナオトとキムラ=ヨシオの二人も、小型犬種の顔をしたフィグたち三人と仲良くなっていた。こちらも男同士通じるものがあったのかもしれない。

 僕だけ一人浮いている感じもするが、その辺りは深く考えないようにしよう。
 ナオトたちが元日本人というのも、蟻と犬の顔をした五人を早々に受け入れられた理由なのかな。日本にはなんでも人の形にする擬人化文化と様々な生き物の顔をしたキャラクターが登場する物語も多い、他の世界からの転生者よりもこういったことへの抵抗が少ないのだろう。
 例え彼らが僕の知る日本とは別の、並行世界パラレルワールドから来た存在だとしてもこういう部分はあまり違いがないのだろうな。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

長坂
2021.07.31 長坂

お気に入り登録させて頂きました!応援しています(*´˘`*)♡
箱庭世界に招待できる展開は大好きなので、更新楽しみにしています!

2021.08.01 たゆ

ありがとうございます。書きはじめたばかりでまだまだこれからですが、頑張ります。

解除

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