落ちこぼれぼっちテイマーは諦めません

たゆ

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1巻

1-2

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 キンギョソウさんには、従魔にならないと従魔の住処に入れないと勢いで言ってしまったけど、そういえば植物は普通に持ち込めるんだよね、忘れてたよ……従魔になってほしくてだましたわけじゃないってことは、強く言いたい。
 僕は約束通りキンギョソウさんたちを全て掘り起こして、従魔の住処に運ぶ。早速移植すると、殺風景さっぷうけいだった部屋の印象が赤い花のおかげでだいぶ変わった気がする。
 やっと僕にも一匹目の従魔ができたよ。
 でも、キンギョソウさんじゃゴブリンには勝てないよな……花だし。まあ、とりあえず喜ぼう。真っ赤な花は綺麗だしいやされるからね。
 気分が良くなった僕は、魔物探しを続けようと従魔の住処を出ることにした。しかし、その時、従魔にしたキンギョソウさんが話しかけてきた。

(お待ちください主様あるじさま。私もご一緒いたします)

 キンギョソウがどうやってご一緒するのだろうと、興味津々きょうみしんしんで見つめていると――
 キンギョソウの前に突然、身長六十センチくらいの、真っ赤な全身鎧ぜんしんよろいを着た小さな騎士きしのおじいさんが現れた。

(私はキンギョソウの妖精ようせいです。名前はまだないため名乗れませんが、契約通り主様に一生おつかえいたします)

 おお、〝何かが宿っているキンギョソウ〟と鑑定で出ていたけど、妖精が宿っていたのか。初めての従魔が妖精とは幸先さいさきが良すぎだろう。よくわかんないけど、なんかテンションが上がる。
 キンギョソウの妖精から、名前のリクエストがあったため、僕は彼に〝フローラルシャワー〟と名付けた。理由はなんとなくだけど、とても合ってる気がする。
 僕の中で花の妖精といえば、ピクシーという羽根のついた女性のイメージが強かったので、そのあたりについて聞いてみた。
 彼が言うには、ピクシーは植物系の妖精らしく、植物の種類によりその見た目も性質も変わるらしい。犬や猫にも様々な種類がいるようなものだそうだ。
 それは他の魔物にも共通するみたいで、英雄と呼ばれるほどの力を持ったゴブリンがいてもおかしくないとのこと。人間はゴブリンを弱い魔物とあなどるがそれは危険なのだと、フローラルシャワーは教えてくれた。
 この妖精、随分と物知りみたいで、僕は感心していた。

(主様は従魔を探しているのでしたな。この従魔の住処の土と水は、我ら植物に宿る妖精にとって御馳走ごちそう。探すならばピクシーか、虫の妖精であるスプリガンが良いでしょう)

 フローラルシャワーとの契約で、僕の妖精との従魔契約の成功率は二割増しになっているのだという。また、キンギョソウの妖精は火の精霊せいれいやドラゴンとの結びつきが強いので、そういった魔物との契約にもプラスに働くのだそうだ。
 ドラゴンという名が出たけど、ドラゴンとは力の差がありすぎて、まったく従魔にできる気はしない。そもそもドラゴンは数が少なく、冒険者をしていても一生に一度会えるかどうかも怪しい魔物なのだ。
 ちなみに全ての植物に妖精が宿っているわけではなく、フローラルシャワーのようにきちんとした形を持つ妖精を宿したものはごくまれらしい。
 それでも、土地自体が強い魔力を持つアリツィオ大樹海なら、そういう植物が他にもいるかもしれないという――
 僕はそれにけてみることにした。


     ✿ 


 初めて従魔契約が成功してから数日――
 僕とフローラルシャワーは引き続き、樹海の浅瀬あさせで新たに従魔になってくれそうな妖精を探していた。
 アリツィオ大樹海は、〝世界せかいて〟と呼ばれる山脈地帯に近い方から、深域しんいき中域ちゅういき・浅瀬に分かれ、各地域の間には魔力のみぞみたいなものがある。アリツィオ大樹海の中でも、人の手が加わった平地との境目周辺は〝浅瀬〟と呼ばれ、僕らGランクの冒険者でも探索を許されているエリアだ。
 僕が探索しているのは浅瀬で、その中でも外から一キロ以内のとりわけ安全な、〝樹海の入口〟と呼ばれる場所だ。
 ここならいきなり強敵に出会う心配はないからね。
 僕たちは、たまに遭遇する牙ウサギや角ネズミを狩りながら、茂みの中に入って妖精が宿っていそうな植物を探していく。
 牙ウサギは、骨と内臓以外の肉や毛皮などを買い取ってもらえるため、倒してすぐに解体する。僕みたいな低ランクの冒険者にとって牙ウサギは重要な収入源なのだ。
 誰でも倒せる牙ウサギの素材がなぜ収入源になるのか――その理由は、冒険者の多くが中域の入口にある〝南のキャンプ地〟にこもっていることにある。彼らは、雑魚ざこモンスターの素材の売買のためにいちいち町に戻らないので、そうした素材には意外と需要があるのだ。
 そんなわけで、僕のように定期的に町に顔を出し、新鮮な牙ウサギの肉や素材、薬草をおろす冒険者は、なかなかありがたい存在らしい。
 その一方で、角ネズミの素材は売り物にならない。あまりお金にならない角ネズミたちとは、できれば会いたくないというのが僕の本音だ。
 そう考えたりしながら探索していると、どこからかけもの同士が争う音が聞こえてきた。
 一つは聞き慣れた角ネズミたちの威嚇いかくの声。もう一つはおおかみっぽいうなごえだ。
 魔物や動物は基本的に人より耳や鼻がいいため、こちらに気付いているかもしれない。
 僕は念のため、人の匂いを隠す香草こうそうの粉を体に振りかけてから、魔物たちの声が聞こえてきた方へゆっくりと近づく。
 魔物たちまで残り四、五メートルといったところで木の陰に隠れ、音を立てないように覗き込む。木の枝が邪魔じゃまではっきり見えないけど、角ネズミが七から八匹と、それらに囲まれた犬型の獣が二匹いるのがわかった。
 その犬型の獣は狼と違い、耳は白く、顔はややきつね寄りだった。一匹は角ネズミよりやや大きい七十から八十センチくらい。もう一匹は二メートル近くあるだろうか。
 フローラルシャワーが僕に尋ねてくる。

(主様、あれは狼でしょうか?)
「いや、たぶんシロミミコヨーテかな。アリツィオ大樹海にはいない獣だから、えさを求めてここまで来たのかもしれないね」

 フローラルシャワーは魔物には詳しいけど、動物にはうといようだ。
 それはさておき、よく見ると二匹のすぐ側で、シロミミコヨーテ三匹が倒れているのがわかった。
 角ネズミは倒した魔物を細かくして巣に持ち帰る習性がある。おそらく残り二匹を先に仕留めてから、まとめて持ち帰ろうという算段なのだろう。
 僕は弓に矢をつがえ、角ネズミを狙う。
 フローラルシャワーが不思議そうに僕を見た。

(主様、あの狼のような獣を助けるのですか?)
「助けるというか――シロミミコヨーテが昔の自分と重なってしまったんだ。僕がこの町に来てすぐの頃、薬草採取中にあのネズミに殺されかけてね。あの角がももに刺さった時は、地面を転がりながら泣き叫んだよ」

 僕は弱い。それでもあの出来事以来、自分の身を守るために弓の練習だけはたくさんしてきたんだ――
 この距離なら外さない。
 そう思って放った矢は、一匹の角ネズミの体を正確に射貫いぬいた。
 直前にフローラルシャワーが僕にかけてくれた『妖精ようせい息吹いぶき』も功を奏したみたいだ。『妖精の息吹』は、対象の興奮状態を少しだけ高める魔法だ。これにより、いつもより自信が持てたのだろう。
 残りの角ネズミが、倒れた仲間の死体にかじりついている。
 これだから角ネズミは……
 やれやれと思いながら、僕はあらかじめ地面に刺しておいた矢を抜き、二射目を放つ。二匹目の角ネズミが矢を受けて倒れたところに、フローラルシャワーがダガーを持って飛び込んだ。僕も武器を弓から少し長めのナイフに持ち替えて近づく。
 ちなみにこのナイフは、カスターニャの町に来た際に兵士たちに貰ったものだ。ダガーとナイフの違いは僕にはよくわからないけど、フローラルシャワーが使っているものは、普通のナイフよりも刀身が少し厚くて頑丈がんじょうそうである。
 そのフローラルシャワーの奮闘ふんとうで、僕が追いつく頃には角ネズミは残り二匹まで減っていた。フローラルシャワーは見た目は小さなおじいさんだが、なかなか強いな。
 まあ、自分より大きなドラゴンや巨人を倒す人間だっているのだから、必ずしも強さと体の大きさが比例するわけじゃないか。僕とフローラルシャワーが木剣ぼっけんで模擬戦をやったら、絶対僕が負けると思うし。
 その後、あっという間に、二人で全ての角ネズミを片付けた。
 僕はその場を動けずにいるらしい二匹のシロミミコヨーテに話しかける。

「大丈夫?」

 動物なので、もちろん言葉は通じない。
 二匹のシロミミコヨーテは僕らを怖がっているのか、全く動こうとしなかった。
 ふと、近くに倒れていた三匹のシロミミコヨーテを確認すると、もう息絶えていた。
 少しして僕たちが攻撃してこないとわかったみたいで、シロミミコヨーテは警戒をいた。二匹は悲しそうな声を出しながら死んだ三匹の死体にり寄る。角ネズミにつけられたのだろう、二匹の体には傷が目立つ。僕は二匹の傷口を洗い、血止めの効果があるクロヒバという植物を乾燥かんそうさせて粉末状にした物を水で溶き、塗ってあげた。
 傷にしみるはずなのに、二匹は一切嫌がる素振そぶりを見せない。我慢強い、賢い子たちだと思う。
 二匹はだいぶせているように見えたので、僕は角ネズミの死体を解体し、その肉を二匹の前に置いてみた。〝これ食べていいの?〟とばかりにこちらを見上げるので、僕は頷く。すると、よほど空腹だったのか、夢中で目の前の肉を食べはじめた。
 しばらく食べておらず弱っているところを、角ネズミに襲われたとかかな。シロミミコヨーテにはゴブリンを相手取るくらいの力はあるはずだし。

「血が止まるまで傷をめないようにね」

 言葉は通じないとわかっていても、思わず話しかけてしまう。
 その後、穴を掘って息絶えていた三匹のシロミミコヨーテを埋葬まいそうした。


「さて、少しだけ寄り道しちゃったけど、また妖精の宿った植物を探すとしますか」

 休憩を終えた僕は腰を上げる。
 僕たちが歩きはじめると、助けた二匹のシロミミコヨーテが、僕たちの後ろをてくてくとついて来る。フローラルシャワーがそちらを見ながら僕に言った。

(主様、あの二匹は私たちと一緒に来たいのではないのですかな)

 僕は腕を組んで首をひねる。

「そうなのかな? でも動物って飼ったことがないんだよね。一人で生きるだけでいっぱいいっぱいだったし、ちゃんとお世話できるかな」
(なんとかなると思いますぞ。動物を従魔にするテイマーもいるのですし)
「そうだよね。狼なんかは賢いから、従魔にして家畜かちくの世話に役立てているって話はよく聞くし」
(ならば、あの二匹を従魔にしてもいいのでは?)
「うーん、確かにずっと後をついて来られても困るし、そうしようかな……仲間は多い方が楽しいし」

 僕は二匹のシロミミコヨーテに顔を向けると、声をかけた。

「一緒に来たいのなら、おいで」

 僕の言葉がわかったのか、二匹は勢いよく走り寄ってきた。そして、いきなり寝転がって腹を見せてくる。
 なんだこの奇妙な行動は……もしや、森の中で生きていけないからひと思いに腹を刺してくれってことか?
 僕の考えを読み取ったかのように、フローラルシャワーが教えてくれる。

(主様、獣が腹を見せるのは〝殺してくれ〟ではなく、自らの弱点を見せて服従を表しているのですぞ)
「そうなの? 初対面の人間に弱点を晒すなんて、獣の気持ちはわからないなあ。でもそれなら、さっさと契約して従魔の住処に戻ろうか。日も落ちはじめてるし」
(そうですな。今日も結構歩きましたし)

 フローラルシャワーの時と同じように右手をかざすと、光の鎖が二匹のシロミミコヨーテと繋がり、従魔契約の成立を示す淡い光が僕たちを包み込んだ。
 ちなみに従魔契約には二種類ある。
 自分より弱い相手を力で押さえつけ従わせる方法と、お互いが共にありたいと望んで仲間になる方法だ。
 その二つは光の鎖の現れ方が違っていて、前者は相手を拘束こうそくするように光の鎖が巻きつく。後者は、テイマーから出た光の鎖が、お互いを結ぶように綺麗に繋がるのだ。
 フローラルシャワーの時も今回も後者で、お互い望んだ形での従魔契約だった。

「君たちは今日から僕の家族になるんだ。よろしくね」
「「ガウ、ガウ!」」

 頭をでてやると、二匹は僕を押し倒してじゃれはじめた。
 じゃれるのはいいんだけど、角ネズミの生肉を食べた後に僕の顔を舐めるのはちょっと勘弁かんべんしてくれないかなあ……口がかなり血なまぐさいよ。


 こうして二匹のシロミミコヨーテは、契約を交わして僕の従魔となった。
 名前は大きい方が〝ドングリ〟、小さい方が〝アケビ〟。
 名付け親は僕ではなく、フローラルシャワーだ。
 木の実の名前から付けたのだという。なんでって思わなくもないけど、良い名前だし突っ込むのはやめておこう。
 そうそう、ドングリとアケビは男の子ではなく女の子だった。彼女たちが親子なのかはわからないけどね。
 そんなちょっと賑やかになったメンバーと一緒に、僕はひたすら妖精の宿った植物を探す。
 しばらく探索してみて、僕は大きな収穫に気付いた。
 ドングリとアケビは耳と鼻が良いので、牙ウサギと角ネズミの接近がすぐわかるのだ。そのおかげで戦闘がとても楽になった。
 それと、背が低くて僕の歩く速度に合わせるのが大変そうだったフローラルシャワーが、二匹の背中に乗って移動できるようになったのも大きい。真っ赤な全身鎧でドングリやアケビにまたがる姿は、まさしく騎士って感じだ。
 今は僕が角ネズミの角で作った、クォーターパイクと呼ばれる短槍たんそうを抱えているから、なおさら騎士っぽい雰囲気が出ている。
 なんだかんだ、パーティっぽくなってきたかな……


     ✿


 ドングリとアケビが仲間になってから数日後。
 それを見つけたのはアケビだった。
 アケビは〝ウォーーーーン〟とえて僕たちを呼んだ。
 二匹と暮らしてわかったのは、コヨーテの鳴き声はなかなかうるさいということ。朝起きられず寝坊ねぼうしがちな僕を起こすため、フローラルシャワーがわざと彼女たちを吠えさせるほどだ。
 おじいちゃん妖精は色々と機転がきくよ、本当に。
 とりあえずアケビの呼ぶ方に行ってみる。するとそこには、この樹海には不釣り合いなほど鮮やかな黄色い花が咲いていた。

「綺麗な花だね……でもここにあるのはなんとなく不自然かも」

 僕がそう言って首を傾げていると、フローラルシャワーが口を開いた。

(ほう、これはヘリアンサスですな)

 さすがフローラルシャワー、花の妖精だけあって植物に詳しい。
 ヘリアンサスは高さ一メートルほどの草丈くさたけに、ヒマワリを小さくしたような黄色い花をたくさん咲かせる花だ。フローラルシャワー曰く、花言葉は〝活発〟で、その言葉は花の雰囲気ふんいきにもぴったり合っている。
 妖精が宿っている植物かどうかを調べるため、早速『鑑定』を使う。


【何かが宿っているヘリアンサス】

 種族:ヘリアンサス
 補足:これは当たりだね。


 僕は〝よーしよし、よくやった〟とアケビの体を撫でてやる。それを見たドングリが〝私も私も〟とじゃれてきたので、僕は二匹まとめて撫でまわした。
 シロミミコヨーテって確か獰猛どうもうな肉食獣だよなあ……と思いながらも、じゃれてくる動物は種族にかかわらず可愛いので仕方ない。
 ヘリアンサスに仲間になってもらう交渉は妖精同士の方が良いと思って、フローラルシャワーに丸投げ――ではなくお願いする。その間僕は、ドングリとアケビと遊びながら待つことにした。
 しばらくして、フローラルシャワーが僕のところに戻ってきた。

(主様、話がつきました。ヘリアンサスの妖精も従魔の住処への移植を望んでおります)
「ありがとう、フローラルシャワー。じゃあ、契約といきますか」

 早速僕は、ヘリアンサスの花に右手を向けて話しかける。

「君は本当に僕との契約を望んでいるの?」

 すると、黄色い花は風に吹かれてもいないのにゆらゆらと揺れ、僕の頭の中に声を響かせてきた。『念話』だ。

(はい。キンギョソウの妖精があなたは素晴らしい人間だと話してくれました。私も信じます。花の妖精は同族には決してうそをつきませんから。何より従魔の住処の土と水は絶品といいますし、私も許されるのであれば、移植を望みます)
「ありがとう。君が新しい家族になってくれるのは僕も嬉しいよ」

 僕の右手から伸びた光の鎖が、ヘリアンサスに繋がる。淡い光が僕とヘリアンサスを包み込んで、従魔契約は成立した。
 ヘリアンサスは、キンギョソウが咲く花壇の横に移植した。
 赤い花の横に並んだ黄色い花を見ると気持ちがおだやかになる。やっぱり花は癒しだよね。
 その後すぐに――
 ヘリアンサスの前にフローラルシャワーより少しだけ小さな、とても活発そうな女の子が現れた。見た目は十代なかばほどで、黄色のぴったりした装いをしている。

(はじめまして主様、私がヘリアンサスの妖精です! これからよろしくお願いします。あと、ぜひ私にも名前をつけてください!)

 元気いっぱいのヘリアンサスの妖精にお願いされ、僕は思案する。

「うーん、名前か……〝レモンクィーン〟っていうのはどうかな?」
素敵すてきな名前ですね! ありがとうございます、主様)

 彼女はそう言って、嬉しそうに笑ってくれた。
 名前をつけたのはいいけど、フローラルシャワーもレモンクィーンもちょっと長いかな。うん、利便性も考えて、フローラルシャワーは〝フローラル〟、レモンクィーンは〝レモン〟と呼ぶことにしよう。
 そういえば、テイマーが従魔と契約した場合、冒険者ギルドへの登録義務があるんだよね。有料だけど。
 従魔登録には、テイマーという役立たずクラスの有効活用のために、どんな魔物と契約が可能なのか確認する意味があるらしい。
 はあ、面倒だな。それに、イリスさんを泣かせたまま飛び出してきちゃったんだよね。ギルドに顔を出すのはとても気まずい。
 でもいつかは行かなくちゃいけないんだ。腹を決めよう。
 こうして僕は、数日ぶりにカスターニャの町に戻ることを決めた。


     ✿


 およそ一週間ぶりにカスターニャに来た僕は、町に入るために西門の入口に向かった。フローラルたちは従魔の住処で留守番るすばんだ。
 僕の姿を認めた顔見知りの西門の兵士、ウーゴさんが声をかけてくる。

「おお、ルフトか。久しぶりだな。イリスちゃんらがお前が戻っていないか何度も聞きに来たぞ。あんまり町のみんなに心配をかけるなよ」

 あんな形で飛び出した後、一週間も姿を見せなかったため、色々な人を心配させてしまったみたいだ。いつもなら二、三日に一度は町に顔を出していたからね。
 僕は〝すみません、迷惑かけちゃったみたいで〟と頭を掻きながら謝った。あと、おびの印でもないが、従魔の住処で採れたリンゴの実がいっぱい入った袋を手渡しておいた。
 それにしても――
 イリスさんの様子を聞いてしまうと、ますます冒険者ギルドに顔を出しにくいな。イリスさん怒ってるかなー……
 冒険者ギルドに向かう足取りがとても重い。
 頭がごちゃごちゃして、このまま何事もなかったかのように従魔の住処に引きこもりたいという衝動しょうどうられる。しかし、こういうことは後に延ばせば延ばすほど、行きたくなくなってしまうものだ。この町に来てから一年が過ぎて僕も十一歳になったし、少しはしっかりしないと。
 気合を入れる意味で自分の両頬りょうほほを叩く。


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