落ちこぼれぼっちテイマーは諦めません

たゆ

文字の大きさ
83 / 149
連載

148話 魔物になった少年と父親4(2021.08.19改)

しおりを挟む
 
 黒のゴブリン王であるリザスさんと戦い。休む暇も無く町に戻り東門を攻めるゴブリンの司令部を潰した。最後はプリョードルさんに頼まれて魔物になったモーソンを追い掛けて説得。
 目まぐるしく濃い一日が、正確には二日間だがやっと終わりそうだ。
 従魔の住処に戻り、残った仕事をみんなで分担して終わらせる。こんなに忙しいのはいつぶりだろう……やっと布団の中に辿り着けた。

 激動一日は、まだ終わらない。夜中に起こされてしまった。

「ふぁーあ……どうしたの?」

 目の前には、申し訳なさそうにブランデルホルストが立っている。しかも、身振り手振りを繰り返し僕に何かを伝えようと必死だ。
 まだ寝ぼけているが、ブランデルホルストが言いたいことが何となく分かった。まるい、スライムの誰かかな?地面に、草、緑色……グリーンさんのことか、グリーンさんがわーとなって……しょぼーん?大きくなったり小さくなったりしている。僕は飛び起きた。
 グリーンさんの進化がはじまったらしい。急いでグリーンさんのいるベッドに向かう。
 グリーンさんは薄っすらと光を纏い、苦しそうに何度も体の形を変えていた。ブルーさんとレッドさんとホワイトさんも隣で心配そうに見守っている。
 僕と一緒にアルジェントに乗って、上空から数えきれない数のゴブリンを倒したんだ。グリーンさんが進化するのは当然かもしれない。体は前回の進化の時よりも大きく膨らんでいく。
 グリーンさんは、【ジャイアントグリーンスライムハイアーチャー】という直径二メートル近い大きさのスライムに進化した。
 進化したことで、体を二つに分けて動くことが出来る特殊スキル『分裂』を手に入れ、尚且つ魔物ランクも、スライムたちの中で初めてのCランクに到達した。

(※進化チャート:グリーンスライム⇒ビックグリーンスライム⇒ビックグリーンスライムアーチャー⇒ビックグリーンスライムハイアーチャー⇒ジャイアントグリーンスライムハイアーチャー)

 余談ではあるが、生樹の杖が水の精霊の雫を吸収したことで、新しい武器へと生まれ変わった。武器名は『精霊樹の杖』検証がまだなのでハッキリしたことは分からないが、精霊の力が宿る武器というだけで凄そうだ。

     ✿

 ゴブリンの侵攻から二日。
 カスターニャの町では、壊れた壁や建物の修繕作業に多くの人たちが駆り出されていた。
 僕は西門近くに集められた木の破片の山を見ている。ここにあるのは、町の見張りとして貸し出した魔法生物【案山子カカシ】の残骸だ。元が農作業用の魔法生物だったこともあり、大半のカカシは魔法回路ごと破壊されてしまった。
 アルトゥールさんの指示で、兵士たちが案山子の残骸を一か所に集めてくれたそうだ。その残骸を従魔の住処へと回収する。
 カカシの回収を終えると、その足で、町の中心部にある宿屋銀猫亭へと向かう。
 モーソンのことで、プリョードルさんに会う必要があったからだ。
 銀猫亭に到着すると、何の約束もなかったはずなのに、すぐに部屋へと案内された。部屋の中にはプリョードルさんとダンブロージオさんの二人が待っていた。
 二人は、モーソンのことが心配で、僕が訪ねるであろう銀猫亭でずっと待ち続けていたみたいだ。
 僕の横にモーソンがいないことに二人は顔を曇らせる。

「この部屋には、音を遮る『遮音』の魔道具が置いてある。話してほしい、モーソンとは無事会えたのか」

 ろくに寝ていなんだろう……プリョードルさんの目の下に薄っすらとクマが見えた。

「会えました」

 どう話せばいいんだろう、僕は言葉に詰まってしまう。

「モーソンは、あの子は元気だろうか」
「はい、元気です。見た目は大きく変わってしまいましたが」

 僕の言葉を聞いて二人は、やはりかと苦々しい顔をする。モーソンの話だとプリョードルさんと第五兵団の兵士の何名かは、魔物に変わったモーソンの姿を目撃しているそうだ。プリョードルさんも覚悟はしていたんだろう。
 僕は二人にモーソンを合わせることにした。

 恐る恐るモーソンが姿を見せる。二人の顔を見るのが怖いのかモーソンは俯いたままだ。
 二人も、モーソンが現れて一瞬戸惑いを見せたが、彼らの表情は決してモーソンを蔑むものではなかった。魔物になったモーソンを見ても、彼らの顔は優しいままだ。

「生きていて良かった……本当に良かった」
「本当だ。良かったなー無事で……」

 プリョードルさんとダンブロージオさん二人の言葉は温かかった。その言葉で初めてモーソンが顔を上げる。モーソンの目にも涙が浮かんでいた。
 僕は、三人だけの時間を作るために、一度従魔の住処に入った。

 暫くして、部屋に戻ると、
 腹を割って話が出来たのだろう。三人は、どことなくスッキリした顔をしていた。

「今回は本当にモーソンを救ってくれてありがとう。ルフト君の従魔になったという話も聞いたよ、これからモーソンをよろしく頼む」

 プリョードルさんは、僕に深々と頭を下げた。
 今後について、口裏を合わせる。
 モーソンはアリツィオ大樹海で行方不明になったことにするそうだ。プリョードルさんは、〝モーソンの捜索〟を冒険者ギルドを通して僕宛に指名依頼する。
 この依頼は、単に二人がまたモーソンに会うための口実なのだが……きちんと報酬も出るし、僕にとっても悪い条件ではない。表向きには一~二年に一度、必ず二人のもとに直接顔を出して進捗を報告するとあるのだが、実際はもっと頻繁に会うことになりそうだ。
 それと、モーソンの魔物化については、アルトゥールさんやバルテルメさん、第五兵団の兵士たちにもハッキリとしたことは言わずに伏せることになった。第五兵団の兵士たちの中には、その瞬間を見ているものもいるが、ゴブリンシャーマンが幻覚系の未知の魔法を使ったということで上手く誤魔化すらしい。
 名も無き村の子供が、魔物に変わることが公になれば、子供たちは迫害され運が悪ければ殺される可能性も出てくる。これは、ヒミツにすべきだとモーソンとプリョードルさんとダンブロージオさんの間で意見が一致した。

「信用しないわけではないが、我々兵士にとっての一番の忠誠は国にある。アルトゥールやバルテルメであっても、この話を聞いて王に報告しないという選択は難しいだろう」

 二人はこの事が万が一バレた場合には、潔く軍を辞めるつもりでいるとも教えてくれた。

「その時は仕事を失うだろうな、ま……だからこそ知るのは俺ら二人だけで良い。こう見えて蓄えはあるんだ。だからそんな心配そうな顔はするな」

 その言葉を聞いてモーソンがまた泣き出した。僕にはここまで思ってくれる大人はいない。少しだけモーソンのことが羨ましく思えた。
 それと、あくまでリレイアスト王国にいる子供たち限定にはなるが、名も無き村の子供たちの行方についてもプリョードルさんとダンブロージオさんは調べてくれるそうだ。
 これについては、黒いゴブリンたちを退けた褒賞として、僕が名も無き村の出身者たち、同郷の子供の行方を知りたがっていると、プリョードルさんから上手く国に説明するそうだ。
 
 
しおりを挟む
感想 208

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。