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連載
148話 魔物になった少年と父親4(2021.08.19改)
しおりを挟む黒のゴブリン王であるリザスさんと戦い。休む暇も無く町に戻り東門を攻めるゴブリンの司令部を潰した。最後はプリョードルさんに頼まれて魔物になったモーソンを追い掛けて説得。
目まぐるしく濃い一日が、正確には二日間だがやっと終わりそうだ。
従魔の住処に戻り、残った仕事をみんなで分担して終わらせる。こんなに忙しいのはいつぶりだろう……やっと布団の中に辿り着けた。
激動一日は、まだ終わらない。夜中に起こされてしまった。
「ふぁーあ……どうしたの?」
目の前には、申し訳なさそうにブランデルホルストが立っている。しかも、身振り手振りを繰り返し僕に何かを伝えようと必死だ。
まだ寝ぼけているが、ブランデルホルストが言いたいことが何となく分かった。まるい、スライムの誰かかな?地面に、草、緑色……グリーンさんのことか、グリーンさんがわーとなって……しょぼーん?大きくなったり小さくなったりしている。僕は飛び起きた。
グリーンさんの進化がはじまったらしい。急いでグリーンさんのいるベッドに向かう。
グリーンさんは薄っすらと光を纏い、苦しそうに何度も体の形を変えていた。ブルーさんとレッドさんとホワイトさんも隣で心配そうに見守っている。
僕と一緒にアルジェントに乗って、上空から数えきれない数のゴブリンを倒したんだ。グリーンさんが進化するのは当然かもしれない。体は前回の進化の時よりも大きく膨らんでいく。
グリーンさんは、【ジャイアントグリーンスライムハイアーチャー】という直径二メートル近い大きさのスライムに進化した。
進化したことで、体を二つに分けて動くことが出来る特殊スキル『分裂』を手に入れ、尚且つ魔物ランクも、スライムたちの中で初めてのCランクに到達した。
(※進化チャート:グリーンスライム⇒ビックグリーンスライム⇒ビックグリーンスライムアーチャー⇒ビックグリーンスライムハイアーチャー⇒ジャイアントグリーンスライムハイアーチャー)
余談ではあるが、生樹の杖が水の精霊の雫を吸収したことで、新しい武器へと生まれ変わった。武器名は『精霊樹の杖』検証がまだなのでハッキリしたことは分からないが、精霊の力が宿る武器というだけで凄そうだ。
✿
ゴブリンの侵攻から二日。
カスターニャの町では、壊れた壁や建物の修繕作業に多くの人たちが駆り出されていた。
僕は西門近くに集められた木の破片の山を見ている。ここにあるのは、町の見張りとして貸し出した魔法生物【案山子】の残骸だ。元が農作業用の魔法生物だったこともあり、大半のカカシは魔法回路ごと破壊されてしまった。
アルトゥールさんの指示で、兵士たちが案山子の残骸を一か所に集めてくれたそうだ。その残骸を従魔の住処へと回収する。
カカシの回収を終えると、その足で、町の中心部にある宿屋銀猫亭へと向かう。
モーソンのことで、プリョードルさんに会う必要があったからだ。
銀猫亭に到着すると、何の約束もなかったはずなのに、すぐに部屋へと案内された。部屋の中にはプリョードルさんとダンブロージオさんの二人が待っていた。
二人は、モーソンのことが心配で、僕が訪ねるであろう銀猫亭でずっと待ち続けていたみたいだ。
僕の横にモーソンがいないことに二人は顔を曇らせる。
「この部屋には、音を遮る『遮音』の魔道具が置いてある。話してほしい、モーソンとは無事会えたのか」
ろくに寝ていなんだろう……プリョードルさんの目の下に薄っすらとクマが見えた。
「会えました」
どう話せばいいんだろう、僕は言葉に詰まってしまう。
「モーソンは、あの子は元気だろうか」
「はい、元気です。見た目は大きく変わってしまいましたが」
僕の言葉を聞いて二人は、やはりかと苦々しい顔をする。モーソンの話だとプリョードルさんと第五兵団の兵士の何名かは、魔物に変わったモーソンの姿を目撃しているそうだ。プリョードルさんも覚悟はしていたんだろう。
僕は二人にモーソンを合わせることにした。
恐る恐るモーソンが姿を見せる。二人の顔を見るのが怖いのかモーソンは俯いたままだ。
二人も、モーソンが現れて一瞬戸惑いを見せたが、彼らの表情は決してモーソンを蔑むものではなかった。魔物になったモーソンを見ても、彼らの顔は優しいままだ。
「生きていて良かった……本当に良かった」
「本当だ。良かったなー無事で……」
プリョードルさんとダンブロージオさん二人の言葉は温かかった。その言葉で初めてモーソンが顔を上げる。モーソンの目にも涙が浮かんでいた。
僕は、三人だけの時間を作るために、一度従魔の住処に入った。
暫くして、部屋に戻ると、
腹を割って話が出来たのだろう。三人は、どことなくスッキリした顔をしていた。
「今回は本当にモーソンを救ってくれてありがとう。ルフト君の従魔になったという話も聞いたよ、これからモーソンをよろしく頼む」
プリョードルさんは、僕に深々と頭を下げた。
今後について、口裏を合わせる。
モーソンはアリツィオ大樹海で行方不明になったことにするそうだ。プリョードルさんは、〝モーソンの捜索〟を冒険者ギルドを通して僕宛に指名依頼する。
この依頼は、単に二人がまたモーソンに会うための口実なのだが……きちんと報酬も出るし、僕にとっても悪い条件ではない。表向きには一~二年に一度、必ず二人のもとに直接顔を出して進捗を報告するとあるのだが、実際はもっと頻繁に会うことになりそうだ。
それと、モーソンの魔物化については、アルトゥールさんやバルテルメさん、第五兵団の兵士たちにもハッキリとしたことは言わずに伏せることになった。第五兵団の兵士たちの中には、その瞬間を見ているものもいるが、ゴブリンシャーマンが幻覚系の未知の魔法を使ったということで上手く誤魔化すらしい。
名も無き村の子供が、魔物に変わることが公になれば、子供たちは迫害され運が悪ければ殺される可能性も出てくる。これは、ヒミツにすべきだとモーソンとプリョードルさんとダンブロージオさんの間で意見が一致した。
「信用しないわけではないが、我々兵士にとっての一番の忠誠は国にある。アルトゥールやバルテルメであっても、この話を聞いて王に報告しないという選択は難しいだろう」
二人はこの事が万が一バレた場合には、潔く軍を辞めるつもりでいるとも教えてくれた。
「その時は仕事を失うだろうな、ま……だからこそ知るのは俺ら二人だけで良い。こう見えて蓄えはあるんだ。だからそんな心配そうな顔はするな」
その言葉を聞いてモーソンがまた泣き出した。僕にはここまで思ってくれる大人はいない。少しだけモーソンのことが羨ましく思えた。
それと、あくまでリレイアスト王国にいる子供たち限定にはなるが、名も無き村の子供たちの行方についてもプリョードルさんとダンブロージオさんは調べてくれるそうだ。
これについては、黒いゴブリンたちを退けた褒賞として、僕が名も無き村の出身者たち、同郷の子供の行方を知りたがっていると、プリョードルさんから上手く国に説明するそうだ。
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