落ちこぼれぼっちテイマーは諦めません

たゆ

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152話 ゴブリン王の手記(2021.08.20改)

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 ゴブリンたちからしてみれば急に自分たちの王様が家臣を連れたまま消えちゃったんだから驚くよね。主が死んだら従魔って、そのことが分かったりするんだろうか?
 ゴブリンキングの討伐とゴブリンダンジョンの攻略、二つの指名依頼は達成したんだし、あとは従魔の住処に身を隠して、頃合いを見てゴブリンの町を出て成功の狼煙は上げよう。

 従魔の住処に入り一番はじめにおこなったのは、地下冷凍庫に投げ込んだゴブリンの死体から魔石を取り出す作業だった。ゴブリン王ラガンとゴブリンジェネラルの他にも、東門で倒して投げ込んだ沢山の死体が入っていた。アンデッド化する可能性を考えるとそこいらに捨てるわけにもいかないし、結局、魔石を抜き取った後、もう一度冷凍庫の中に戻した。
 今回一番の発見は、ダンジョンに出現する魔物が、ゴブリン等の人型の場合、倒すことで様々な装備が手に入ることだ。ボス部屋のゴブリンソードマンが使っていた、真新しい八本のブロードソード広刃の剣もだけど、ショートソード小剣ダガー短剣にメイスと、多くの鉄の武器を拾うことが出来た。
 素材の代わりって感じなのかな?
 人型の魔物が発生するダンジョンを見つけることは、鉄が採掘出来る鉱山を発見するのと同じくらい人間にとっては価値があることなのかもしれない。
 ゴブリン王ラガンは、ゴブリンを従魔にするためにボスモンスターを倒さずに、ゴブリンたちが湧くのを待っていた。同じように、鉄を得るためにボスモンスターを倒さず、ゴブリンが湧く度に狩って鉄の武器を得ることも可能なんじゃなんじゃ……これは、鉄不足に悩む、小人の村の問題解決に繋がるかもしれない。
 アリツィオ大樹海の中には、まだまだ多くの未発見ダンジョンが眠っているのだから……。
 それと回収した装備の中に面白い物を見つけた。ゴブリン王ラガンが羽織っていたローブだ。濃い紫色をした魔法のローブで、日の光の中では分からない程度にローブ全体が薄っすらと光っている。早速、ローブに『鑑定』魔法を使った。

【ゴブリン王ラガンのローブ】
特徴:ゴブリン族着用時、同族の従魔契約成功率四十%上昇。他種族着用時、ゴブリンへの好感度アップ、ゴブリンの言語(文字、言葉の理解)能力取得。サイズ調整機能有。

 大半のゴブリンは、人の言葉が話せない。そういった意味でも、ゴブリンの使う言葉や文字が分かる能力はありがたい。ゴブリンの好感度アップも町を逃げるのに使えそうだ。
 洗わずに袖を通すのには抵抗があったので、フェアリーウエル妖精の泉の水でよく洗った後『乾燥』の魔法で乾かしてから袖を通した。
 サイズ調整の魔法は、予想以上に便利で、ぶかぶかのローブを纏った後、に二メートル以上あったローブの丈が、僕の体に合わせて変化する。
 これには、従魔のみんなも驚いていた。

 次は、ゴブリン王ラガンを倒して手に入れた。新しい部屋を探索してみることにした。
 中央に建てられた小屋の中に入ると、一冊の手記が無造作に置かれていた。

【ゴブリン王ラガンの手記】
内容:ゴブリン王ラガンが感じたことを、ただ書き残した手記。

 小屋の中にあった腰を掛けるのに丁度良い大きさの木箱に座り、魔物の革で作られた重厚な表紙の本に手を伸ばす。
 フローラルとレモンには、この部屋の土がどのような植物の栽培に向くのかの調査をお願いした。ドングリとツァガンデギア一家は、この広い空間が気に入った様で楽しそうに走り回っている。
 みんなの運動場としても使えそうだ。

 僕は、ゴブリン王ラガンの手記を読みはじめた。
 ラガンたち緑のゴブリン族は、元々ゴブリンダンジョンの近くに古くから集落を作り暮らす小さな部族だった。〝大陸の西には更に大きなゴブリンの集落があると族長が話していた〟か、これはメモしておこう。僕は横に置いたノートを開き必要な部分だけを書き写していく。
 ゴブリンダンジョンの存在を、この地域に暮らすゴブリンたちは古くから知っていた。それでも、ダンジョンの中にいるのは姿形が同じゴブリンなわけで……彼らは同じゴブリンを殺すことを躊躇った。
 ゴブリンたちはダンジョンの中にある装備や宝箱を欲したが、それでもダンジョン攻略には消極的だったみたいだ。
 そんな状況が何十年と続き、テイマー魔物遣いの力を持ったゴブリン、ラガンが生まれた。集落のゴブリンたちは、そんおことを大いに喜んだという、人間のテイマー従魔師とは違い、魔物が持つテイマーの力は同族を従える能力でもある。
 それからラガンは多くのゴブリンたちを従えてゴブリンダンジョンに潜っては、ダンジョンで生まれたゴブリンたちを従魔に加え、集落をドンドン大きくしていった。
 より力の強いゴブリンの従魔を欲したラガンは、ダンジョンのボスモンスターを従魔にしようと考えた。ラガンは何度もそれを試みたが、ダンジョンのボスであるゴブリンを従魔にすることは出来なかった。
 ローズが、植物ダンジョンのボスモンスターであるデーモンソーンのサクラを従者に出来たのは、僕のクラスが上位クラスの偉大な従魔師テイマーエミネントに上がっていたからかもしれない。
 この手記で分かったことがある。ゴブリンダンジョンのボスから出た宝箱の中身が〝ハズレ〟だったのは、ゴブリンダンジョンをゴブリンたちが何度も攻略していたからだ。
 ダンジョン攻略を繰り返すうちにラガンは、宝箱から出る召喚の壺を開けることにはまってしまった……何が出て来るのか分からない壺を開けるワクワク感は楽しいもんな。ラガンの気持ちも分かる気がする。
 〝満月の日に開けると強い魔物が出る気がする〟とか〝複数の壺を一気に開けると強い魔物が出やすいかも〟など、意味不明な理論が、数ページにも亘り書いてあるあたりも、彼の本気度が伝わってくる。
 ただ、僕が他のダンジョンで手に入れた召喚の壺とは違い、攻略回数の多いゴブリンダンジョンから出る召喚の壺は、で魔物が出ないことの方が多いみたいだ〝五回連続魔物が出ないとか神様の嫌がらせだ〟といった愚痴も多くある。
 そんな中でラガンはある法則を発見した。
 従魔の住処で壺を開けた方が魔物が出る確率が高いことを、出現する魔物の種類にも従魔の住処の中と外では違うこと、従魔の住処の中ではゴブリンが出るが、従魔の住処の外では大きな蟻の魔物が出たとも書いてあった。
〝ゴブリンたちが乗り物や防具の素材に使っている魔物ジャイアントサンドアントは、召喚の壺から出た魔物だったんだ。冒険者ギルドに生息地に関する情報が無かった謎がやっと解けたよ〟

 どんどん本のページをめくっていく。
 イロイロなことを試していくうちにラガンは従魔が進化することを知った。そして、従魔を増やし続けたことで、従魔の能力を強化する支援魔法『支援の鎖』を手に入れた。
 従魔の数が増えるにつれて、鎖の効果も増えていった。素早さ向上や攻撃力向上といった身体能力強化に、毒耐性向上や麻痺耐性向上といった耐性強化の鎖まで身に着けた。
 多くのゴブリンを仲間にしたラガンは、ある日突然ゴブリンの神の声を聞いたんだそうだ〝ついにゴブリンキングへの進化へと導く、神からの啓示があった。最高の気分だ〟よほど興奮したのか、かなり文字が雑に書かれている。
 それからというものラガンは、ゴブリンダンジョンのボスを倒さずにひたすらゴブリンが湧くのを待ち、ダンジョンのゴブリンを従魔にすることに注力した。〝人間共の町を滅ぼした暁には、壺を貯めて百壺同時開けに挑戦してやる〟と欲望いっぱいの一文を残して……。
 小さな小屋の中には、ラガンの宝物だったんだろう、百個まではないが、かなり多くの召喚の壺が並んでいる。
 ラガンの気持ちは凄く分かる。何も出ない壺が混じっているとなると、尚更強い魔物が出た時の喜びもひとしおだろう。
 召喚の壺を開けまくりたいというラガンの夢だけでも、僕が引き継ごう。
 従魔の住処の中で召喚の壺から出た魔物は『従魔契約』をしなくても自動的に従魔になるとも書かれている。
 ラガンの手記を読みふける僕の前に、フローラルとレモンがやって来た。

(主様、ここの土は主様の従魔の住処ほど栄養豊富というワケではないようですぞ)
(水に宿る魔力も弱いみたいです)

 従魔の住処にも性質の違いがあるんだ……ラガンの手記にしおりを挟む。
 
 
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