落ちこぼれぼっちテイマーは諦めません

たゆ

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199話 地下世界でやりたいこと 2(2021.08.26改)

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 目の前の光景を見て、僕は言葉を失った。
 浮き亀の甲羅がよく浮かぶのは分かった。転覆して水が入っても沈まずに浮かんでいるのだから、でも……目の前では、何度もゴブリンたちを乗せた甲羅船が転覆する光景が繰り返されていたのだ。
 リザスさんは、よくこんな転覆を繰り返す船で、こんな大きな地底湖を横断したものだ。その規格外ぶりにただただ驚く。恐らく、途中から甲羅を浮き輪代わりにして、バタ足で強引にこの大きな湖を渡り切ったのだろう。
 この光景を見て、僕のやりたいことが見つかった。
 地下世界にいる間に、ゴブリンたちが安心して乗れる転覆しない船を作ろう。
 それと、地底湖に凶暴な魔物がいるかどうかも調べたい。転覆しない船を作っても、沖に出たゴブリンたちが魔物に食べられてしまっては目も当てられない。
 あとは、日陰芋以外の地下世界で育つ野菜も見つけたいな。
 元々ダンジョンの中で生えていた木だし、迷宮胡桃の木なら、地下世界でも育ちそうな気はするんだけど、出来るなら地下世界にはあまり外の植物を持ち込みたくない。この地下世界で食べられる野菜を探してみよう。

 そうと決まれば早速、船作りだ!
 ラフラー砂漠で使った船をそのまま使う方法もあるけど、出来ることなら地下世界で採れる素材を生かした船を作りたい。そうすれば、僕らがいなくなっても、ゴブリンたちが自分たちだけで壊れた船を修理したり新しい船を作ることができるだろう。
 ゴブリンたちも、少しの木材なら地上から運ぶことも可能だよね。浮き亀の甲羅と木材を組み合わせた船を作ろう。
 早速、ラプタさんに、船を作るために浮き亀の甲羅を分けてもらえないか相談したところ、処理済みの亀の甲羅が積み上がる広場に案内されて〝好きなだけ使ってくだされ〟と言ってくれた。
 実際甲羅に触れてみると大きさの割にかなり軽い……これが異常な浮力の正体なんだろうか?
 試しに岸の近くの湖に浮かべて乗ってみたんだけど、バランスがとりにくく気を抜いた瞬間転覆してしまった。

「ルフト様、大丈夫ですか―ー」

 薄れゆく意識の中でシザの声が響く……そうだ僕は泳いだことが無かったんだ。泳げない……〝ゴボゴボ〟溺れる……近くにいたゴブリンたちが急いで僕を水から引き上げてくれた。口からおもいっきり水を吐く。
 湖岸に正座をさせられて、みんな従魔に散々怒られた。しかも、今回は湖を甘く見るなと、漁師のゴブリンたちもそれに加わる。何度も無茶はしません、反省していますと繰り返し、どうにかみんなに許してもらえた。
 この日は、大した成果も得られないまま、日が暮れて来たこともあり船作りを終えた。
 明かりが無いと、溺れても気付かないことが多くなるため、夜湖に入るのは禁止なんだそうだ。
 浮力があり過ぎるのも問題なのかもしれない、水に当たる面積も少ないし、転覆しても沈まないのはいいんだけど、バランスがとるのが難し過ぎる。
 その日は、浮き亀の甲羅を多めに貰い帰路についた。

 翌日――物作りが得意なニュトン鍛冶妖精たちと一緒に、久しぶりに従魔の住処に籠り浮き亀の甲羅を使った船作りに没頭した。
 ひっくり返らないようにすればいいんだよね?まずは単純に二つの甲羅を木材で繋げてみる。
 早速、地底湖へと向かい完成した船を浮かべてみた。横の安定性は増したけど、縦の安定性は不安定なままだ。何度も湖に浮かべながら改良を加えていく、最終的に四枚の甲羅を繋げた大きな船になってしまったものの、安定性を欠きひっくり返るようなことはなくなった。もう少しだけ小さくしたいな。
 水に投げ出されても良い様に、浮き亀の甲羅を切って縫い付けた水に浮くベストも製作してみた!ベストを着て湖に浮かんでみたところ、溺れることもなくぷかぷか浮かんで気持ちが良い。

 漕ぐのは、疲れを知らないレッサースパルトイたちにお願いするのが一番なんだけど……水に浮くベストを着せても重くて沈んじゃうんだよね、万が一深い場所で湖に落ちたら助ける前に沈んじゃいそうだし、別の方法を考えないと。
 こうして、多くのゴブリンたちに見守られる中作業は続き、ついに船が完成した。
 ゴブリンたちからも歓声と拍手が上がる!出来上がったのは、三枚の丸い甲羅を木で固定した三角形の船だ。地下世界だけに風はほとんど吹いておらず、帆は付けずに、動力はオールだけにした。
 見た目は微妙だけど、これならひっくり返ることもない。
 一緒に同乗するのは、僕の他にフローラルとレモン、ナナホシテントウの妖精スプリガンのナナホシとアオハナムグリの妖精スプリガンのハナホシ、背景同化のスキルを切って珍しく姿を見せるトンボの羽根が背中に生えたカエルの妖精ウオルルのゲコタ。ムボ、シザ、ミダの三人の小人たちだ。
 みんなの体にも、それぞれ違う形の水に浮くベストが装備済みである。
 今回は、万が一ひっくり返った際に、対処できそうなメンバーを選んだ。
 本当はアルジェントにも上空に待機してもらいたいんだけど、もし湖に強い魔物が潜んでいた場合、刺激する可能性があるため諦めた。

「ナナホシ、イリュージョンゴブリンを出してほしいんだ。数は三体で僕の真似をするように伝えてほしい」
(しょーがないなー、普通のでいいのか?)

 僕のお願いにめんどくさそうなそぶりを見せるも、ナナホシは頼られるのが嬉しいのか口元が微妙に緩んでいる。

「うん、一緒にオールを漕いでもらうだけだから」

 ナナホシが詠唱を終えると、船の上には、三体の眼球がない緑色の肌をしたイリュージョンゴブリンが現れた。
 オールを手にしたイリュージョンゴブリンたちが、僕を真似して一斉にオールを漕ぎ始める。
 魔法で作られた存在だからだろう、ゴブリンたちは一糸乱れぬ統率のとれた動きでオールを漕いだ。船はぐんぐん速度を上げていく。湖のため波も無く、船はとても安定している。
 この調子なら、大きな魚にでもぶつからない限り転覆することもないだろう。
 消えるタイミングに合わせてイリュージョンゴブリンを出し直し、沖へと向かった。

 地底湖を三分の一ほど進んだ場所で船を止めた。転覆しない船を作ること以外にもやることはある。船を襲う魔物がいるのか調べないと。
 ロープの先に重りを付けて水の中へと投げ入れた。ロープには五十メートルおきに目印がついており、大まかではあるけれど湖の深さが分かるようになっている。
 重りを落としてからどれくらい経ったろう、湖の底に重りが当たる感触が手に伝わってきた。

「ルフト様、どうだ?」

 ムボが興味深げに聞いてくる。

「深いの方なのかな?湖の深さを測るのははじめてだから……百メートル近くあるみたい。大きな魔物が潜んでいてもおかしくはない深さではあるよね」
(私たちの中に水の中に潜れる者はおりません、どうやって水の中を調べるか……)

 フローラルが顎鬚を触りながら難しい顔をする。
 スライムたちなら水の中でも動けるとは思うけど、魚のように自由自在に動けるかと言われれば難しいだろう。太古の大湿原の湖で二十メートル級の魚竜を見た記憶があるせいか、湖の真ん中にいるとどうも落ち着かない。
 あれを試してみるか……。
 僕は、思い付いたとばかりに従魔の住処を開くと、レッサースパルトイたちにお願いして召喚の壺E欠陥品を取りに行ってもらう。
 六本もあれば一匹くらい魔物が出るよね。
 ボロニーズが飼っているゼブラピラニアにお願いする方法もあるけど、せっかくの機会だし水の中で動ける魔物と従魔契約するのもいいかもしれない。
 湖の真ん中に浮かぶ船の上で開けるんだ。水の中で活動出来る魔物がきっと出て来てくるだろう。
 僕は、船の上で召喚の壺の封を剥がした。
 
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