3 / 157
第1章「旅立ち」
第3話「完成! ゴブリン料理」
しおりを挟む
ざわめく見物客の視線が、僕に注がれる。
先ほどの『覇王』で受けた注目と比べれば、そんなに恥ずかしいという気持ちは沸いてこない。
可愛いエプロンに身を包んだ屈強そうな職員さんが、色んな食材と調理道具、そして『ゴブリンの肉』を僕の目の前に置く。
「他に必要な道具があれば、遠慮なく言ってくれ」
食材と調理道具を見て、僕は頷く。
「これだけあれば大丈夫です」
「わかった」
屈強な職員さんが可愛いエプロンを脱ぐと、それを僕に着せて後ろに下がる。胸元は大きなハートで全体にひらひらが付いたとても可愛いエプロンだ。
正直今すぐ脱ぎ捨てたい。男の僕が着ても、誰も得はしないって。
とりあえず調理の準備だ、父から聞いた方法が間違っていない事を祈って。
用意するものは鍋を二つとザル、安物のワインに、肉を包むための野菜類、凝ったものを作るわけじゃないしこれだけで十分だ。
まずは『ゴブリンの肉」を一口サイズに切っていく、この『ゴブリンの肉』がやばかった。
肉自体が臭いのもそうだが、刃物で切り分ける際に、切り口から物凄く臭い匂いが発生するのだ。人間どころか、動物やモンスターだって食べなさそうな匂いだ。
手ごろな石を使って鍋を固定し、片方の鍋には水を鍋の半分位まで入れ、もう片方の鍋にはワインを指の第1関節分まで入れて火で温める。
煮えるまでちょっと時間があるから気になって居たことを確認だ。
「あの、アリアさん? 先ほどからすごく近い気がするのですが」
「大丈夫」
アリアさんが無表情でこちらをじーっと見ている、その表情からは何を考えているのかがわからない。
至近距離で見てくる。周りをウロチョロと動き回られて、正直ちょっと邪魔だ。
振り返ると毎度彼女の顔が至近距離にある。そして彼女が凄く美人なのもあるが、僕自身女の子慣れしていないのもあって、ついドキッとしてしまう。
沸騰し始めた鍋の中身をのぞき込む、僕の顔の真横にまで彼女は顔を近づけて一緒にのぞき込んでくる。彼女の髪の香りが……
いかん、集中集中。
今は料理の事だけを考えるんだ。
ゴブリンの肉を、ぐつぐつと煮えたワインの入った鍋に投入する。そして投入して30秒くらいですぐにゴブリンの肉をザルに移し、ゴブリンの肉のエキスをたっぷり吸ったワインを捨てる。
ゴブリンの肉は、ワインで煮ると30秒くらいでエキスが大量に出てくる。このエキスが肉の不味い理由だ。
そして一緒に煮ている食材に、ゴブリンエキスを染み込ませたら、すぐに肉がまたエキスを吸収してしまうらしい。だからエキスを吸収し始める前に肉を取り出せば、味が一気に変わる。
ザルに入ったゴブリンの肉に、今度はもう一つの鍋で沸かしたお湯をぶっかける。
鍋にあるお湯半分位をゴブリンの肉にかけたら、今度はゴブリンの肉をワインで煮た鍋にお湯をかけ綺麗に洗う。これをしないと鍋がゴブリンの肉臭くなって使い物にならなくなるからだ。
さて、父から聞いた情報が正しければこれでゴブリンの肉は『この世の地獄のような不味い肉』から『我慢すれば食べられる不味い肉』程度にはなったはずだ。
気は進まないけど、とりあえず一つだけつまんで試食してみるか。
肉をつまみクンクンと匂いを嗅いでみる。やっぱり臭い、臭いけど先ほどと比べれば全然マシだ。
目をつむって口に入れる、周りからは「うわっ」「おぇええええ」等小声で聞こえてくる。
ゆっくりと咀嚼して飲み込む。うん、不味い。
ただ、我慢すれば食べられるレベルにはなっている。少なくとも吐き出して見物客に投げつけるような味ではない。
後は適当に水洗いをした野菜で包んめば、完成だ。
「ゴブリン肉の野菜包み、完成です」
可愛らしいエプロンを脱ぎ捨て、料理完成の宣言をする。
歓声が上が……らない。それもそうか、ここで下手に目立てば「ゴブリン肉の試食係」に任命されてしまう恐れがあるからだ。
となると必然的に、先ほど「ゴブリン肉の試食係」をさせられたチャラい職員に注目が集まる。
「いや、ほれもうほふりんのあひひかひないからもふむひ」
(訳:いや、俺もうゴブリンの味しかしないからもう無理)
チャラい職員さんはシャコシャコと必死で歯磨きをしている。
所々アザが出来ている、吐きだしたゴブリン肉を投げつけた際に乱闘になっていたからだ。
僕が食べても良いけど、さっき一つだけ食べてたら、後ろから「あの子の味覚絶対おかしいって!」と言う声が聞こえた。多分僕が食べたとしても”味覚のおかしい少年が食べただけ”と言う評価になってしまう。
誰かほかに食べてくれそうな人を探してきょろきょろしてみるが、皆僕が振り向いた瞬間に目をそらす。
「お、おい、あれ見ろよ」
見物客が慌てて指さした方向を見ると、屈強な職員さんとアリアさんが『ゴブリン肉の野菜包み』を食べていたのだ。
見物客が固唾を飲んで、その光景を見守る。
屈強な職員さんとアリアさんは、むしゃむしゃとよく噛んで、そして飲み込んだ。
「不味いな」
「うん、不味い」
「これはちゃんとした野菜を使わずに、そこら辺の青臭い雑草で包んだ方が良さそうだと思うが。貴女はどう思いますか?」
「先に我慢して肉を食べて、それから雑草を食べればちょうど良いと思う」
先ほどの『覇王』で受けた注目と比べれば、そんなに恥ずかしいという気持ちは沸いてこない。
可愛いエプロンに身を包んだ屈強そうな職員さんが、色んな食材と調理道具、そして『ゴブリンの肉』を僕の目の前に置く。
「他に必要な道具があれば、遠慮なく言ってくれ」
食材と調理道具を見て、僕は頷く。
「これだけあれば大丈夫です」
「わかった」
屈強な職員さんが可愛いエプロンを脱ぐと、それを僕に着せて後ろに下がる。胸元は大きなハートで全体にひらひらが付いたとても可愛いエプロンだ。
正直今すぐ脱ぎ捨てたい。男の僕が着ても、誰も得はしないって。
とりあえず調理の準備だ、父から聞いた方法が間違っていない事を祈って。
用意するものは鍋を二つとザル、安物のワインに、肉を包むための野菜類、凝ったものを作るわけじゃないしこれだけで十分だ。
まずは『ゴブリンの肉」を一口サイズに切っていく、この『ゴブリンの肉』がやばかった。
肉自体が臭いのもそうだが、刃物で切り分ける際に、切り口から物凄く臭い匂いが発生するのだ。人間どころか、動物やモンスターだって食べなさそうな匂いだ。
手ごろな石を使って鍋を固定し、片方の鍋には水を鍋の半分位まで入れ、もう片方の鍋にはワインを指の第1関節分まで入れて火で温める。
煮えるまでちょっと時間があるから気になって居たことを確認だ。
「あの、アリアさん? 先ほどからすごく近い気がするのですが」
「大丈夫」
アリアさんが無表情でこちらをじーっと見ている、その表情からは何を考えているのかがわからない。
至近距離で見てくる。周りをウロチョロと動き回られて、正直ちょっと邪魔だ。
振り返ると毎度彼女の顔が至近距離にある。そして彼女が凄く美人なのもあるが、僕自身女の子慣れしていないのもあって、ついドキッとしてしまう。
沸騰し始めた鍋の中身をのぞき込む、僕の顔の真横にまで彼女は顔を近づけて一緒にのぞき込んでくる。彼女の髪の香りが……
いかん、集中集中。
今は料理の事だけを考えるんだ。
ゴブリンの肉を、ぐつぐつと煮えたワインの入った鍋に投入する。そして投入して30秒くらいですぐにゴブリンの肉をザルに移し、ゴブリンの肉のエキスをたっぷり吸ったワインを捨てる。
ゴブリンの肉は、ワインで煮ると30秒くらいでエキスが大量に出てくる。このエキスが肉の不味い理由だ。
そして一緒に煮ている食材に、ゴブリンエキスを染み込ませたら、すぐに肉がまたエキスを吸収してしまうらしい。だからエキスを吸収し始める前に肉を取り出せば、味が一気に変わる。
ザルに入ったゴブリンの肉に、今度はもう一つの鍋で沸かしたお湯をぶっかける。
鍋にあるお湯半分位をゴブリンの肉にかけたら、今度はゴブリンの肉をワインで煮た鍋にお湯をかけ綺麗に洗う。これをしないと鍋がゴブリンの肉臭くなって使い物にならなくなるからだ。
さて、父から聞いた情報が正しければこれでゴブリンの肉は『この世の地獄のような不味い肉』から『我慢すれば食べられる不味い肉』程度にはなったはずだ。
気は進まないけど、とりあえず一つだけつまんで試食してみるか。
肉をつまみクンクンと匂いを嗅いでみる。やっぱり臭い、臭いけど先ほどと比べれば全然マシだ。
目をつむって口に入れる、周りからは「うわっ」「おぇええええ」等小声で聞こえてくる。
ゆっくりと咀嚼して飲み込む。うん、不味い。
ただ、我慢すれば食べられるレベルにはなっている。少なくとも吐き出して見物客に投げつけるような味ではない。
後は適当に水洗いをした野菜で包んめば、完成だ。
「ゴブリン肉の野菜包み、完成です」
可愛らしいエプロンを脱ぎ捨て、料理完成の宣言をする。
歓声が上が……らない。それもそうか、ここで下手に目立てば「ゴブリン肉の試食係」に任命されてしまう恐れがあるからだ。
となると必然的に、先ほど「ゴブリン肉の試食係」をさせられたチャラい職員に注目が集まる。
「いや、ほれもうほふりんのあひひかひないからもふむひ」
(訳:いや、俺もうゴブリンの味しかしないからもう無理)
チャラい職員さんはシャコシャコと必死で歯磨きをしている。
所々アザが出来ている、吐きだしたゴブリン肉を投げつけた際に乱闘になっていたからだ。
僕が食べても良いけど、さっき一つだけ食べてたら、後ろから「あの子の味覚絶対おかしいって!」と言う声が聞こえた。多分僕が食べたとしても”味覚のおかしい少年が食べただけ”と言う評価になってしまう。
誰かほかに食べてくれそうな人を探してきょろきょろしてみるが、皆僕が振り向いた瞬間に目をそらす。
「お、おい、あれ見ろよ」
見物客が慌てて指さした方向を見ると、屈強な職員さんとアリアさんが『ゴブリン肉の野菜包み』を食べていたのだ。
見物客が固唾を飲んで、その光景を見守る。
屈強な職員さんとアリアさんは、むしゃむしゃとよく噛んで、そして飲み込んだ。
「不味いな」
「うん、不味い」
「これはちゃんとした野菜を使わずに、そこら辺の青臭い雑草で包んだ方が良さそうだと思うが。貴女はどう思いますか?」
「先に我慢して肉を食べて、それから雑草を食べればちょうど良いと思う」
6
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中
あ、まん。@田中子樹
ファンタジー
仕事一筋40年。
結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。
定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。
だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。
唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。
化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。
彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。
現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。
これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる