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第1章「旅立ち」
第14話「正義の理由」
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「さて、次はジーンさんの番ですよ。悪いのですがエルク君、そこを退いてもらえますか?」
「嫌です、退きません」
「俺を助けようとしてくれたエルク君に危害を加える気もないし、加えたくないんですよ。だから退いてください!」
「退きません、僕はジーンさんも見捨てる気は無いですから」
ジーンさんがやった事は許されないとは思う、だからって彼を見捨てて良いなんて考えは、したくなかった。
「エルク君、キミは良いさ。可愛い女の子のパーティに囲まれて、勇者であるにも関わらず対等に扱って貰えて。だからわからないんだ! 不当な暴力を受ける痛みを! 嘲笑われる悲しみを!」
「わかるよ。僕も昔、学園に通っていたころに、イジメられていたから!」
「じゃあ、なんで!」
「だからと言って、イジメの報復をすれば解決するわけじゃないです。話し合いましょう?」
悪い事をした奴は、どうなっても良い。そんな考えに染まりたくなかった。
「そんな、幼稚な正義感で!」
叫びながらアルフさんが突進してくる。『瞬歩』は使ってこないのか? その方が僕としてはやりやすいが。
だが、それでも力の差は歴然だった。一方的に打ち込んでくるアルフさんに対して、僕はまともに捌くことすら出来ない。
彼が剣を振るうたびに僕は体制を崩し、目の前に剣を突き付けられる。それがもう何度も続いた。
「実力差がわかったはずだ、いい加減諦めてくれ。じゃないと本当にキミを斬らないといけなくなる」
わかっている。けど勝てないからって、諦めるわけにはいかない。
アルフさんに正面から打ち合っても勝てない、それならイチかバチかだ。
「ウンディーネよ、潤しの水を与えたまえ」
家庭用水魔法の詠唱、コップ一杯程度の水が出せる魔法だ。
練習ではまだ上手くいったことは無いけど……出来た!
目の前に、拳よりちょっと小さい水の塊がふよふよ浮いている。このままほっておけばすぐに落ちてしまう。
僕はその水の塊が腰元付近まで落ちてきた所で、刀身を振り上げて水の塊にぶつける。軽い水しぶきがアルフさんの顔にかかる。
一瞬、本当に一瞬だけ水しぶきでアルフさんの視界を奪った隙に、僕は振り上げた刀身をアルフさんの剣にめがけて振り下ろす。
アルフさんの手から剣を払う事が目的だ。
振り下ろし、アルフさんの剣を捉えた! しかし、感触がおかしい。
気づいたころにはもう遅かった。リンとゴブリンの模擬戦で散々やられたカウンター、確か海剣術「無手」だったか、相手の斬撃を受け止める瞬間に、自分の武器を手放しカウンターを打ち込む技だ。
剣を振り下ろした勢いのまま、アルフさんの拳が僕の顔面に吸い込まれていく。
覚えているのはここまでだ、そこで気を失ってしまったらしい。
☆ ☆ ☆
目が覚めた時にはもう夕方になっていた。僕は寝かされていたようだ。
そのまま起き上がろうとするが、まだ頭がクラクラする。
一旦起き上がるのはやめよう、もう一度頭を寝かせようとして気づいた。何かぷにっと柔らかい感触が後頭部に感じる。見上げるとアリアの豊かな胸が見える、僕に膝枕してくれていたのか。
慌てて起き上がろうとする僕の頬を、アリアが両手で抑える。
「勝てない相手に、無茶し過ぎ」
「ごめんなさい」
言い訳しても仕方ない、まずは謝ろう。
「アルフさんが復讐するのは当然の権利だったんだから、止める必要なかったんじゃない?」
「あの後、ジーンはボコボコにされて、エルクが出た意味無かったです」
実際アルフさんとジーンさんの問題だから、僕が出る方がおかしいとわかってる。
それでも必死に助けをこうジーンさんを、無視できなかった。
「まぁ今回はイジメた、イジメられた程度の関係だったから良いけど。これが盗賊で誰か殺された復讐ですって言っても、アンタは助けた?」
何も言えなかった、アルフさんの言った「幼稚な正義」と言う言葉が胸に刺さる。
イジメ規模じゃなく、死人が出てても同じ事が出来たかか。
「今回の件は、もう少し考えなさい。何で助けたかったか、助けてどうしたかったか」
「リンが思うに、エルクは弱い者いじめに過敏に反応し過ぎです」
「とりあえず、アンタが寝てる間に依頼の分は終わらせたから。さっさと帰るわよ」
弱い者いじめに敏感、か。
昔イジメられてた事で、イジメを見ると冷静になれないのかもしれない。
さてと、そろそろ起き上がるかな。殴られた箇所以外に大きなケガはない、アルフさんと打ち合った時にいくつか軽い切り傷をつけられたはずだけど、治っているのを見るとサラ達が治療魔法をかけてくれたようだ、感謝しないと。
アリアの膝枕が名残惜しいが、起き上がり、体についた葉っぱや土埃を払う。
「アリア、ありがとう」
「エルク、これ」
ふと、アリアから装飾のついた剣が渡される。全体的に赤い、柄の部分には大きな宝石? 魔石? が埋まっている
「はい、これは?」
「エルクが持ってて」
「はい……? わかりました」
よくわからないけど剣を渡された。さっき無茶し過ぎと叱られたので、その罰の荷物持ちだろうか?
とりあえず大事に持っておこう。
「嫌です、退きません」
「俺を助けようとしてくれたエルク君に危害を加える気もないし、加えたくないんですよ。だから退いてください!」
「退きません、僕はジーンさんも見捨てる気は無いですから」
ジーンさんがやった事は許されないとは思う、だからって彼を見捨てて良いなんて考えは、したくなかった。
「エルク君、キミは良いさ。可愛い女の子のパーティに囲まれて、勇者であるにも関わらず対等に扱って貰えて。だからわからないんだ! 不当な暴力を受ける痛みを! 嘲笑われる悲しみを!」
「わかるよ。僕も昔、学園に通っていたころに、イジメられていたから!」
「じゃあ、なんで!」
「だからと言って、イジメの報復をすれば解決するわけじゃないです。話し合いましょう?」
悪い事をした奴は、どうなっても良い。そんな考えに染まりたくなかった。
「そんな、幼稚な正義感で!」
叫びながらアルフさんが突進してくる。『瞬歩』は使ってこないのか? その方が僕としてはやりやすいが。
だが、それでも力の差は歴然だった。一方的に打ち込んでくるアルフさんに対して、僕はまともに捌くことすら出来ない。
彼が剣を振るうたびに僕は体制を崩し、目の前に剣を突き付けられる。それがもう何度も続いた。
「実力差がわかったはずだ、いい加減諦めてくれ。じゃないと本当にキミを斬らないといけなくなる」
わかっている。けど勝てないからって、諦めるわけにはいかない。
アルフさんに正面から打ち合っても勝てない、それならイチかバチかだ。
「ウンディーネよ、潤しの水を与えたまえ」
家庭用水魔法の詠唱、コップ一杯程度の水が出せる魔法だ。
練習ではまだ上手くいったことは無いけど……出来た!
目の前に、拳よりちょっと小さい水の塊がふよふよ浮いている。このままほっておけばすぐに落ちてしまう。
僕はその水の塊が腰元付近まで落ちてきた所で、刀身を振り上げて水の塊にぶつける。軽い水しぶきがアルフさんの顔にかかる。
一瞬、本当に一瞬だけ水しぶきでアルフさんの視界を奪った隙に、僕は振り上げた刀身をアルフさんの剣にめがけて振り下ろす。
アルフさんの手から剣を払う事が目的だ。
振り下ろし、アルフさんの剣を捉えた! しかし、感触がおかしい。
気づいたころにはもう遅かった。リンとゴブリンの模擬戦で散々やられたカウンター、確か海剣術「無手」だったか、相手の斬撃を受け止める瞬間に、自分の武器を手放しカウンターを打ち込む技だ。
剣を振り下ろした勢いのまま、アルフさんの拳が僕の顔面に吸い込まれていく。
覚えているのはここまでだ、そこで気を失ってしまったらしい。
☆ ☆ ☆
目が覚めた時にはもう夕方になっていた。僕は寝かされていたようだ。
そのまま起き上がろうとするが、まだ頭がクラクラする。
一旦起き上がるのはやめよう、もう一度頭を寝かせようとして気づいた。何かぷにっと柔らかい感触が後頭部に感じる。見上げるとアリアの豊かな胸が見える、僕に膝枕してくれていたのか。
慌てて起き上がろうとする僕の頬を、アリアが両手で抑える。
「勝てない相手に、無茶し過ぎ」
「ごめんなさい」
言い訳しても仕方ない、まずは謝ろう。
「アルフさんが復讐するのは当然の権利だったんだから、止める必要なかったんじゃない?」
「あの後、ジーンはボコボコにされて、エルクが出た意味無かったです」
実際アルフさんとジーンさんの問題だから、僕が出る方がおかしいとわかってる。
それでも必死に助けをこうジーンさんを、無視できなかった。
「まぁ今回はイジメた、イジメられた程度の関係だったから良いけど。これが盗賊で誰か殺された復讐ですって言っても、アンタは助けた?」
何も言えなかった、アルフさんの言った「幼稚な正義」と言う言葉が胸に刺さる。
イジメ規模じゃなく、死人が出てても同じ事が出来たかか。
「今回の件は、もう少し考えなさい。何で助けたかったか、助けてどうしたかったか」
「リンが思うに、エルクは弱い者いじめに過敏に反応し過ぎです」
「とりあえず、アンタが寝てる間に依頼の分は終わらせたから。さっさと帰るわよ」
弱い者いじめに敏感、か。
昔イジメられてた事で、イジメを見ると冷静になれないのかもしれない。
さてと、そろそろ起き上がるかな。殴られた箇所以外に大きなケガはない、アルフさんと打ち合った時にいくつか軽い切り傷をつけられたはずだけど、治っているのを見るとサラ達が治療魔法をかけてくれたようだ、感謝しないと。
アリアの膝枕が名残惜しいが、起き上がり、体についた葉っぱや土埃を払う。
「アリア、ありがとう」
「エルク、これ」
ふと、アリアから装飾のついた剣が渡される。全体的に赤い、柄の部分には大きな宝石? 魔石? が埋まっている
「はい、これは?」
「エルクが持ってて」
「はい……? わかりました」
よくわからないけど剣を渡された。さっき無茶し過ぎと叱られたので、その罰の荷物持ちだろうか?
とりあえず大事に持っておこう。
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