65 / 157
第4章「ヴェル魔法大会」
第2話「勇者マスクマン」
しおりを挟む
控え室でマスクとマントを預けて、サラ達の居る客席に慌てて戻る。
「さっきの試合色々酷すぎて、周りが困惑しておったぞ」
控え室を出た所で、イルナちゃんに声を掛けられ。、僕を待っててくれたのか。
少し溜め息をつきつつも、満足そうにニカっと笑っている。
「そもそも、あんなナイフ避ける必要もなかろう? 当たっても対して痛くはないはずじゃぞ」
「そうなの?」
「うむ。それに打撃に対しても反応出来たはず、まだ自分の力に対してどこか信頼してないように感じる」
自分に対して信頼か、確かに力を手に入れてもまだ「これで大丈夫かな?」と不安に思ったりすることはある。
イルナちゃんは「この大会で勝っていけば、自ずと自信に繋がるじゃろ」と言ってくれてるけど。
☆ ☆ ☆
「遅かったじゃない。せっかく面白い試合が見れたのに」
「あぁ、うん。ちょっとトイレが混んでてね」
サラは「ふ~ん」と興味無さそうな声で返事をしながら、僕の席に座り僕の作ったサンドウィッチを頬張っている。僕の席からバスケットごと持っていけば良いのに、他の人にも渡せるようにわざわざ僕の席で食べているようだ。
代わりにサラの席に座ると、リンが興奮気味に「変な格好したマスクマンが、変な動きをしながら、変な勝ち方したです」と目を輝かせて僕に語っている。その変なマスクマン、僕なんだけどね。
リンが話してる最中に「ペチン」という音が聞こえた。「またやってるです」とリンが呆れ気味だ。
音の方を見てみると、目にも止まらぬ速さでサンドウィッチに手を出そうとするアリアに対し、目にも止まらぬ速さで対抗しているサラだった。
アリアが高速で出した手をサラが全て叩き落しているのだ、いつの間にアリアに対抗できる程に成長していたようだ。
最初は動きが見えるけど反応出来なかったのが、段々と反応しようと思えば反応出来る事に気付いたとか。
さっきの試合で、僕もピラの動きは見えていたけど反応出来なかった。もしかして反応しようと思えば、体は動いてくれたんじゃないだろうか?
歓声が上がったので試合を見てみると、さきほどピラと一緒に居たキツネのような笑みを浮かべる選手が試合に勝っていた。次の僕の対戦相手は彼か。
彼の名前はアルで、ランベルトさんのメモにも載ってた男だ。
地剣術と海剣術を扱い、補助魔法で身体能力を上げて、『瞬歩』程じゃないにしても、高速で移動して死角から襲い掛かって来るのを得意戦術としてると書いてあったっけ。
評価はC+か。
そしてアリアとサラの攻防も決着がついていた。満足気味にサンドウィッチを頬張るアリアに、悔しそうな顔をしているサラ。
「サラは素直だから、フェイントにすぐ引っかかる」
サラは素直が一周して、性格は素直じゃない気がするが。勿論本人にそんな事は言えない。
アリアがサラに対しダメ出しをして、サラがうんうんと頷きながら聞いている。なんだかんだで良いコンビになっている気がする。
大会を通じてお互いを高め合うために、頻繁に情報交換や模擬線らしきものをやったりしているとか。
☆ ☆ ☆
もうそろそろ僕の試合になる。「ちょっとトイレに行ってくるね」と言い残して控え室へ向かった。
着替えて控え室に入ると、僕をチラチラ見てくる人はやはり多い。
だが先ほどの馬鹿にした感じの視線と違い、険しさを感じる。どこか警戒しているような感じだ。
名前を呼ばれ、入場していく。
僕の恰好に対して怒声は無かったが、応援もない。
反対側の入場門からはピラと一緒にいた剣士が歩いてくる。キツネのような笑みをしているが、目は笑っていない、獲物を見る目だ。
「先ほどは弟分がお世話になったね。デビュー戦なのに浮かれているから無様な負け方をするんだ、そう思わないかい?」
そう言って手で口元を抑えているが、やはり目は笑っていない。言葉とは裏腹に怒りを感じる。
口は悪いが仲間思いなんだろうな、嫌いなタイプじゃない。だからと言って負けてあげるつもりはないけど。
「お互いがリングに上がりました、それでは準備は宜しいですね! 魔法大会、レディー」
「「「「「「ゴー!!!!!!!」」」」」」
開始とともに、凄い速度で僕に迫って来る。
『混沌』の効果なのか、高速で走って来る彼の動きがちゃんと見える。あっという間に僕の背後を取り剣を振り上げているが、彼に合わせて振り向きつつ軽くバックステップ。
一瞬で距離を離し、お互いの開始位置を交換する形になった。
「へぇ、反応出来るんだ。それじゃあ更に速度をあげてみようかな」
言い終わる前に彼は動いていた。
『瞬歩』に近い速度で僕の背後を取ろうとするも、その動きをギリギリで回避しながら、リングを縦横無尽に動き回る。
段々と慣れていく感じがした。彼の動きは確かに速いが、それは直線的な物だ。
真っ直ぐに向かってくるのだから、動き出した瞬間が見えれば回避するのは難しい事じゃない。
これならイケル、そう思った矢先だった。彼の動きを見て左にステップをしてかわすつもりだった、しかし彼は動いてなかったのだ。やられた、フェイントだ。
僕がステップで移動している方向へ、彼は一瞬で距離を詰めてくる。剣を振り上げる彼の姿が見える、着地が間に合わない。
高速で動いてるはずが、少しゆっくりに見える。もしかしたら今なら反応しようと思えば反応出来るんじゃないだろうか?
致命傷を避けるために、とりあえず腕でガードだ。ナイフが当たっても今なら痛くない位強化されたこの体なら、受けれるはず。
一瞬チクリとした痛みが左腕にあった。剣を受け止めた腕は、切断されるどころか表面をちょっと切った程度のキズにしかなっていない。
「えっ?」
「えっ?」
彼も驚いたが、僕も驚いていた。流石にこのレベルの剣戟を、本当に腕でガード出来るとは思いもしなかったから。
お互いに目があった。彼が「なんでお前も驚いてるの?」と言った困惑の表情が見える。
「今じゃ!」
完全に時が止まっていたのを、イルナちゃんの声で我に返る。
慌てて殴ってみた、反応が遅れた彼のみぞおちにクリーンヒット。そのまま吹き飛び、場外を超えて壁にぶち当たり気絶していた。
「どんな体をしていたら剣を腕でガード出来るんだ!? 奇抜な格好で目立つだけじゃない、実力を見せつけた勇者マスクマンの勝利です」
遅れて歓声があがる。「さっきはバカにして悪かったな!」「勇者マスクマン最高!」と言った感じで一回戦とは打って変わって、掌を返したような歓声だ。悪い気はしないけどね。
☆ ☆ ☆
「傷口を見せてください。そのまま客席に戻ればサラさん達に、勇者マスクマンと同じ場所にキズが出来ているのを不審に思われると思います」
控室には今度はフルフルさんが来てくれていた。何度もイルナちゃんと戻れば不審がられるから、事情を知っているフルフルさんが代わりに来てくれたのだろう。
幸い傷は浅く、フルフルさんの治療魔法で傷跡すら残らなかった。
お礼を言うと、フルフルさんは笑顔で「イルナ様が嬉しそうにしてるお姿が見れるのが、私も嬉しいので」と言ってくれた、本当にイルナちゃんは愛されてるな。
その後の試合は難なく勝ち進めた。
と言うのも連続で相手が魔術師だったからだ。『混沌』を使った僕に魔法は通じない、僕の目の前で魔法が全て消えるからだ。
一応腕を振り上げたりして魔法をかき消した振りはしている。そうじゃないと怪しまれるしね。
と言っても奇抜な格好のおかげで『混沌』に対しては、そこまで怪しまれているような感じはしない。変な格好をしている奴が変な力を使っている。でも変な奴だから変なのが普通か、みたいな感じだ。
僕の最後の試合はピラやアルと一緒に居た、筋肉ダルマの男だった。
名前はウッディー、ちょっと可愛らしい名前だ。
ランベルトさんのメモでは、実力的にはアルを二回りほど成長させた感じらしいが、ちょっとオツムが足りていないと書かれていた選手だ。だけど評価はB、油断は出来ない。
試合開始とともに彼は僕の方へ歩いてきて「正々堂々と、純粋な力比べで勝負だ」と言ってお互いの両手で掴みあい手四つ状態にさせられた。明らかに体格差があるのに、正々堂々って……
純粋な力比べでは僕が負けていた。うん、純粋な力比べではね。
『混沌』発動中は僕の掌から精気を吸い取る状態になっている。数秒もしない内にウッディーさんはみるみる力が弱っていき、よろけた所をぐるんと回して場外に投げ飛ばした。
こうして僕は、2次予選へ駒を進めた。
☆ ☆ ☆
控室を出た際に、サラとバッタリ出くわしてしまった。
「ねぇ、エルクちょっと良い?」
いや、待っていた感じか。もしかして正体がバレてしまったのだろうか?
「なんであんな変な格好で、参加してるの?」
もしかしなくてもバレバレだったようだ。
確かに勇者マスクマンが出ている時に僕が居なければ怪しむのは当然か。下手に隠せば不信に繋がるかもしれないけど、正直に全部話すわけにもいかないし。
「あの格好は理由があって、今は言えないけど。今度ちゃんと話すから待ってて貰って良いかな?」
「わかったわ」
「そうだよね、でもどうしても言えない理由が。って、えっ?」
「だから、待っててあげるって言ってるの」
少し呆れ気味に、半眼で僕を見つめている。
聞かなくても良いの? いや、聞かれても答えれないんだけどさ。
「別に秘密の一つや二つくらい誰だってあるでしょ。今は言えないなら無理に聞かないから」
聞き分けが良くて助かる。
「もしかして、アリアやリンにもばれてたりします?」
「アリアは何も考えてないだろうし、リンはマスクマンをキラキラした目で見てたから、多分気づいてないんじゃない?」
そっか、他の人にばれてないなら一安心だ。
イルナちゃん達の名前が出てこないって事は、彼女達が協力者と言う事にも気づいているのだろう。
☆ ☆ ☆
観客席に戻ると、サラはまたアリアと組み手と言う名の争奪戦を行っていた。
僕がオヤツに焼いてきたクッキーを、取り合いしているようだ。
予選最後の試合が始まっているのに、そっちには興味が無いと言わんばかりだ。
「エルク、エルク。ちょっと良いですか?」
隣に座るリンが、僕の方のすり寄ってきて、片手で声が漏れないようにしながら、小声で話しかけてきた。その姿が可愛らしいので頭を撫でてみたが無反応だ。
「どうしたの?」
リンに合わせるように小声で答える。
リンは争奪戦を繰り広げてる二人をチラチラと見ながら。
「さっきのマスクとマント。今度貸して欲しいです」
「えっ?」
思わず普通に声が出た。
シーッと僕の口に指を当てて、もう一度争奪戦をしている二人を見ていたが、こちらには気づいて無い様子にホッと息をついていた。
「ごめんごめん。リンは正体に気付いてたの?」
「はい、エルクの気配ですぐに気づいたです」
気配って……そっか、バレバレだったのか。
「大丈夫です。サラとアリアはずっとあの調子で、多分気づいてないはずです」
サラにはもうばれてるんだけどね!
「そっか。うん、いいよ。洗ったら貸してあげるね。でも来週の二次予選でまた使うからそれまでには返してね」
「はいです」
ちなみにアリアとサラの争奪戦は、シオンさんが介入することにより更に熾烈を極め。最後はイルナちゃんとフルフルさんの説教で争いの幕を閉じた。
「さっきの試合色々酷すぎて、周りが困惑しておったぞ」
控え室を出た所で、イルナちゃんに声を掛けられ。、僕を待っててくれたのか。
少し溜め息をつきつつも、満足そうにニカっと笑っている。
「そもそも、あんなナイフ避ける必要もなかろう? 当たっても対して痛くはないはずじゃぞ」
「そうなの?」
「うむ。それに打撃に対しても反応出来たはず、まだ自分の力に対してどこか信頼してないように感じる」
自分に対して信頼か、確かに力を手に入れてもまだ「これで大丈夫かな?」と不安に思ったりすることはある。
イルナちゃんは「この大会で勝っていけば、自ずと自信に繋がるじゃろ」と言ってくれてるけど。
☆ ☆ ☆
「遅かったじゃない。せっかく面白い試合が見れたのに」
「あぁ、うん。ちょっとトイレが混んでてね」
サラは「ふ~ん」と興味無さそうな声で返事をしながら、僕の席に座り僕の作ったサンドウィッチを頬張っている。僕の席からバスケットごと持っていけば良いのに、他の人にも渡せるようにわざわざ僕の席で食べているようだ。
代わりにサラの席に座ると、リンが興奮気味に「変な格好したマスクマンが、変な動きをしながら、変な勝ち方したです」と目を輝かせて僕に語っている。その変なマスクマン、僕なんだけどね。
リンが話してる最中に「ペチン」という音が聞こえた。「またやってるです」とリンが呆れ気味だ。
音の方を見てみると、目にも止まらぬ速さでサンドウィッチに手を出そうとするアリアに対し、目にも止まらぬ速さで対抗しているサラだった。
アリアが高速で出した手をサラが全て叩き落しているのだ、いつの間にアリアに対抗できる程に成長していたようだ。
最初は動きが見えるけど反応出来なかったのが、段々と反応しようと思えば反応出来る事に気付いたとか。
さっきの試合で、僕もピラの動きは見えていたけど反応出来なかった。もしかして反応しようと思えば、体は動いてくれたんじゃないだろうか?
歓声が上がったので試合を見てみると、さきほどピラと一緒に居たキツネのような笑みを浮かべる選手が試合に勝っていた。次の僕の対戦相手は彼か。
彼の名前はアルで、ランベルトさんのメモにも載ってた男だ。
地剣術と海剣術を扱い、補助魔法で身体能力を上げて、『瞬歩』程じゃないにしても、高速で移動して死角から襲い掛かって来るのを得意戦術としてると書いてあったっけ。
評価はC+か。
そしてアリアとサラの攻防も決着がついていた。満足気味にサンドウィッチを頬張るアリアに、悔しそうな顔をしているサラ。
「サラは素直だから、フェイントにすぐ引っかかる」
サラは素直が一周して、性格は素直じゃない気がするが。勿論本人にそんな事は言えない。
アリアがサラに対しダメ出しをして、サラがうんうんと頷きながら聞いている。なんだかんだで良いコンビになっている気がする。
大会を通じてお互いを高め合うために、頻繁に情報交換や模擬線らしきものをやったりしているとか。
☆ ☆ ☆
もうそろそろ僕の試合になる。「ちょっとトイレに行ってくるね」と言い残して控え室へ向かった。
着替えて控え室に入ると、僕をチラチラ見てくる人はやはり多い。
だが先ほどの馬鹿にした感じの視線と違い、険しさを感じる。どこか警戒しているような感じだ。
名前を呼ばれ、入場していく。
僕の恰好に対して怒声は無かったが、応援もない。
反対側の入場門からはピラと一緒にいた剣士が歩いてくる。キツネのような笑みをしているが、目は笑っていない、獲物を見る目だ。
「先ほどは弟分がお世話になったね。デビュー戦なのに浮かれているから無様な負け方をするんだ、そう思わないかい?」
そう言って手で口元を抑えているが、やはり目は笑っていない。言葉とは裏腹に怒りを感じる。
口は悪いが仲間思いなんだろうな、嫌いなタイプじゃない。だからと言って負けてあげるつもりはないけど。
「お互いがリングに上がりました、それでは準備は宜しいですね! 魔法大会、レディー」
「「「「「「ゴー!!!!!!!」」」」」」
開始とともに、凄い速度で僕に迫って来る。
『混沌』の効果なのか、高速で走って来る彼の動きがちゃんと見える。あっという間に僕の背後を取り剣を振り上げているが、彼に合わせて振り向きつつ軽くバックステップ。
一瞬で距離を離し、お互いの開始位置を交換する形になった。
「へぇ、反応出来るんだ。それじゃあ更に速度をあげてみようかな」
言い終わる前に彼は動いていた。
『瞬歩』に近い速度で僕の背後を取ろうとするも、その動きをギリギリで回避しながら、リングを縦横無尽に動き回る。
段々と慣れていく感じがした。彼の動きは確かに速いが、それは直線的な物だ。
真っ直ぐに向かってくるのだから、動き出した瞬間が見えれば回避するのは難しい事じゃない。
これならイケル、そう思った矢先だった。彼の動きを見て左にステップをしてかわすつもりだった、しかし彼は動いてなかったのだ。やられた、フェイントだ。
僕がステップで移動している方向へ、彼は一瞬で距離を詰めてくる。剣を振り上げる彼の姿が見える、着地が間に合わない。
高速で動いてるはずが、少しゆっくりに見える。もしかしたら今なら反応しようと思えば反応出来るんじゃないだろうか?
致命傷を避けるために、とりあえず腕でガードだ。ナイフが当たっても今なら痛くない位強化されたこの体なら、受けれるはず。
一瞬チクリとした痛みが左腕にあった。剣を受け止めた腕は、切断されるどころか表面をちょっと切った程度のキズにしかなっていない。
「えっ?」
「えっ?」
彼も驚いたが、僕も驚いていた。流石にこのレベルの剣戟を、本当に腕でガード出来るとは思いもしなかったから。
お互いに目があった。彼が「なんでお前も驚いてるの?」と言った困惑の表情が見える。
「今じゃ!」
完全に時が止まっていたのを、イルナちゃんの声で我に返る。
慌てて殴ってみた、反応が遅れた彼のみぞおちにクリーンヒット。そのまま吹き飛び、場外を超えて壁にぶち当たり気絶していた。
「どんな体をしていたら剣を腕でガード出来るんだ!? 奇抜な格好で目立つだけじゃない、実力を見せつけた勇者マスクマンの勝利です」
遅れて歓声があがる。「さっきはバカにして悪かったな!」「勇者マスクマン最高!」と言った感じで一回戦とは打って変わって、掌を返したような歓声だ。悪い気はしないけどね。
☆ ☆ ☆
「傷口を見せてください。そのまま客席に戻ればサラさん達に、勇者マスクマンと同じ場所にキズが出来ているのを不審に思われると思います」
控室には今度はフルフルさんが来てくれていた。何度もイルナちゃんと戻れば不審がられるから、事情を知っているフルフルさんが代わりに来てくれたのだろう。
幸い傷は浅く、フルフルさんの治療魔法で傷跡すら残らなかった。
お礼を言うと、フルフルさんは笑顔で「イルナ様が嬉しそうにしてるお姿が見れるのが、私も嬉しいので」と言ってくれた、本当にイルナちゃんは愛されてるな。
その後の試合は難なく勝ち進めた。
と言うのも連続で相手が魔術師だったからだ。『混沌』を使った僕に魔法は通じない、僕の目の前で魔法が全て消えるからだ。
一応腕を振り上げたりして魔法をかき消した振りはしている。そうじゃないと怪しまれるしね。
と言っても奇抜な格好のおかげで『混沌』に対しては、そこまで怪しまれているような感じはしない。変な格好をしている奴が変な力を使っている。でも変な奴だから変なのが普通か、みたいな感じだ。
僕の最後の試合はピラやアルと一緒に居た、筋肉ダルマの男だった。
名前はウッディー、ちょっと可愛らしい名前だ。
ランベルトさんのメモでは、実力的にはアルを二回りほど成長させた感じらしいが、ちょっとオツムが足りていないと書かれていた選手だ。だけど評価はB、油断は出来ない。
試合開始とともに彼は僕の方へ歩いてきて「正々堂々と、純粋な力比べで勝負だ」と言ってお互いの両手で掴みあい手四つ状態にさせられた。明らかに体格差があるのに、正々堂々って……
純粋な力比べでは僕が負けていた。うん、純粋な力比べではね。
『混沌』発動中は僕の掌から精気を吸い取る状態になっている。数秒もしない内にウッディーさんはみるみる力が弱っていき、よろけた所をぐるんと回して場外に投げ飛ばした。
こうして僕は、2次予選へ駒を進めた。
☆ ☆ ☆
控室を出た際に、サラとバッタリ出くわしてしまった。
「ねぇ、エルクちょっと良い?」
いや、待っていた感じか。もしかして正体がバレてしまったのだろうか?
「なんであんな変な格好で、参加してるの?」
もしかしなくてもバレバレだったようだ。
確かに勇者マスクマンが出ている時に僕が居なければ怪しむのは当然か。下手に隠せば不信に繋がるかもしれないけど、正直に全部話すわけにもいかないし。
「あの格好は理由があって、今は言えないけど。今度ちゃんと話すから待ってて貰って良いかな?」
「わかったわ」
「そうだよね、でもどうしても言えない理由が。って、えっ?」
「だから、待っててあげるって言ってるの」
少し呆れ気味に、半眼で僕を見つめている。
聞かなくても良いの? いや、聞かれても答えれないんだけどさ。
「別に秘密の一つや二つくらい誰だってあるでしょ。今は言えないなら無理に聞かないから」
聞き分けが良くて助かる。
「もしかして、アリアやリンにもばれてたりします?」
「アリアは何も考えてないだろうし、リンはマスクマンをキラキラした目で見てたから、多分気づいてないんじゃない?」
そっか、他の人にばれてないなら一安心だ。
イルナちゃん達の名前が出てこないって事は、彼女達が協力者と言う事にも気づいているのだろう。
☆ ☆ ☆
観客席に戻ると、サラはまたアリアと組み手と言う名の争奪戦を行っていた。
僕がオヤツに焼いてきたクッキーを、取り合いしているようだ。
予選最後の試合が始まっているのに、そっちには興味が無いと言わんばかりだ。
「エルク、エルク。ちょっと良いですか?」
隣に座るリンが、僕の方のすり寄ってきて、片手で声が漏れないようにしながら、小声で話しかけてきた。その姿が可愛らしいので頭を撫でてみたが無反応だ。
「どうしたの?」
リンに合わせるように小声で答える。
リンは争奪戦を繰り広げてる二人をチラチラと見ながら。
「さっきのマスクとマント。今度貸して欲しいです」
「えっ?」
思わず普通に声が出た。
シーッと僕の口に指を当てて、もう一度争奪戦をしている二人を見ていたが、こちらには気づいて無い様子にホッと息をついていた。
「ごめんごめん。リンは正体に気付いてたの?」
「はい、エルクの気配ですぐに気づいたです」
気配って……そっか、バレバレだったのか。
「大丈夫です。サラとアリアはずっとあの調子で、多分気づいてないはずです」
サラにはもうばれてるんだけどね!
「そっか。うん、いいよ。洗ったら貸してあげるね。でも来週の二次予選でまた使うからそれまでには返してね」
「はいです」
ちなみにアリアとサラの争奪戦は、シオンさんが介入することにより更に熾烈を極め。最後はイルナちゃんとフルフルさんの説教で争いの幕を閉じた。
6
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。
音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、
幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。
魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。
そして再び出会う幼馴染。
彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。
もういい。
密かにやってた支援も打ち切る。
俺以外にも魔道具職人はいるさ。
落ちぶれて行く追放したパーティ。
俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。
精霊のお仕事
ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
【完結】
オレは前世の記憶を思い出した。
あの世で、ダメじゃん。
でもそこにいたのは地球で慣れ親しんだ神様。神様のおかげで復活がなったが…今世の記憶が飛んでいた。
まあ、オレを拾ってくれたのはいい人達だしオレは彼等と家族になって新しい人生を生きる。
ときどき神様の依頼があったり。
わけのわからん敵が出てきたりする。
たまには人間を蹂躙したりもする。?
まあいいか。
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる