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第6章「宗教都市イリス」
第11話「恋愛相談」
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うーむ。恋の相談ねぇ。
そんな相談されても、僕だって恋愛経験があるわけじゃないし。
恋愛どうこう以前に、引きこもりだったわけだし。
ハハッ、言ってて悲しくなってきた。
相談者のスキールさんはと言うと、俯いたかと思ったら照れ始めたりもじもじしたりと、まるで恋する乙女のようだ。ちょっと気持ち悪い。
それはともかく、僕に恋愛経験なんて無い。これは先に伝えておくべきだろう。
相談に乗ったは良いけど、上手くいかず後になって「実は僕、恋愛経験無いんですよ」と打ち明けるのは良くないよな。
変に期待されてからでは言いにくくなるしね。
「あの、一つ良いですか?」
「おう、良いぞ、一つと言わず、いくらでも構わないぞ。あぁそれと敬語は無しでいい。そういう息苦しいのはめんどくさいからな」
「はぁ」
スキールさんがそう言うなら、それに合わせるかな。
僕は別にどっちでも良いけど、スキールさんが敬語は嫌だと言うなら、フレンドリーにした方が良いだろう。
「その、相談に乗るのは良いけど、僕も恋愛経験が無いので」
「マジか!? 女の子4人も侍らかしてるのに?」
侍らかすって……
まるで僕が彼女達を手玉にとって遊んでるみたいじゃないか。
「いえ、彼女達とはそういう関係じゃないですから」
ちょっとだけ声が硬くなった。たとえ表情に出てなくても、声で僕がムッとしているのがわかるほどに。
しかしスキールさんはどこ吹く風といった様子だ。僕の言葉の真意を知ってか知らずか、腕を組み「う~ん」と唸っている。
「じゃあキミは、そういう関係でもない女の子達の頭を平気で撫でているのかい?」
グーの音も出なかった。
僕は何も言い返す事が出来なかった。
「それで、スキールさんの気になる相手というのは?」
「あぁ、うん。その……」
そう言うと、スキールさんはまたモジモジモードに入った。
これは長丁場になりそうだ。僕は追加で飲み物を注文した。
「スキールさん。僕が質問するのでハッキリ答えてください」
このままでは埒があかない。
会話の主導権を預けたままでは、明日の朝になっても終わりそうにない。
戸惑うスキールさんを畳み掛けるなら、今のうちだ。
「あなたの気になる女性は誰ですか? ハイッ」
「ゾ、ゾフィ……」
「今回相談したい内容は何ですか? ハイッ」
「ゾフィに想いを伝えたいが、俺の事が好きなのか不安で」
最初はもにょもにょしていたが、僕が質問する度に、スキールさんは段々とハッキリ答えるようになってきた。これならいけるな。
質問を繰り返し、スキールさんが悩んでいる内容は大体予測がついた。
彼はゾフィさんの事が好きだが、自分は勇者。
スキールさんの得意武器は剣だが、剣の実力は同じく剣を使うゾフィさんの足元にも及ばない。そんな自分が想いを伝えたところで良い返事が来るわけがない。そんな風に思っているのだろう。
そんなのは劣等感を感じてる本人が勝手に気にしているだけで、相手は気にしてない事がほとんどだと思うけど。
「剣の腕で勝てないだけで振られたりはしないですよ。ほら、スキールさんには良い所がいっぱいあるわけですし」
そんな僕の言葉に対し、スキールさんは深いため息を吐くだけだった。
顔には「そんなわけねぇだろ」と書いてある。
「じゃあエルク。もしもだ、もしもお前がアリアに結婚を申し込むとして、お前は剣の腕で勝てない事を気にしないで告白出来るか?」
ふむ。僕がアリアにか。
そりゃあ剣の腕ではかなわないけど、そんな事を気にするわけが、あるね。
よくよく考えてみれば、今の状況って『混沌』を教えてもらう前の僕が、散々イルナちゃんに「戦闘以外で役に立てば良いではないか?」と言われてるのに、それでも必死に魔術や剣術を調べてた頃と一緒じゃないか。
他の良い部分があるから諦める? そんなのは無理に決まってる。
どんなに料理を褒められても、どんなに優しいねと言われても、欲しいものはそれじゃない。
そんな事はわかっていたはずなのにな。
自分の力に浮かれ、テングになっていた自分に気付かされた。
僕の答えを待つように、スキールさんが僕を見つめている。
その視線に耐えきれず、思わず目をそらしてしまう。
「今のスキールさんが、ゾフィさんに勝てるようになるのは難しいです」
「あぁ、そうだな」
諦めの入ったような低い声で、彼はそう言った。
そんな事は、僕に言われるまでもなく本人が良くわかってるのだろう。
だが僕が言いたいのはそんな事じゃない。
「だから1回」
「ん?」
「せめて1回、1回だけでも勝てるように対策を考えてみませんか」
「1回勝った程度で効果があるのか?」
「あまり無いでしょうね」
「おい」
「でも、成功率が一番高いのは、その時だと思いますよ」
再戦を挑まれる前に、一気に告白まで持っていく。
どうせどのタイミングでも成功率は変わらないと思う。
だったらスキールさんが自信を持って「好きだ」と言えるタイミングにした方がいいだろう。
さっきみたいにモジモジして告白なんてすれば、成功する物も成功しなくなるだろうし。
「……それで、具体的な対策は何かあるか?」
しばらく考え込み、大きく頷き、そう言ったスキールさんの目からは、迷いが消えている。
どうやら決心がついたようだ。
「いえ、今の所はまだ無いですね」
「まだ、と言う事は何か当てがあるのか?」
「はい。アリアにゾフィさんと手合わせをしてもらうようにお願いするつもりです。模擬戦を元にゾフィさんに勝てる戦い方を考えましょう。ゾフィさんが強いと言っても、何処かに弱点はあると思うので」
弱点と言わなくても、何かしら苦手とする部分はあるはずだ。
「なるほど。ありがとう。エルク、キミに相談して正解だったみたいだ」
「いえ、どういたしまして」
時間はわからないけど、外は完全な暗闇で、店内の客もまばらになっているから、きっともう遅い時間だろう。
アリア達はもう先に宿に戻って寝ているかもしれない。
僕もそろそろ帰るとしようかな。
「そう言えば、ゾフィさんのどこに惚れたんですか?」
特に意味はない。ただの興味本位で言った言葉だった。
好きになった部分を聞いたら、さっさと帰ろう。
そう思っていた。
「あぁ、実は彼女見た目と言葉遣いで誤解されがちだけど、女の子らしい事にも興味があってね」
どうやら地雷を踏んだようだ。
立とうとする僕を抑えて座り直させ、スキールさんはゾフィさんの事を語り始めた。
彼女の強さを、まるで自分の事のように誇らしげに。
彼女の意外な一面を、まるで恋人のように優しく。
目をキラキラさせながら、宝物を自慢する子供のように。
僕はため息をついて、彼の話に相づちを打つ。
どうやら今夜は長くなりそうだ。
「前にどうしてもムラムラした時に、一人でしてるのをゾフィに見つかってさ」
流石にその話をするのはどうなんだ?
ゾフィさん絡みの話はなんでも良いのか。
「それを見たゾフィがさ、『どうせならアタシが相手になってやるよ』と言ってさ」
「あっ、ごめんなさい。ちょっと待ってもらえます?」
「えっ、あぁごめん。こう言った話は嫌いだったか」
いいえ、逆です。
あっ、店員さん僕に果実のジュースと彼にお酒を、それとつまめる物を何かください。
「さて、詳しく話を聞かせてもらいましょうか。続きをどうぞ」
どうやら今夜は長くなりそうだ。
そんな相談されても、僕だって恋愛経験があるわけじゃないし。
恋愛どうこう以前に、引きこもりだったわけだし。
ハハッ、言ってて悲しくなってきた。
相談者のスキールさんはと言うと、俯いたかと思ったら照れ始めたりもじもじしたりと、まるで恋する乙女のようだ。ちょっと気持ち悪い。
それはともかく、僕に恋愛経験なんて無い。これは先に伝えておくべきだろう。
相談に乗ったは良いけど、上手くいかず後になって「実は僕、恋愛経験無いんですよ」と打ち明けるのは良くないよな。
変に期待されてからでは言いにくくなるしね。
「あの、一つ良いですか?」
「おう、良いぞ、一つと言わず、いくらでも構わないぞ。あぁそれと敬語は無しでいい。そういう息苦しいのはめんどくさいからな」
「はぁ」
スキールさんがそう言うなら、それに合わせるかな。
僕は別にどっちでも良いけど、スキールさんが敬語は嫌だと言うなら、フレンドリーにした方が良いだろう。
「その、相談に乗るのは良いけど、僕も恋愛経験が無いので」
「マジか!? 女の子4人も侍らかしてるのに?」
侍らかすって……
まるで僕が彼女達を手玉にとって遊んでるみたいじゃないか。
「いえ、彼女達とはそういう関係じゃないですから」
ちょっとだけ声が硬くなった。たとえ表情に出てなくても、声で僕がムッとしているのがわかるほどに。
しかしスキールさんはどこ吹く風といった様子だ。僕の言葉の真意を知ってか知らずか、腕を組み「う~ん」と唸っている。
「じゃあキミは、そういう関係でもない女の子達の頭を平気で撫でているのかい?」
グーの音も出なかった。
僕は何も言い返す事が出来なかった。
「それで、スキールさんの気になる相手というのは?」
「あぁ、うん。その……」
そう言うと、スキールさんはまたモジモジモードに入った。
これは長丁場になりそうだ。僕は追加で飲み物を注文した。
「スキールさん。僕が質問するのでハッキリ答えてください」
このままでは埒があかない。
会話の主導権を預けたままでは、明日の朝になっても終わりそうにない。
戸惑うスキールさんを畳み掛けるなら、今のうちだ。
「あなたの気になる女性は誰ですか? ハイッ」
「ゾ、ゾフィ……」
「今回相談したい内容は何ですか? ハイッ」
「ゾフィに想いを伝えたいが、俺の事が好きなのか不安で」
最初はもにょもにょしていたが、僕が質問する度に、スキールさんは段々とハッキリ答えるようになってきた。これならいけるな。
質問を繰り返し、スキールさんが悩んでいる内容は大体予測がついた。
彼はゾフィさんの事が好きだが、自分は勇者。
スキールさんの得意武器は剣だが、剣の実力は同じく剣を使うゾフィさんの足元にも及ばない。そんな自分が想いを伝えたところで良い返事が来るわけがない。そんな風に思っているのだろう。
そんなのは劣等感を感じてる本人が勝手に気にしているだけで、相手は気にしてない事がほとんどだと思うけど。
「剣の腕で勝てないだけで振られたりはしないですよ。ほら、スキールさんには良い所がいっぱいあるわけですし」
そんな僕の言葉に対し、スキールさんは深いため息を吐くだけだった。
顔には「そんなわけねぇだろ」と書いてある。
「じゃあエルク。もしもだ、もしもお前がアリアに結婚を申し込むとして、お前は剣の腕で勝てない事を気にしないで告白出来るか?」
ふむ。僕がアリアにか。
そりゃあ剣の腕ではかなわないけど、そんな事を気にするわけが、あるね。
よくよく考えてみれば、今の状況って『混沌』を教えてもらう前の僕が、散々イルナちゃんに「戦闘以外で役に立てば良いではないか?」と言われてるのに、それでも必死に魔術や剣術を調べてた頃と一緒じゃないか。
他の良い部分があるから諦める? そんなのは無理に決まってる。
どんなに料理を褒められても、どんなに優しいねと言われても、欲しいものはそれじゃない。
そんな事はわかっていたはずなのにな。
自分の力に浮かれ、テングになっていた自分に気付かされた。
僕の答えを待つように、スキールさんが僕を見つめている。
その視線に耐えきれず、思わず目をそらしてしまう。
「今のスキールさんが、ゾフィさんに勝てるようになるのは難しいです」
「あぁ、そうだな」
諦めの入ったような低い声で、彼はそう言った。
そんな事は、僕に言われるまでもなく本人が良くわかってるのだろう。
だが僕が言いたいのはそんな事じゃない。
「だから1回」
「ん?」
「せめて1回、1回だけでも勝てるように対策を考えてみませんか」
「1回勝った程度で効果があるのか?」
「あまり無いでしょうね」
「おい」
「でも、成功率が一番高いのは、その時だと思いますよ」
再戦を挑まれる前に、一気に告白まで持っていく。
どうせどのタイミングでも成功率は変わらないと思う。
だったらスキールさんが自信を持って「好きだ」と言えるタイミングにした方がいいだろう。
さっきみたいにモジモジして告白なんてすれば、成功する物も成功しなくなるだろうし。
「……それで、具体的な対策は何かあるか?」
しばらく考え込み、大きく頷き、そう言ったスキールさんの目からは、迷いが消えている。
どうやら決心がついたようだ。
「いえ、今の所はまだ無いですね」
「まだ、と言う事は何か当てがあるのか?」
「はい。アリアにゾフィさんと手合わせをしてもらうようにお願いするつもりです。模擬戦を元にゾフィさんに勝てる戦い方を考えましょう。ゾフィさんが強いと言っても、何処かに弱点はあると思うので」
弱点と言わなくても、何かしら苦手とする部分はあるはずだ。
「なるほど。ありがとう。エルク、キミに相談して正解だったみたいだ」
「いえ、どういたしまして」
時間はわからないけど、外は完全な暗闇で、店内の客もまばらになっているから、きっともう遅い時間だろう。
アリア達はもう先に宿に戻って寝ているかもしれない。
僕もそろそろ帰るとしようかな。
「そう言えば、ゾフィさんのどこに惚れたんですか?」
特に意味はない。ただの興味本位で言った言葉だった。
好きになった部分を聞いたら、さっさと帰ろう。
そう思っていた。
「あぁ、実は彼女見た目と言葉遣いで誤解されがちだけど、女の子らしい事にも興味があってね」
どうやら地雷を踏んだようだ。
立とうとする僕を抑えて座り直させ、スキールさんはゾフィさんの事を語り始めた。
彼女の強さを、まるで自分の事のように誇らしげに。
彼女の意外な一面を、まるで恋人のように優しく。
目をキラキラさせながら、宝物を自慢する子供のように。
僕はため息をついて、彼の話に相づちを打つ。
どうやら今夜は長くなりそうだ。
「前にどうしてもムラムラした時に、一人でしてるのをゾフィに見つかってさ」
流石にその話をするのはどうなんだ?
ゾフィさん絡みの話はなんでも良いのか。
「それを見たゾフィがさ、『どうせならアタシが相手になってやるよ』と言ってさ」
「あっ、ごめんなさい。ちょっと待ってもらえます?」
「えっ、あぁごめん。こう言った話は嫌いだったか」
いいえ、逆です。
あっ、店員さん僕に果実のジュースと彼にお酒を、それとつまめる物を何かください。
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