剣も魔術も使えぬ勇者

138ネコ@書籍化&コミカライズしました

文字の大きさ
123 / 157
第6章「宗教都市イリス」

第17話「告白、そして」

しおりを挟む
「ゾフィさんは妊娠しています」

「おい! エルクてめぇ!!!!」

「ひぇっ」

 カミングアウトした瞬間に、ゾフィさんが怒涛と共に剣に手をかけるのが見えた。
 やばい、『混沌』発動。耐えきれるか?

「待った」

 剣に手をかけるゾフィさんの手を、スキールさんが掴んで止めていた。

「ゾフィ。今エルクが言ったことは本当か?」

 真剣な顔だった。

「いやいや、何言ってんだ。太っただけだよ。な?」

 ゾフィさんの問いかけに、誰も賛同をしない。
 そもそも、スキールさん達、ずっと一緒に居るならなんで気づかないかな。
 いや、ずっと一緒だからこそか。

 突然お腹が大きくなったわけじゃなく、徐々に変化していくんだから、もし気付いても、その事を本人に問いただしても否定されたら「自分の思い過ごしだったか」で納得してしまうだろう。
 こうして改めて事実を突きつけられ、ちゃんと意識してやっと理解できるんだろうな。思い過ごしなんかじゃないって。

「ゾフィ。妊娠しているんだろ?」

「……あぁ」

 スキールさんは軽く息を吐いた後、深く息を吸った。
 告白か? この場面はもう告白でしょ?

「……っ」

 ……早く言おうよ!?
 言うかと思ったら、スキールさんはもにょもにょして深呼吸をしての繰り返しだ。ヘタレか!
 アリア達も呆れ気味の表情でその様子を見ている。ここまできてこれは流石にねぇ。
 ただゾフィさんだけは、スキールさんがもにょったり深呼吸するたびに反応してビクついて居る。見ていて可哀想なくらいに緊張しているのだろう。

 このままでは日が暮れても終わらないだろう。
 仕方がない。こうなったら『アレ』をするか。
 もしかしたらゾフィさんの反感を買うかもしれないけど、その時はアリア達に助けを求めるなりなんなりするさ。
 僕は握りこぶしを作り、腰を下ろしてお腹に力を込めた。

「男らしく決めるスキールさん、マジカッケーっす!」

 急に大声を出した僕に、皆ビクリと身を震わせた。そりゃそうか。
 勇者スキル『覇王』、正直馬鹿馬鹿しい技ではあるけど、今回だけでいい、スキールさんに勇気を与えるきっかけになってくれ。

「スキールさんの魅力に皆がメロメロっす!」

 正直凄く恥ずかしい。だって滑ってるでしょこれ。確実に滑ってるでしょ。
 ゾフィさんが怒ってくれればまだマシだった。辞めるきっかけに出来たし。
 完全に固まって怒りすらしてくれない。
 こうなったら滑ってるのが分かってて続けるしかないのだから、余計に辛い。

「えっと。エルク君がスゴイって言うんだから、スキールさん凄い、っす?」

 フレイヤさんが僕の隣に立って、同じように『覇王』でスキールさんを褒め出した。
 褒め方がよくわからないけど、一緒にやってみました感が出てる。空気を読んだら普通は出来ないような行動だ。内心で彼女の空気の読めなさに感謝した。
 フレイヤさんが行動を起こしてくれたおかげで、動き出した人物がいる。
 ケリィさんだ。

「スキール。貴方は昔から行動力があった! 今だってやれるわ!」

 フレイヤさんとケリィさんが一緒にやり出した事で、集団心理が働いたのだろう。
 アリア達も同じようにスキールさんを褒め始めた。

「うおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 スキールさんの雄叫びがこだました。
 晴れやかな顔をしている。やっと決心が付いたのだろう。
 
「決めるぜ!」

 流石スキールさん、カッケーっす。
 それじゃあ、僕たちは黙ってその様子を見届けさせてもらおうかな。
 ここは黙る場面だけど、それが分からない子も居るだろうし、手を前に出して『覇王』をストップするように促す。

「ゾフィ!」

「は、はいぃ!」

「俺と、決闘してくれ!」

 なんでだよ!
 決闘じゃなくて結婚と言う場面だろ!?
 土壇場でヘタレやがった!

「えっ? えっ?」

「俺が勝ったら、キミは俺のものだ」

 戸惑うゾフィさんに対し、スキールさんは御構い無しに剣を振りかぶった。
 戸惑い状況を理解できていないゾフィさんだが、それでも素早く剣を抜くとスキールさんの剣を払った。頭で反応できなくても、身体が反応している。
 なおも雄叫びをあげ打ち込むスキールさんの太刀筋を、ゾフィさんは冷静に受け流している。

「急になんなんだよ!?」

「ゾフィ。好きだ。俺と結婚してくれ!!!」

 言った!
 聞き間違える事ないくらい大声でついに告白した!

「ふぅん。あのヘタレやっと言えたじゃない」

 サラの言葉に全面同意だ。

「好きって、アタシ全然女らしくないし」

「そんな事ない!」

「料理だって出来ないし」

「そんなもの覚えれば良い!」

「でも……」

「あーもう、うるさい!!!」

 そう言って、スキールさんはその場で剣を投げ捨てた。
 ゾフィさんの元まで走ってくるスキールさん。丸腰の相手に剣を向けるわけにもいかず困惑して固まったゾフィさん。
 その長くて短い一瞬の隙に、スキールさんがゾフィさんを抱きしめていた。

「もう一度言う。俺と結婚してくれ」

「お、お腹の子が誰の子か気にならないのか?」

「そんなの俺の子に決まってる。違うのか?」

「違わないけどさ」

「なら何も問題ないだろ。結婚してくれ!」

「だって、あんた英雄になりたいって、沢山の人を救いたいって」

「誰かに認められたかったからだ! 俺はこの通り何も出来ない。だけど誰かに認められる自分が欲しかった」

「じゃあアタシなんかと結婚したら……」

「でもそんなのはもうどうでも良い。英雄の名声よりもお前とお前の子供が欲しい! ゾフィとその子供が俺を認めてくれるなら、俺はそれで満足だ!」

「でもアタシだぞ? アリアやサラみたいに美人じゃないし、リンみたいに可愛らしくない」

「ゾフィ。たとえキミでも、俺の愛したキミの悪口は許さない! そんな悪い口はこうしてやる!」

 あ、やばい。
 僕は咄嗟にアリアに両手で目隠しをした。
 同じように察したサラがリンに目隠しをしている。ケリィさんフレイヤさんに目隠しありがとうございます。
 カランと金属音が鳴った。スキールさんのキスで、ゾフィさんが持っていた剣を手放し地面に落としていた。

「どうだ!」

「でも……」

「まだ言うか!」

 先ほどと違って長い時間キスして動かない。

「エルク。まだ?」

「ごめん。もうちょっとだと思うから」

「うん」

 アリアは聞き分けが良くて助かる。もし本気で抵抗されたら一瞬で抜けられるだろうし。
 フレイヤさんも暴れてないか見てみたけど、意外に大人しい。人見知りしてるだけかもしれないけど、それならそれでいいや。結果オーライってやつだね。

「もう言わないと誓えるか!?」

「あと一回してくれたら、言わないかも」

 顔を赤らめ、口を突き出すゾフィさんがもう一回を要求している。

「何度だってしてやるさ!」

 凄く気まずいから、もう他所で勝手にやってて欲しい。
 子供達アリアとフレイヤさんが真似するかもしれないから、教育に悪い。
 呆れつつも、「目のやり場に困りますね」とサラに話しかける。

「ふふっ。でもスキールのやつ。やるじゃない!」

 そう言って、満面の笑みでサラは2人の様子を見つめていた。

「良いなぁ……」

 サラとケリィさんからは高評価のようだった。まじか。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

精霊のお仕事

ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
【完結】 オレは前世の記憶を思い出した。 あの世で、ダメじゃん。 でもそこにいたのは地球で慣れ親しんだ神様。神様のおかげで復活がなったが…今世の記憶が飛んでいた。 まあ、オレを拾ってくれたのはいい人達だしオレは彼等と家族になって新しい人生を生きる。 ときどき神様の依頼があったり。 わけのわからん敵が出てきたりする。 たまには人間を蹂躙したりもする。? まあいいか。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...