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12.平凡令嬢、協力の手筈を整える。
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「我々はジュリアン様の命令で、イーリス国にいる大商人の商会に協力を要請に来ました。もし断ったり渋るようなら『死神の鎌』と分かるように派手に殺すようにと承っております」
「ちょ、ちょい待ったれや自分!」
口を挟んだのは恰幅の良い男性でした。
「アンタら、ヴェラ王国のジュリアン様の使いなんやろ? 死神の鎌の名前なら知っとる。せやけど、もし本当モンのお抱えの暗殺者なら、バレるように殺すとかおかしいやろが!」
恰幅の良い男性の言う通りです。もし彼らが本当に国のお抱えする暗殺者だというのなら、その存在は国家機密に相当します。
もし暗殺者を雇っていることが周囲に知れ渡れば、どんな濡れ衣を被せられるのか分かったものではありません。
誰かの不都合になる人間が亡くなった際に、容易に責任を押し付けることが出来るのですから。
なので建前上では、暗殺者などは居なく、またそれを雇っている者も居ない。そうなっています。
だというのに、彼らは自らの存在を主張し、あまつさえ誇示するように殺すと言っているのです。
普通に考えれば愚策もいい所です。国家転覆を狙うにしても、もっとマシな嘘がいくらでもありましょう。
あまりにも嘘くさ過ぎて、本来なら笑ってしまうくらいです。
しかし、リカルド様は彼らの事を「死神の鎌」か確認し、彼らはそれに肯定の返事をしました。
それは、彼らが国に雇われた暗殺者だと自白しているようなものです。
「はい。それについてはローレンス殿の言う通りでございます」
「そこで肯定するんかいなッ! 言い訳の一つくらいしなさい!」
私はこっそりリカルド様に耳打ちをします。
「あの……。あのお方は、何が楽しいのでしょうか?」
あのお方というのは、恰幅の良い男性で、ローレンスと呼ばれた男性の事です。
先ほどからコミカルな話し方をしているせいで、今一つ空気が読めません。
「そこの姉ちゃん、聞こえ取るわ! これははしゃいどるんちゃうで! この国の方言や! 覚えときぃ!」
「も……申し訳ありません」
「まぁええわ。それで、オタクらの目的はなんなん? そないな雑な暗殺頼まれてきたんちゃうやろ?」
「いえ、ですから先ほど述べた通りです。今のジュリアン様には、それがどれだけ危険な事か理解出来ておりませぬ」
「はー、ほんまつっかえ!」
呆れた様子のローレンス様を無視するように、白マスクはリカルド様に話を続けます。
「頭領はジュリアン様に考え直していただくように申し立て、それを理由に殺されました」
「兄はそこまで愚かな事を!?」
「はい。国を想い、全ては国の未来の為を信じてやってきたつもりですが、所詮我々は死神ではなく鎌。ただの道具でしかないのだと思い知らされました」
終始抑揚のない声ではありましたが、それでも彼らの悔しさが伝わってきます。
彼らの話を聞き、一呼吸おいてリカルド様は言いました。
「……わかった。お前たちの首は私が預かる。これからはヴェラ王国の為に私に仕え、もし間違ったと道を歩んでると思った場合は、私を暗殺するが良い」
その場に居た全員が、驚きの声を上げました。
「それと、ローレンス殿、出来れば各国の有力な方々と協力を仰ぐための会合を行いたいのですが、場を設けてもらうことは出来ますか?」
「アホかお前……」
ローレンス様は静かな声で言いました。
先ほどとは打って変わった様子です。怒りが一周して冷静になってしまったような感じでしょうか?
「ワイら警護の連中とか殺されてんねんで? しかも家の中はめちゃくちゃや。これだけで賠償どれだけいくねん。それをチャラにしろと言うんか?」
「ローレンス殿……貴殿は先ほど助けてくれたら報酬は払うと言いましたよね?」
「言うてお前も皇族やろッ!? 身内の不始末やろッ!?」
「誰でも構わないとも言いましたよね?」
「うっ……ぐぬぬ……」
お二人の様子を見ているだけで、こちらが胃が痛くなりそうです。
マルク様は頭を押さえ、深いため息を吐いておられます。それもそうでしょう。
この状況では、私たちがけしかけたと疑われても仕方がないほどです。
なのに、リカルド様は今にも食って掛かりそうな勢いのローレンス様を前に、涼しい笑顔というか、悪戯が成功した子供のように笑っておられます。
どう見ても一触即発な状況です。なんならそれを理由に、ローレンス様を切り捨てて口封じでも考えているのではないかという不気味さまで感じます。
「わかった! もうええわ! 商人連中にはワイが声かけたるやさかい。お前は宗教国テミスまで行って、大司教のウェンディを連れて来い」
「あの、我々は……?」
「お前らは部屋の掃除や。リカルド様が戻るまでタダ働きや。ええな?」
「というわけなので、ローレンス殿の指示に従って死神の鎌はお掃除をお願いします。お掃除も得意でしたよね?」
「は、はぁ……」
リカルド様以外が戸惑いを見せる中、ローレンス様が指示を出していきます。
「協力言いますけど、要はジュリアン様から、国を奪い返すっちゅう事でええんやな?」
それは、リカルド様が国に反旗を翻すかどうかの確認です。
「あぁ、そうだ」
その問いに、リカルド様は静かに答えました。
「ならええわ。それと言っとくけど、これで貸し借りはチャラやで」
話は何とかまとまったようです。
私はほっと一息ついてから、胸をなでおろしました。
「ちょ、ちょい待ったれや自分!」
口を挟んだのは恰幅の良い男性でした。
「アンタら、ヴェラ王国のジュリアン様の使いなんやろ? 死神の鎌の名前なら知っとる。せやけど、もし本当モンのお抱えの暗殺者なら、バレるように殺すとかおかしいやろが!」
恰幅の良い男性の言う通りです。もし彼らが本当に国のお抱えする暗殺者だというのなら、その存在は国家機密に相当します。
もし暗殺者を雇っていることが周囲に知れ渡れば、どんな濡れ衣を被せられるのか分かったものではありません。
誰かの不都合になる人間が亡くなった際に、容易に責任を押し付けることが出来るのですから。
なので建前上では、暗殺者などは居なく、またそれを雇っている者も居ない。そうなっています。
だというのに、彼らは自らの存在を主張し、あまつさえ誇示するように殺すと言っているのです。
普通に考えれば愚策もいい所です。国家転覆を狙うにしても、もっとマシな嘘がいくらでもありましょう。
あまりにも嘘くさ過ぎて、本来なら笑ってしまうくらいです。
しかし、リカルド様は彼らの事を「死神の鎌」か確認し、彼らはそれに肯定の返事をしました。
それは、彼らが国に雇われた暗殺者だと自白しているようなものです。
「はい。それについてはローレンス殿の言う通りでございます」
「そこで肯定するんかいなッ! 言い訳の一つくらいしなさい!」
私はこっそりリカルド様に耳打ちをします。
「あの……。あのお方は、何が楽しいのでしょうか?」
あのお方というのは、恰幅の良い男性で、ローレンスと呼ばれた男性の事です。
先ほどからコミカルな話し方をしているせいで、今一つ空気が読めません。
「そこの姉ちゃん、聞こえ取るわ! これははしゃいどるんちゃうで! この国の方言や! 覚えときぃ!」
「も……申し訳ありません」
「まぁええわ。それで、オタクらの目的はなんなん? そないな雑な暗殺頼まれてきたんちゃうやろ?」
「いえ、ですから先ほど述べた通りです。今のジュリアン様には、それがどれだけ危険な事か理解出来ておりませぬ」
「はー、ほんまつっかえ!」
呆れた様子のローレンス様を無視するように、白マスクはリカルド様に話を続けます。
「頭領はジュリアン様に考え直していただくように申し立て、それを理由に殺されました」
「兄はそこまで愚かな事を!?」
「はい。国を想い、全ては国の未来の為を信じてやってきたつもりですが、所詮我々は死神ではなく鎌。ただの道具でしかないのだと思い知らされました」
終始抑揚のない声ではありましたが、それでも彼らの悔しさが伝わってきます。
彼らの話を聞き、一呼吸おいてリカルド様は言いました。
「……わかった。お前たちの首は私が預かる。これからはヴェラ王国の為に私に仕え、もし間違ったと道を歩んでると思った場合は、私を暗殺するが良い」
その場に居た全員が、驚きの声を上げました。
「それと、ローレンス殿、出来れば各国の有力な方々と協力を仰ぐための会合を行いたいのですが、場を設けてもらうことは出来ますか?」
「アホかお前……」
ローレンス様は静かな声で言いました。
先ほどとは打って変わった様子です。怒りが一周して冷静になってしまったような感じでしょうか?
「ワイら警護の連中とか殺されてんねんで? しかも家の中はめちゃくちゃや。これだけで賠償どれだけいくねん。それをチャラにしろと言うんか?」
「ローレンス殿……貴殿は先ほど助けてくれたら報酬は払うと言いましたよね?」
「言うてお前も皇族やろッ!? 身内の不始末やろッ!?」
「誰でも構わないとも言いましたよね?」
「うっ……ぐぬぬ……」
お二人の様子を見ているだけで、こちらが胃が痛くなりそうです。
マルク様は頭を押さえ、深いため息を吐いておられます。それもそうでしょう。
この状況では、私たちがけしかけたと疑われても仕方がないほどです。
なのに、リカルド様は今にも食って掛かりそうな勢いのローレンス様を前に、涼しい笑顔というか、悪戯が成功した子供のように笑っておられます。
どう見ても一触即発な状況です。なんならそれを理由に、ローレンス様を切り捨てて口封じでも考えているのではないかという不気味さまで感じます。
「わかった! もうええわ! 商人連中にはワイが声かけたるやさかい。お前は宗教国テミスまで行って、大司教のウェンディを連れて来い」
「あの、我々は……?」
「お前らは部屋の掃除や。リカルド様が戻るまでタダ働きや。ええな?」
「というわけなので、ローレンス殿の指示に従って死神の鎌はお掃除をお願いします。お掃除も得意でしたよね?」
「は、はぁ……」
リカルド様以外が戸惑いを見せる中、ローレンス様が指示を出していきます。
「協力言いますけど、要はジュリアン様から、国を奪い返すっちゅう事でええんやな?」
それは、リカルド様が国に反旗を翻すかどうかの確認です。
「あぁ、そうだ」
その問いに、リカルド様は静かに答えました。
「ならええわ。それと言っとくけど、これで貸し借りはチャラやで」
話は何とかまとまったようです。
私はほっと一息ついてから、胸をなでおろしました。
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