エルフィさんは、お出かけしたい!

青波 花実

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落とし物を拾いました ①

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「なんでこんな物が?」

エルフィは屈んで爪先に当たった物を拾い上げた。

足元に落ちていたのはガーデニングなどで使用される、移植ゴテとも呼ばれる小型のスコップだった。
野晒し状態で落ちていたせいか、刃の部分に僅かな錆が浮いているが、そんなに古い物でもなさそうだ。

(まって、道具が落ちているということは……この付近には人が居る。もしくは人の出入りがあるのかも!)

人に会うことができれば、ここが何処だか分かる。
見えてきた希望に思わず笑顔になったが、油断してはならないと、すぐにエルフィは気を引き締めた。

(この場所は森が近い、何があるか分からないんだから)

森には様々な生物が潜んでいる。
遭遇した相手が大人しい草食動物ならまだしも、熊や狼、猪ともなれば大変危険だ。
環境によっては盗賊のようなが潜伏しているし、もっと運が悪ければ魔獣だっているかもしれない。

エルフィは一人だ。自分の身は自分で守らなければいけない。
襲われた際に倒すのは難しくても、せめて逃げる時間は稼ぎたい。
いざという時、咄嗟の状況でも扱える武器があれば安心できるのだが……。

ちら、と手元のスコップを見る。

「……ふッ!」

試しに柄を握って軽く振ってみた。
小型のスコップといえど、大人用なのでエルフィの小さな手には少し余ってしまっているが、問題なく扱えそうだ。

スコップの刃は細い草や根を切れる程度には鋭さがあるし、先端は尖っている。
ナイフのようにはいかないだろうが、体重をかけて押し込むようにすれば……。

「うん、大丈夫そう」
 
『色々』と役立ちそうなのでエルフィはスコップを借りて持っていくことにした。
……願わくば、スコップが本来の用途以外の使われ方をする事態が起きなければいいが。

いずれにせよ、これから出会う相手が善人か悪人かは運次第だが、人がいるとなれば身体を隠す物の調達が本格的に必要になってくるだろう。
現在のエルフィはスコップを手にして裸一貫からは脱出したものの、全裸なのは変わりない。
もし万が一、このままの状態で誰かと出会うことになってしまったら?
相手の立場になって考えてみた。

――森の中を歩いていると、目の前に知らない人が現れて話しかけられた。
「突然の事ですみません、道をお尋ねしたいのですが」相手の立ち振る舞いは礼儀正しいが、衣服は一切身に着けておらず全裸である。
おまけに、手には錆の浮いた用途不明のスコップを握っている……。

「……怖い」

想像しただけで鳥肌が立つ。
だが最も恐ろしいのは、このままだと自分が想像の中の不審者と同じになりかねないことだ。
 
「流石に服は無理かもしれないけど……最低限の身嗜みは整えなきゃ……」

先程のスコップのように、誰かが布か何かを落としていないものだろうか。
この際ただの大きな葉っぱでもいい。切実に身体を隠せるものが欲しい。

先ずは大樹の周辺から、何もなければ草原を抜けて森へ近づいて探してみようと決めた。
裸足なので落ち枝や小石を踏んで怪我をしないよう、足元に気を付けつつ、幹に沿うように歩いて行く。

歩きながら目視で確認してみたが、大樹の生えている草原は相当に広かった。
エルフィの足だと端から端まで歩くのに5分以上は掛かりそうで、それだけの範囲に背の低い草花の他は、草原の中央に聳える大樹を除いたら灌木の一本すら見当たらない。

草原の外へ視線を移せば黒々とした森が広がっていた。
森は草原をぐるりと囲んでいるようで、そこに生える木々は特に変わった様子は見られない。

(この大樹以上に変わった木なんて、そうそう無いと思うけどね)

乳白色の樹皮や宝石のように輝く枝葉のみならず、幹は例えエルフィが5人居ても囲いきれないほど太く、樹高は草原の外周に生えるどの樹木よりも高い。
ここまで成長するのにどれほどの年月を経たのだろう。また、今日までの間にどのような事があったのだろうか。
大樹の来歴に想いを馳せながらも、エルフィは淡々と歩を進める。

「あ、戻ってきちゃった」

草原の様子を観察しつつ足元もこまめに探ってはいたが、結局は何も見つけられないまま、いつの間にか幹を一周して元の位置に戻ってしまった。

「収穫ナシ、かぁ……」

いよいよ大きな葉を探しに森へ行かなければ……などとエルフィが考えていると、ガサリと頭上から音が聴こえてきた。
葉擦れとは異なる音に、鳥が飛んできたのかリスのような小動物がいるのだろうと思い、エルフィは枝を見上げる。

何かがエルフィの頭上に落下してきたのは、その直後だった。
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