加護と呪い ~幼馴染の女の子と異世界に飛ばされたら、変な呪いがセットでした~

くらもろー

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第1章 街

第076話 闇夜

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 僕らは割と辛い味の鍋を食べきった。
 凄惨な遺体を見た後で食欲なんて微塵も湧かなかったが、食べないとこの先持たない。無理にでも口をつけた。
 するとどうだろう、鍋が辛いのでパンや飲み物が欲しくなる。
 そして口の中が落ち着くと、パンが味気なく感じて鍋をもう一口……と、言った感じでしっかりと食事を取る事が出来た。

 恐るべしバンケッタ鍋。
 手についたあのヌルヌルも食材なんだろうか? 今度きてみよう。


 食事を済ませて探索の準備が終わった頃、日は完全に落ちていた。

 今から行くタイタの迷宮1層構造で、北壁の迷宮よりも難易度は落ちるようだ。

 魔物の強さの割には質の良い魔石は取れないため、迷宮探索者には人気がない。
 ヴィネルからここまで足を運ぶなら、そのまま北壁まで行くパーティーが殆どらしい。
 だが帝国の連中や罠を考えての行動となる。楽観視できる要素は何一つない。
 僕の陰鬱な気持ちを表すかのように、曇った夜空には月明かりも星明かりもない。完全な闇だった。

 まずは昼と同じ高台まで行き、上からタイタの村全体を一望する。

「まだ村を調べるの?」

 カヨは不思議そうな顔でこちらを見る。

「いや、これが最後だよ。もしも人がいれば、家に明かりが灯ると思ったけど……やっぱり、誰もいないみたいだ」

 夜空同様に、村も完全な闇に包まれている。
 調べていない家屋もあるが、少なくとも生きている人間はいないだろう。
 だれかいるのではと、僅かに期待をしていたが現実は甘く無かった。

 僕は山頂を目指し、慎重に暗い森の中を進む。
 村からは迷宮に続く街道が伸びているが、この闇夜では罠に引っかかっる危険性が高い。
 しかし罠を見つける為にランタンの光量をあげると、遠くから敵に察知される。
 そうなると森の中を抜けざるを得ない。木々に紛れてとっさに隠れる事もできる。

 一時間ほど歩いた所で地図を確認する。もうすぐ迷宮の入り口が見える筈だ。
 ふと目を凝らすと、かなり前方に何か見えた気がした。


「カヨ、セイナ、ランタンを消してくれ」

「どうしたの?」

「いや、なんか灯りが見えた気がするんだ」

 僕らは灯りを消し、進行方向をジッと見る。

 闇に目が慣れ……前方に小さな青白い光が数個、動いているのが見えた。

「アレは……ランタンの光か?」

「そのようですね。魔道具のランタンの色です。王国製はオレンジ色ですが、あの色だと高級品……帝国製のランタンだと思います」

 セイナの声は少し震えていた。怖さからか、怒りからか……

 一方カヨは指をボキボキと鳴らしていた。
 暗がりで分からないが、きっと獲物を見つけた目をしているのだろう。

「……カヨ、一応言っておくが僕らはの目的は調査と生存者の救出。敵の殲滅じゃないからな」

「ジン、私からも一応言っておくけど、あなたが瞬きしてる間に敵が吹き飛んでても、文句言わないでね」

「いや、お前……」

「じゃあ先に謝っておくわ。ごめんね」

 ……ダメだ。僕はコイツを止められそうにない。

「……わかった。でもやるなら静かに頼む。派手にやって囲まれたなんて事になると本当にまずい」

「あっそう、静かに……ね」

 よし、大丈夫だ。わかってくれた。問題ない。

 そんな事よりも僕は僕の仕事に集中しよう。
 ま、なるようにしかならない訳だし?

 あの光の位置は多分、タイタの迷宮の入口かな

「あの光の位置、方角的にタイタの迷宮の入口だな」

「奴らは何で迷宮に?」

「そればかりは調べてみるしか……でも良かった、こっちから先に発見できて。もし逆だったら待ち伏せされてただろう。ここからはランタンを消して近づく。この先もし見張りがいたら……捕まえて尋問するか、無理なら殺すしか無いと思う」

「……そうね」

「私達に余裕はありませんからね」

 彼女らもコクリと頷い同意する。
 先程とは違い、カヨよりもセイナの方が決意が固いように見える。

 口ではあんな事を言っていたが、昨晩カヨは人を殺めた事を悔いて泣いていた。

 もし次に人を殺すなら……


 今度は僕が殺しをする番だろう。

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