加護と呪い ~幼馴染の女の子と異世界に飛ばされたら、変な呪いがセットでした~

くらもろー

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第1章 街

第080話 黒い巨人

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「きょ、巨人?」

「うん、鉄でできた巨人……村の人も冒険者も、みんなそいつに手も足も出なくて……」



 どうする?
 さっきの巨大な魔物……、鉄の巨人と戦うのか?
 しかも丸腰の女性まで連れて……

「クソ! もっと慎重に行くべきだった……!」

「ジン、落ち着いて下さい。この迷宮は山頂側に抜ける道もあります。危険ですが、一旦迷宮の奥へ逃げましょう」

 セイナに諭され思い出した。確かに地図上ではもう一つ出口があった。

「そ、そうですね。それが一番……」

 ーーガガッ!!ガリガリ!!!!

 石が割れ、削れる不快な音。
 入口から巨人が入ってきた。

 灯りに照らされ、今はハッキリと全貌がみえる。
 3mは超える黒い……金属の角ばった鎧の図体。
 左手には巨大な盾、右手には剣のような武器。

 しかし、その姿は巨人でも魔物でも、剣士でもなかった。

「な、何あれ……」

 セイナは言葉を失っている。
 この世界の住人には馴染みが無いのだろう。

 ただ、僕とカヨは同じ事を連想していたと思う。

「ロ、ロボット!?」

「……そんな感じに見えるわね」

 ポロっとでた言葉にカヨも同意した。

 剣と盾を持った、二足歩行の黒いロボット。
 そうとしか形容出来ない姿だった。
 関節も完全に機械的で、巨大な人間が鎧を着ている訳ではない。

 そして、遺跡で見たあの足跡と、このロボットの足の形がソックリだった。
 恐らく遺跡の連中はこのロボットで逃げたのだろう。

「今度は殺さずに捕らえろよ」

「任せとけって」

 ロボットの隣にいる黒装束の男が話しかけている。
 自律して動くタイプではなく、中で人が操縦しているようだ。

 いずれにせよ未知の敵。
 ほかの冒険者も手も足も出なかったなら……相手にするにはあまりに危なすぎる。

 奥に逃げて山頂側の出口に……


 ーーガチャ


 不意に後ろから扉が開く音がした。

「何だよ、うるせーな……お、おい!! 侵入者だ!!!」

 このロボットが動く大きな音を聞いてだろう、大広間の小部屋からも敵がゾロゾロと出てくる。
 僕らは通路で前後から挟まれる形なってしまった。

 本当に、本当に不味い。

「おいおい、今回は女もいるじゃねぇか!」

「よーしいいぞ!侵入者ぁ! よく聞け! 抵抗しても無駄だ! 武器を捨てれば悪いようにしない」

「むしろ気持ちいいかもなぁ!」

 敵はゲラゲラと笑いながら、こちらににじり寄ってきている。
 助け出されたばかりの女性たちは、力なくその場にへたり込んでいた。

 人数も、位置取りも、絶望的な状況だった。
 どう考えても、逃げることができない。
 にじり寄る敵、時間も味方しない。

 もう、決心するか無い。

「カヨ、ここは僕が前に出て時間を稼ぐ……その間に奥へ逃げてくれ」


 バンケッタがヴィネルの街に応援を呼んでいる。

 例え負けても、殺されなければ……助けが来るかもしれない。

 あの陰惨な拷問を受けるとしても……

 薄く、最悪な望みにかけて、僕は一歩前に出た。
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