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第1章
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そう思っていたのに、現状はどうやら思ってた以上に良くないらしかった。
何不自由なく、とはまではいかなくとも裕福な平民程度の生活を送っていたはずなのに、メイドの数が一人ずつ減っていく。夕食は品数が減り、馬車がなくなって。
私が学園入学の歳である十五歳になる頃には、我が家はれっきとした落ちぶれ貴族になっていたのだ。
「こんなはずじゃなかったんだけどなぁ……」
手間賃稼ぎの刺繍に精を出していて、うっかり声に出てしまった。ハッと気づいたけれど、目の前で同じく刺繍をしていた母にはしっかり聴こえていたらしい。
「やっぱり行きたかったわよね、王立学園」
申し訳ないと伏せられた視線と悲しげな声に、私の罪悪感がいっぱいになる。
「母様、違うわ。刺繍が!そう、刺繍がね、思ってたのと違う出来になってしまったの。本当は薔薇を刺していたつもりだったのに、私のはどう見てもダリアなんですもの」
そう言って差し出した刺繍に、母の顔は一転して笑みになる。
「そうね。リディアはほんの少し、刺繍が苦手ですものね。会社のお仕事はとっても得意なのに」
ころころと笑う母に見えないように、私は小さく息を吐いた。
厳しい我が家の経済状態を助ける為に、私は数ヶ月前から働きに行っているのだ。
仕事先は父の友人の商会だし、前世で十年程経理部でバリバリやっていたから仕事内容は得意だし、お金は貰えるしで良い事づくめだと楽しく働いている。
唯一の残念ポイントは仕事と経済状態が理由で王立学園に通えないこと。
この国では貴族の子女はほぼ例外なく学園に通うので、そこに通わないという事は貴族といえど社交の場には出られなくなる。勿論、デビュタントもなしだ。
両親は社交界に興味も執着もないから大丈夫だし、私だってそれは同じ。
でも、でもだ。
「氷の殿下には会ってみたかったかも」
小さな呟きを母は若い娘らしいものだと思ったらしい。にこりと笑った。
「建国祭のパレードで見られるわよ」
もっともな返事に「そうね」と返事をしながら、こころに思うのは別の事。
ただ見るのは違うのよ、母様。クライブ殿下を王立学園で観察したいの!だってせっかく『秘密のエルドラド』の世界にいるんだもん!!
何不自由なく、とはまではいかなくとも裕福な平民程度の生活を送っていたはずなのに、メイドの数が一人ずつ減っていく。夕食は品数が減り、馬車がなくなって。
私が学園入学の歳である十五歳になる頃には、我が家はれっきとした落ちぶれ貴族になっていたのだ。
「こんなはずじゃなかったんだけどなぁ……」
手間賃稼ぎの刺繍に精を出していて、うっかり声に出てしまった。ハッと気づいたけれど、目の前で同じく刺繍をしていた母にはしっかり聴こえていたらしい。
「やっぱり行きたかったわよね、王立学園」
申し訳ないと伏せられた視線と悲しげな声に、私の罪悪感がいっぱいになる。
「母様、違うわ。刺繍が!そう、刺繍がね、思ってたのと違う出来になってしまったの。本当は薔薇を刺していたつもりだったのに、私のはどう見てもダリアなんですもの」
そう言って差し出した刺繍に、母の顔は一転して笑みになる。
「そうね。リディアはほんの少し、刺繍が苦手ですものね。会社のお仕事はとっても得意なのに」
ころころと笑う母に見えないように、私は小さく息を吐いた。
厳しい我が家の経済状態を助ける為に、私は数ヶ月前から働きに行っているのだ。
仕事先は父の友人の商会だし、前世で十年程経理部でバリバリやっていたから仕事内容は得意だし、お金は貰えるしで良い事づくめだと楽しく働いている。
唯一の残念ポイントは仕事と経済状態が理由で王立学園に通えないこと。
この国では貴族の子女はほぼ例外なく学園に通うので、そこに通わないという事は貴族といえど社交の場には出られなくなる。勿論、デビュタントもなしだ。
両親は社交界に興味も執着もないから大丈夫だし、私だってそれは同じ。
でも、でもだ。
「氷の殿下には会ってみたかったかも」
小さな呟きを母は若い娘らしいものだと思ったらしい。にこりと笑った。
「建国祭のパレードで見られるわよ」
もっともな返事に「そうね」と返事をしながら、こころに思うのは別の事。
ただ見るのは違うのよ、母様。クライブ殿下を王立学園で観察したいの!だってせっかく『秘密のエルドラド』の世界にいるんだもん!!
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