せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月

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第2章

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お茶会で秘書にスカウトされた日から生活が一変した私を気遣っているのか、責任を感じているのか。クライブ殿下は秘書に対して過保護に心配性なところがあるのだ。近習であるロランさんに対する態度から見ても、きっと自分に近しい人を大事にするタイプなのだろう。
とはいえ、殿下と同性のロランさんへの態度では問題にならなくとも、一応とはいえ異性の私への態度としては問題がある。特に何かと近いこの距離感は危険だ。側で過ごすようになって1年ちょっとでその距離はどんどん近くなっているし、最近は他の生徒がいる場面でもうっかり出てしまうこともある。気をつけなければ「使用人に手を出す主人」として芳しくない噂が出る可能性だってあるのだ。だから私は苦言を呈す。

「殿下、何度も言っていますが距離感が間違っています。一応この学園では私も令嬢の1人なのですから、もう少し淑女に対する礼節で接して頂けますか?ちょっと……近過ぎます」

怒られないとわかっていても主人への苦言なのだから、言葉に詰まる。が、どうにか言い終えた私に、クライブ殿下はその秀麗な眉を大袈裟にあげて驚いた顔を作った。

「ほお、リディアは自分が令嬢だと自覚があるのか?」

「勿論です。殿下の秘書だから通えている状況ですか、この王立学園は貴族に席を置くものしか通えないのですから」

少し意地悪い言葉に、あえて胸を張って答える。きっといつも官吏として振る舞う私の態度への当てつけだと分かっているからだ。が、やはり殿下は1枚も2枚も上手うわてだったらしい。私の言葉に満足そうに頷いて、言い放ったのだ。

「なるほど。では勿論、豊穣祭のパーティでは令嬢らしくドレスを着て参加をするんだろうな。去年のように『秘書なので』などと言い訳をして制服のまま控室で過ごすなどという事ないと」

すぅっと細められた瞳で見つめられて、私は初めて自分が罠にかかったことに気付いた。きっとどこかのタイミングでこの話をするつもりだったのだろう。その証拠に殿下の背後でロランさんが小さく横に首を振っている。きっと諦めろと教えているのだろうけれど、私にも事情がある。

「いえっそれは……ロランさんにも先日お話をして、今年も裏方として仕事をーーー」

「ロランがなんと言ったかは知らないが、俺は許可していない。去年だってパーティに出席しないとは聞いていなかった」

「それは……」

不満だとはっきり示す言葉に返事が出来ない。殿下に話したくない事情があったとはいえ、確かに去年も許可を取らなかったのは事実だ。俯いて黙る私の頭に温もりが優しく触れる。殿下の大きな手だ。

「大体の事情はロランから聞いた。配慮できなくてすまなかった」

「そんなっ!私の衣装など……殿下の考える必要のない事ですから」

辛そうな声に思わずあげた顔は、言葉を紡ぎながらどんどんまた下がっていく。
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