せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月

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第5章

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別に辛そうでも、残念そうですらなかった。本気の本当に気持ちを寄せる相手がいないという事なのか。じゃあ先輩ヒロインはどうやってハッピーエンドを迎えるのだろう。卒業したら、本当にさっさと祖国に帰ってしまうのかしら。

「いやいやいや、それじゃエンディングにすらならないから」

ゆるゆると首を振って、不意に気付いた。扉の前でニヤニヤと可笑しそうに笑うクライブ殿下と、それを残念そうに見守るロランさん。

「いいいいいいいつから居ました!?」

慌て吃りながらもどうにか質問を口にすると、満足そうな口調で殿下が返事をする。

「んー、確か『ちゃんと分かってる』って悩んでた辺りかな」

「そ、そそそそそんな前からいたなら声掛けて下さい!ってか、気配消すのやめてください!!」

そんな前から聞いてたなんて、ほぼ最初の辺りじゃないか。ご機嫌な様子で自分のデスクに座って書類を見出した殿下を見つめて顔を青くしていると、そっと側にやって来たロランさんが、はぁっと大きなため息をつきつつ心底気の毒そうに話し掛けて来た。

「殿下はああ仰っていましたが、正確には『夢みたいだったなぁ』から聞いていました」

「えっ……」

「盗み聞きのような真似をして申し訳ない。私としては早く声を掛けるべきだと思ったのですが、殿下に止められまして……」

気の毒そうに、そして申し訳なさそうに話してくれるロランさんにもう声も出ない。羞恥に悶えるの堪えるのに必死だ。

「そ、そうなんですね。あの……ロランさんのせいではないのでお気になさらないでください」

それでもどうにか返答を取り繕って、心配をかけないように笑みらしきものを顔に貼り付けてみる。するとロランさんも私の心情を慮ってくれたのか、軽い会釈をして、自分のデスクへと歩いていった。

その姿を見送りながら、私はクライブ殿下へと、ちらりと視線を向けた。相変わらず満足気な様子で書類の処理をしている姿に、さっきまでの浮かれた思考も停止する。

生徒会室で仕事中に、1人だからと物思いに耽っていたのは私も悪いと思う。プライベートな空間じゃないのだもの、見られたことも聞かれた事も相手だけを責める訳にはいかないのも理解している。それでも、だ。部屋に入って来たなら、わざと音を立てるなりして存在をアピールするのがマナーってものではないだろうか。仮にも王太子たる立場にあるのに、貴族令嬢の独り言を盗み聞して楽しむなんて、趣味が悪過ぎる。

思わず視線に力が込もってしまったのか、殿下が不意に顔を上げたせいで視線が合った。

「なんだ?俺に直接言いたい事があるなら、時間を取るぞ」

「結構ですっ!」

いつにも増して余裕の感じるその態度に苛立った私は、ガタンと音を立てて立ち上がった。



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