婚約破棄されたので幼馴染みの王子のツテで就職しようとしたら、仕事内容が話と違います

嘉月

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婚約破棄は想定内

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何が違うのか分からずにぽかんとしてしまう彼に私は婚約の経緯を話す。

「婚約はね、コンラートが留学して一ヶ月もしないうちに侯爵家から申し込まれたの」



別に初めてきた縁談でもどうしても受けたい話でもなかった。
ひとつ年下の弟アルノーが同い年の第2王子の学友として王宮に通うようになった7歳の時から、縁談はいくつもあったのだ。勿論、本当に欲しいのは平凡な令嬢の私じゃなくて第2王子の親友のアルノーとの縁。
それは貴族社会では当然の考え方だし、幼いながらに美貌も才能も並の自覚があったから納得できる話だったけれど、親バカのレイランス伯爵夫妻は良しとしなかった。『もっと娘が幸せになれる結婚を、出来れば娘の望む結婚を』と全部断ってくれた。

だから私は婚約者の家に行って家風に合う奥方になる為の勉強をすることもなく、頻繁にアルノーにくっついて王宮に行ってはコンラートと3人で遊んだり、2人が受ける授業に混ざったり、幸せな子供時代を過ごした。
幼い時から群を抜いた頭の良さを示していたコンラートが大陸一の学術都市がある隣国へ留学するまでの6年間それは続いて、そして突然に終った。

私は13歳になっていたし、頻繁に王宮に通っていたから、仕方ないことなのだと分かっていた。
優秀すぎる第2王子は王位争いの種になる。コンラート自身がどれほど優しい第一王子を慕っていても、兄弟仲がどんなに良くても、周りの大人の思惑に巻き込まれることはあるのだ。だからこそ。
国王夫妻は第2王子を長期間の留学に出し、国内貴族と繋がらせない。彼自身も王位簒奪の意思がないことを示すために、留学後は王家以外との連絡をほどんど切った。

コンラートの学友だったアルノーは勉学に励む傍ら、その能力が認められて第一王子の側近として仕えることになった。
それも第2王子に懇意にしている特定の貴族はいないと印象付ける為もあったろう。とにかく、国王夫妻は徹底的に第2王子と国内との繋がりと断絶した。
それが国の平和に、そしていつか兄弟が仲良く生きて行ける道になると信じて。

そしてコンラートが留学して程なく、クラフェス侯爵家から縁談が来た。

今度は両親は断れなかった。クラフェス侯爵家はうちより高位の貴族だったし、なにより王妃様からのお口添えがあったのだ。侯爵夫人が王妃様の従姉妹と言うのが表向きの理由だったけど、多分本音は我が家とコンラートが近しくないと社交界に示すため。だから断れなかった。
国王夫妻の兄弟を思う覚悟を伯爵として受け入れたのだ。
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