婚約破棄されたので幼馴染みの王子のツテで就職しようとしたら、仕事内容が話と違います

嘉月

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就活の難しさは予想外

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嵐の園遊会の翌日からは別の嵐がやってきた。
予想の着いたことだったし、基本的に家族も使用人達も私を気遣ってくれたから辛くはなかったけれど。

ただ、翌日の午後、我が家を訪問したクラフェス侯爵夫妻だけは違った。いや、勿論良識ある夫妻は私を一方的に責めたりなんかは絶対しないので、その意味では違わないけど。

「うちのバカ息子が本当っに申し訳ない!キツく言い聞かせたので、どうか婚約破棄の件はなかったことにして欲しい」

テーブルに頭が付くほど下げて必死な顔で弁明する夫妻には申し訳ないけれど、私と家族の意見は一致していた。

「どうぞ頭を上げてください。どれほど謝って頂いても、婚約はこのまま破棄すべきだと思いますから」

頭を下げたままの夫妻にお父様は穏やかに答える。
午前中に家族四人で話し合った時に「男性しか知らない話だけどね」と、私の知らないアディール様の醜聞を聞いていたと言ったお父様は婚約破棄を渡りに船だと思ったらしい。

だって位が低い方の家から、また女性から婚約破棄を申し出るのは物凄く難しいのだ。それは相手が侮辱されたと受け取る場合が多いから。
この国の社交界は女性の地位がまだまだ低いから仕方ないのだけど。

お父様の言葉にはっと顔を上げた侯爵が私を見つめたので、しっかりと頷いた。

「アディール様には愛する女性がいらっしゃいます。その方を諦めて私と結婚したとして、誰も幸せにはなれません」

「そんなことはない!アディールが幸せになるためにはラーラ嬢、君がどうしても必要なのだよ。その女性のことは私も聞き及んでいるが、彼女と結婚して幸せになるとは思えん。いや、その前に絶対に結婚などさせぬ!!」

ぐっと拳を握りしめて憎々しげに話す侯爵に驚いた。きっとここに来るまでにアディール様とさんざん激しく言い争ったのだろうけれど、それにしてもいつも穏やかな侯爵がこんなに負の感情を表に出すとはびっくりだ。一体、どんなに腹立たしい話だったのか。

流石に可哀想だと思った時、応接室の隅に控えていたアルノーがだるそうに口を開いた。

「実際、まだアディール殿を説得できていないのでしょう。その状態で姉に結婚を確約させようなど、失礼ですが人格者と尊敬されるクラフェス侯爵夫妻のやりようとは思われませんね。バカ息子アディール殿にきちんといい聞かせて考えを改めさせ、一緒に謝罪させて初めて、婚約をどうするかの話ができると思うのですが、如何ですか?」

自分の父親よりも年上で高位の人相手だというのに小馬鹿にした態度を隠すことなく話すアルノーを、私は瞬きを忘れて見つめた。
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