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夏と先輩2
しおりを挟むあの日から4日たって、だんだんと不安が出てきた。
その不安ははっきりと言葉に出来るものじゃなくて、いままで味わったことのないものだった。
地元の仲間や佐々岡たちが遊んでくれて一時は気もまぎれるけど家に帰ってきて一人になるとやっぱり不安が出てくる。
気持ちを伝えてしまった後だから変な焦りが湧く。
先輩は今どこで何をしているのだろう。誰といるのだろう。
俺だって何も変わらずに過ごしているからきっと先輩もいつもと変わりなく過ごしているだろうと思うけど、その先輩の“いつも”が分からなくて悲しくもなる。
俺は何も知らない。
夜になってまたあのコンビニで先輩に会うかもしれないと思って少し遅い時間に何度かでかけてみたけれど先輩に会うことはなかった。それどころか先輩の仲間らしきガラの悪い連中とさえも会うことはなくて。
しかしもし先輩が女の人といて、その現場を見てしまったら俺はどうするだろうと考えて夜に出かけるのをやめた。
まだ8月上旬。学校は始まらない。
先輩を好きだと気付いて、気持ちを伝えて、もう遠慮するものはないと思っていたけど、先輩の家まで訪ねる気にはなれなかった。
家まで行ってそこに女の人がいたら。同じことを考える。
一度考えると止まらなくて悪いほうにばかり転がっていく考えは拭えなかった。
先輩に会いたい。
会って何をするんだと問われれば、そこまでは分からない。ただ会いたかった。
会わなくてもいい。影から、遠くからでも一目みたい。
先輩に会っていない間、考えすぎておかしな方向へいっている。思いだけが募りすぎて。
でも、それは自分だけのことしか考えていなくて、先輩の立場になって考えてみると先輩は3年生だから進学のために勉強でもしているのかもしれない。
海にいたのはたまの息抜きだったりしたかもしれない。
それに、高校生活最後の夏休みだから、仲間と遊ぶのに夢中かもしれない。俺と先輩は学年が違うから俺よりいろいろと考えることがあるのかも…。
しかし釈然としないのはあの先輩が勉強するところなんて想像しにくいからだろう。
それに仲間と遊ぶのに忙しくても長い夏休み、一日くらい俺の様子でも見に来てくれたらどうだろうと、やはり自分を出してしまう。
俺から何もしてないのに望んでばかりで嫌気がする。
今年の夏は暑くて。
夏ばてで4キロほど体重が落ちた。
もともと体重は多いほうじゃなかったから、4キロは俺にとって大きくて、目に見て分かるほど痩せてしまった感じがした。
暑さのせいで当然食欲はないのだが、その前から食欲は減退していた。
恋わずらい。
でも、全部夏のせいにして体重が減ったのは夏ばてのせいだと回りに言い聞かせた。
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