痛がる人を見るのが大好きな先輩との話

梅鉢

文字の大きさ
34 / 44

夏と先輩2

しおりを挟む



あの日から4日たって、だんだんと不安が出てきた。
その不安ははっきりと言葉に出来るものじゃなくて、いままで味わったことのないものだった。

地元の仲間や佐々岡たちが遊んでくれて一時は気もまぎれるけど家に帰ってきて一人になるとやっぱり不安が出てくる。
気持ちを伝えてしまった後だから変な焦りが湧く。
先輩は今どこで何をしているのだろう。誰といるのだろう。
俺だって何も変わらずに過ごしているからきっと先輩もいつもと変わりなく過ごしているだろうと思うけど、その先輩の“いつも”が分からなくて悲しくもなる。
俺は何も知らない。

夜になってまたあのコンビニで先輩に会うかもしれないと思って少し遅い時間に何度かでかけてみたけれど先輩に会うことはなかった。それどころか先輩の仲間らしきガラの悪い連中とさえも会うことはなくて。
しかしもし先輩が女の人といて、その現場を見てしまったら俺はどうするだろうと考えて夜に出かけるのをやめた。

まだ8月上旬。学校は始まらない。
先輩を好きだと気付いて、気持ちを伝えて、もう遠慮するものはないと思っていたけど、先輩の家まで訪ねる気にはなれなかった。
家まで行ってそこに女の人がいたら。同じことを考える。
一度考えると止まらなくて悪いほうにばかり転がっていく考えは拭えなかった。

先輩に会いたい。
会って何をするんだと問われれば、そこまでは分からない。ただ会いたかった。
会わなくてもいい。影から、遠くからでも一目みたい。

先輩に会っていない間、考えすぎておかしな方向へいっている。思いだけが募りすぎて。

でも、それは自分だけのことしか考えていなくて、先輩の立場になって考えてみると先輩は3年生だから進学のために勉強でもしているのかもしれない。
海にいたのはたまの息抜きだったりしたかもしれない。
それに、高校生活最後の夏休みだから、仲間と遊ぶのに夢中かもしれない。俺と先輩は学年が違うから俺よりいろいろと考えることがあるのかも…。

しかし釈然としないのはあの先輩が勉強するところなんて想像しにくいからだろう。
それに仲間と遊ぶのに忙しくても長い夏休み、一日くらい俺の様子でも見に来てくれたらどうだろうと、やはり自分を出してしまう。
俺から何もしてないのに望んでばかりで嫌気がする。




今年の夏は暑くて。
夏ばてで4キロほど体重が落ちた。
もともと体重は多いほうじゃなかったから、4キロは俺にとって大きくて、目に見て分かるほど痩せてしまった感じがした。

暑さのせいで当然食欲はないのだが、その前から食欲は減退していた。
恋わずらい。
でも、全部夏のせいにして体重が減ったのは夏ばてのせいだと回りに言い聞かせた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

僕の恋人は、超イケメン!!

BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

鬼ごっこ

ハタセ
BL
年下からのイジメにより精神が摩耗していく年上平凡受けと そんな平凡を歪んだ愛情で追いかける年下攻めのお話です。

ファントムペイン

粒豆
BL
事故で手足を失ってから、恋人・夜鷹は人が変わってしまった。 理不尽に怒鳴り、暴言を吐くようになった。 主人公の燕は、そんな夜鷹と共に暮らし、世話を焼く。 手足を失い、攻撃的になった夜鷹の世話をするのは決して楽ではなかった…… 手足を失った恋人との生活。鬱系BL。 ※四肢欠損などの特殊な表現を含みます。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

処理中です...