オメガ判定は一億もらって隔離学園へ

梅鉢

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2年生編

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 4月も下旬になると、朝永のため息が増えた。
 合同実践の決算中は事務方が忙しいため、あまり朝永の相手も出来ていなかったが、横に来られてため息ばかり吐かれちゃ気になって仕方ない。

「悩み事? 朝永が解決できないこと?」
「なんのこと?」

 にっこり笑顔をむけられるが、ため息は無意識なのか。
 まじまじと笑顔を見るが、クマもないし表情にそれほど疲れたものも見えなかった。

「最近ため息多いなーって」
「そう? 気をつけるよ」
「や、そうじゃなくて、何か悩んでいるんじゃないの?」
「悩んでいるわけじゃないけど、明後日からまた10日ほど実家に行くから」
「あーなるほど」

 どうやら今年度も朝永は忙しいらしい。春休みだって結局ずっといなくて、始業式ギリギリに帰ってきたくらいだし。
 それこそ、お兄さんの代わりだからと家の方にあちこち連れまわされると言っていた。
 ときどきただ笑って立っていろとだけ言われることもあるそうな。外見がいいって大変なんだなと思ったんだった。
 でも、そうか。

「GWは家なんだね」
「そう。また電話なりメッセージなり飛ばすけど、しばらく会えないんだ」
「お疲れ。それだけお父さんも朝永を頼りにしているんだよ」
「うーん」
「そこ悩むの?」
「ふふ、そうじゃないけどね」

 あ、なんだか笑って誤魔化された。でもとてもかわいい笑顔だったから許すことにした。
 朝永の笑顔に勝手に癒されていると、右側から圧力を感じた。多分いつも通り2番だと思うが、無視をするしかない。それに俺にじゃなく朝永にその怒りをぶつけて欲しい。なかなか止まない圧力に、どんよりし始めた俺を不思議に思った朝永は顔を覗かせてきた。

「14番こそどうしたの?」
「別に、そろそろ席戻る?」
「そうだね、いい時間だ。またあとで」

 何も返さず、ヒラヒラと手を振った。
 そして朝永が席に戻って2番にも笑顔が戻った。それを確認した後、椋地に小声で声をかけた。

「もしかしてあの人? 椋地を使う気満々の人って。朝永の隣」
「あんな分かりやすい人なら覚えていれるよ。あの人じゃない」
「そうなんだ」

 朝永に近づきたくて椋地に近寄っているのかなと思ったけど違うのかな。
 でもあとはやっぱり検討が付かない。

「あの人だ」
「ん? どこ?」
「左端の髪の毛茶色の人」
「あー、8番……」

 1つ上に気になるアルファがいるって聞いたばかりのような気が。
 それが本当なら確かに椋地には興味ないはずで。でも使う気満々とは。椋地と仲のいいアルファなんて朝永しか知らないし。
 8番を見ながら考え事をしていると椋地に頭をつかまれ、強引にPC画面に向かされた。

「じろじろ見るの止めてくれる」
「ああ、ごめん。つい考えこんじゃって」
「これと言って害はないから、何もしないでよ。絶対」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」

 呆れ顔で睨んでくるという芸当を見せた椋地はこれ見よがしにため息を吐いた。

「だいたい忘れてと言ったんだけど」
「分かったよ。でも、8番て結構普通の感じの人だし、椋地を使う気満々の意味が分からなくてさ。そんな人じゃ無さそうなんだけど」
「人は見かけによらないでしょ。キミに見る眼があるとは思えない」
「ひどっ」

 だがしかし。去年のこともあるため反論したいが出来ない。黙って画面に数字の打ち込む作業を再開した。
 俺に見る目がない……。心の中で反芻した。
 結構ショックな言葉ではある。が、朝永と椋地のことはアルファの中でも飛びぬけて普通の感覚を持っていそうとは思っているし、仲がいいとも思っているだけにやはりショックだ。椋地は自分を否定するのだろうか。

「俺は朝永も椋地もいい人だと思うし、こんな性別なければ普通の友達にもなれたと思うくらい人として好きなんだけど。それでもやっぱり人を見る眼ないの?」

 無表情に戻っている綺麗な椋地の横顔。
 姿勢も良くて真似しようにもできない。これは小さい頃からの躾の賜物なのだろう。

「ないだろうね。俺も北原も何かを得る代わりに色んなものを捨ててきているから。その過程で欠陥は出来ているね」
「そ、そうなんだ」

 言っている意味があまり分からないけど、二人はどうやら欠陥があるらしい。でも完璧な人っていないし、何かしら欠陥があるほうが人間らしくていいんじゃないかな、と思うけどどうなんだろう。アルファは欠陥があったらまずいのかもしれないけど、お家的に。

「あれだね、欠陥があっても、2人とは話してても楽しいと思えるし、人間らしくていいんじゃないかな」

 無表情の横顔は変わらない、けれど瞳がほんの僅かに細められた。

「キミはそのままの心を持って北原の横にいたらいいよ。キミが変わらなかったら、北原も変わらない」
「俺が変われば朝永も変わっちゃうの?」
「鬼にも仏にもなれそう、とは思ってるけど」
「おにぃ? じゃあ今はなんなの?」
「人間でしょ」

 何がおかしいのか、椋地は自分で言った言葉にくすくすと楽しそうに笑っていた。

「朝永が鬼、ねぇ」

 まったく想像つかなくて背もたれに背中を預け、うーんと背伸びをした。かと言って仏の感じもしない。

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