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第一章
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しおりを挟むこの日はなんだか朝から体調が悪かった。
頭がズキズキする。
台風が近くなっているせいだとは思うが、季節の変わり目も頭痛の種だった。
朝食のあと、掛かりつけの医者からもらった頭痛薬を服用した。よく効く薬で1度飲めば2日ほどは何もなく過ごせた。
効くまでのあと20分ほど、ベッドに横になることにした。始業式まで40分以上余裕がある。
この前、二ノ瀬が吉岡にメッセージで会議のことを伝えたら会議には出るとのことだった。
今日の会議は吉岡に記録してもらおう。
眼を閉じて考え事をしていたせいか、俺はいつの間にか眠ってしまっていた。そういえばこの薬は眠りを促す作用もあったのだった。
スマホからメッセージの通知音が聞こえ、ハッとした。
頭痛はなくなっているがよく眠っていたため瞼が重い。スマホを覗けばメッセージが映し出されていた。
“さぼり?”
北村からだった。そりゃ始業式にいなんだもんな。クラスが隣で並びも近いから気がついたんだろうか。
スマホを手に取り仰向けになる。今から準備しても10時を過ぎてしまいそうだし、とにかく完全に遅刻である。しかしあとはHRくらいしかないから行く必要もない。役員は免除もあるから、先生達もゆるく見ていてくれていて休んだって連絡なんて来ない。
“なんか寝てた”と北村に送ればすぐに返事は来た。
“さぼりね”と。
具合は悪かったしサボったつもりもないけど。
面倒くさくてスマホを横に置いてベッドから起き上がった。喉が渇いたからジュースでも飲もうと部屋を出た。
俺って仲良しの友達も少ないわ、趣味もろくにないわ、彼女はいないわ、童貞だわ、人生楽しめてない。
この境遇が恨めしいわけではないけれど、なんだかもうちょっと刺激的な何かがあってもいいんじゃないか。
生徒会の仕事は充実しているけれど、それを取ったら何も残らない気がする。
俺には何があるんだろう。
今までこんなこと、考えたこともなかった。
忙しいことは幸せだと思う人間なんだろうな、俺。
内申のための部活でしかなかったし、やめて悔いはないけれどやっぱり寂しいんだろう。
今度暇なときは、田口のように部活に入り浸るのもありだな。
缶の炭酸飲料を買ってぐびぐび飲む。これは飲みやすいから鼻から吹かずにグイっといけちゃう。
容量も少ないから盛大にげっぷをしながら空き缶をボックスに投げた。
暇だし、エロ動画でも漁ろう。
部屋の前まで来て立ち止まる。右が俺の部屋、左が吉岡の部屋。
あれから本当にずっと休んでいる。急ぎの仕事もないから吉岡の机には何も仕事を回さなかった。でもきっと夜にでも、仕事があるかどうかの確認をしていることだろう。
吉岡のことを考えていたら無意識に、部屋のコールボタンを押していた。北村にするように連打をするのではなく、一度だけ押してみた。
田口に言わせれば部屋にいないことの多い吉岡だ、今だっていないかもしれない。でも始業式に出ているとも思えない。
部屋にいるのなら、カメラから俺の姿が映し出されているはずだ。
いやなら出なければいいだけの話し。もし、この部屋にいるのなら。
いつまで経ってもドアも開かず、何の反応もなかった。
コールを押したくせに、出てこられても用事もない。姿が見たかっただけなのか、何がしたかったのか。
でも出ないことで俺は少しがっかりしていた。
諦めて自分の部屋へと戻った。
吉岡の部屋では、ずっとカメラから映し出された俺を覗いている吉岡がいたことなんて、当然俺は知らない。
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