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第一章
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しおりを挟む残り数名となり、廊下での処置もやめにした。
もう大丈夫だろうとふんで保険医に一言声を掛けて俺たちも本部へと戻ることにした。
保健室では何もせず、俺の後ろにべったりとしていた吉岡。こいつは本当にただいるだけだった。
廊下に出たところで保健室に来る前のことを思い出した。
「また前をあるきゃーいいわけ?」
「横でもいいですけど」
「あそ」
行きと同じく前を歩いた。
廊下を行き交う生徒はもうほとんどいない。
このどこに俺が危ない要素があるっていうんだと、また少しむしゃくしゃし始めた。
俺1人、皆からわーわー言われて面白いわけがないんだ。
「だから、俺1人でも大丈夫だったんだよ」
後ろからぴったりとくっついてくる吉岡に苛立ちを隠さない口調で言った。
「あのですね、いいましたよね、俺。危ないんですよ、佐野さん」
吉岡も吉岡で、先ほどよりも呆れた声だった。
その言葉に立ち止まった俺は後ろを振り返った。
吉岡は眉間に皺を寄せながら俺を見下ろしていて。
「でも、」
「今ここで佐野さんを襲うなんて簡単なことなんです。俺にとっては」
「お、襲う!?」
「襲いませんよ。もしもの話です」
「またもしもの話かよ……」
ない話をするのが好きなんだな、吉岡は。それか妄想好きか。俺だって嫌いなじゃないが、この話題は受け付けない。
襲うなんて恐ろしい単語が出てきたが一気に気が抜けた。肩を下ろして嫌みっぽく聞こえるようにため息をついた。
「俺、そんなに弱く見えるのかよ。……運動神経いいし、結構力もあるんだけど」
「でしょうね。でも本気の喧嘩や、不意打ちには弱そうですけど」
「……まぁ本気の殴り合いとかしたことないけど。でもその辺にいる奴らには絶対負けないし」
「じゃあ今、俺とやり合いますか? 俺強いですけど」
またおかしな話を言い出すと思ったが、表情にふざけたものはなく、苛立ちを隠せないのか目が座っている。
七三分けの銀縁メガネと外見は真面目そのもので、体格もちょっとひょろっとしていて、そんな男とやり合って負ける気がしないけど、俺を挑発し続ける吉岡の気迫はちょっと怖いものがあった。
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