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第一章
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午後からは特に問題もなく無事に終わり、閉会式も恙無く終わりを向かえて体育祭終了となった。
喧嘩も少なかったし、今年は近年稀にみる出来のいい体育祭だったんじゃなかろうか。
やっとこれでのんびり出来ると思っていたが、片づけているときに「明日はこれの反省会がありますよ」と吉岡から告げられ、忘れていたことに気がつく。
このまま忘れていたかったが、よく出来た書記をもって俺はなんて幸せだ、あーあ、とため息を吐いた。
部屋に戻って先にシャワーを浴びた。さすがに汗でべたべたする。
さっぱりしたところで北村の部屋のコールを連打。
さすが北村君はすぐに出てきた。
「はいはい、夕食か?」
「一緒に食おー」
「ちょっと待ってて」
ドア横の壁に寄りかかっているとガチャリと南の部屋のドアが開いた。
ただのTシャツにデニムとラフな姿だったが、髪型がいつもよりも気合入れてセットしているようだった。
「お、佐野。また海斗のストーカー?」
「誰がストーカーだ」
「たまには違うやつと飯でも食べてみたら?」
「うっせー色魔」
「ごめんね、童貞」
ニヤニヤと笑いながら近づいてきて俺に悪態をつく。
ムカついたら負けだと思うが、ダメだ。ムカつく。そして南は楽しそうだ。完全に負けじゃないか。
「おっと、佐野になんて構ってられない。俺はこれから下界に行ってくるんで、じゃーね~」
手を振りながら南は俺の前を通り過ぎるが、急いでいるわけでもなさそうにゆらゆら歩いている。
この学園と学生寮が高台にあるため、下界とは街のことを差していた。いつから使われ始めたのかは知らないが、先輩がたが使っていて、自然と下級生達も使い始めるようになっていく。
街に行くには申請をして寮長の許可がいるのだが、生徒会はだいたい申請すれば通る。
俺は滅多に行かないが、下界に行く奴を見ると久しぶりに行こうかなという気になってきた。
「お待たせ」
「じゃーいこーぜ」
シャツに腕を通しながら歩く北村の横に並ぶ。
北村と南はつるんだりしないが仲良しだ。だから話題にしてみる。
「今、南が下界に行ったわ。髪の毛、すげー気合入ってたし」
「あー。じゃ女かも。カナタが夜に下界に行くときは大抵女だった気がしたし」
「……ほんとフットワーク軽いな、あいつ」
ここの学園の男も食い散らかしているくせに、外では女って。
根っからのクズじゃねーか。節操がなさ過ぎるわ。
もてる男の考えていることはよく分からん。
その欠片でも俺も女にもててみたい。
食堂に着き、手前の空いているテーブルにつく。タッチパネルを手に取ると、まだ座っていなかった北村が「専用ルームに電気がついている」と言った。生徒会専用ルームは奥まった場所にあり、あまり使われることがない。俺も北村も、というか2年はあまり好んでは使わない部屋だ。入り口から部屋までが遠くて面倒なのだ。
「へー珍しい」
「行ってみるか?」
「ちょっと覗くか」
席を立ち、奥の部屋に向かう。
多分1年の誰かだと思った。
歩いている途中、なにやらあちこちから視線を感じるが無視だ。書記長になって前よりも視線を感じることが多くなった気がする。だいぶは慣れたけど。
「カナタは下界、あとは松浦と1年4人くらいか」
「じゃー1年だったら親睦深めるために一緒に食っておくかー」
「そうだな」
部屋に着き、意気揚々と「ハロー!」という言葉とともにドアを思い切り開けた。
ガタッと椅子の引く音がして、そして中にいた人物も俺たちも同時に固まった。
「……失礼しましたー」
開けたばかりのドアを閉めた。北村も何も言わないからコレでよかったのだろう。
中には椅子に座った松浦が、青木を向かい合わせで跨るよう自身に乗せていたのだから。服は着ていたが、二人は密着していて青木の腰に回された松浦の手が眼に焼きついてしまっている。
確かに寮の廊下で見た二人には何かあるだろうなとは思っていたけれど、身近な人間のそんなシーンが見たことないからモゾモゾとして落ち着かない。のど元が痒い感じ。
「……部屋でやって欲しいな」
「……そうだな」
「……見なかったことにしようか」
「……そうだな」
その後、俺と北村は二人の話題には触れることなく夕食を済ませた。
第1章 おわり
喧嘩も少なかったし、今年は近年稀にみる出来のいい体育祭だったんじゃなかろうか。
やっとこれでのんびり出来ると思っていたが、片づけているときに「明日はこれの反省会がありますよ」と吉岡から告げられ、忘れていたことに気がつく。
このまま忘れていたかったが、よく出来た書記をもって俺はなんて幸せだ、あーあ、とため息を吐いた。
部屋に戻って先にシャワーを浴びた。さすがに汗でべたべたする。
さっぱりしたところで北村の部屋のコールを連打。
さすが北村君はすぐに出てきた。
「はいはい、夕食か?」
「一緒に食おー」
「ちょっと待ってて」
ドア横の壁に寄りかかっているとガチャリと南の部屋のドアが開いた。
ただのTシャツにデニムとラフな姿だったが、髪型がいつもよりも気合入れてセットしているようだった。
「お、佐野。また海斗のストーカー?」
「誰がストーカーだ」
「たまには違うやつと飯でも食べてみたら?」
「うっせー色魔」
「ごめんね、童貞」
ニヤニヤと笑いながら近づいてきて俺に悪態をつく。
ムカついたら負けだと思うが、ダメだ。ムカつく。そして南は楽しそうだ。完全に負けじゃないか。
「おっと、佐野になんて構ってられない。俺はこれから下界に行ってくるんで、じゃーね~」
手を振りながら南は俺の前を通り過ぎるが、急いでいるわけでもなさそうにゆらゆら歩いている。
この学園と学生寮が高台にあるため、下界とは街のことを差していた。いつから使われ始めたのかは知らないが、先輩がたが使っていて、自然と下級生達も使い始めるようになっていく。
街に行くには申請をして寮長の許可がいるのだが、生徒会はだいたい申請すれば通る。
俺は滅多に行かないが、下界に行く奴を見ると久しぶりに行こうかなという気になってきた。
「お待たせ」
「じゃーいこーぜ」
シャツに腕を通しながら歩く北村の横に並ぶ。
北村と南はつるんだりしないが仲良しだ。だから話題にしてみる。
「今、南が下界に行ったわ。髪の毛、すげー気合入ってたし」
「あー。じゃ女かも。カナタが夜に下界に行くときは大抵女だった気がしたし」
「……ほんとフットワーク軽いな、あいつ」
ここの学園の男も食い散らかしているくせに、外では女って。
根っからのクズじゃねーか。節操がなさ過ぎるわ。
もてる男の考えていることはよく分からん。
その欠片でも俺も女にもててみたい。
食堂に着き、手前の空いているテーブルにつく。タッチパネルを手に取ると、まだ座っていなかった北村が「専用ルームに電気がついている」と言った。生徒会専用ルームは奥まった場所にあり、あまり使われることがない。俺も北村も、というか2年はあまり好んでは使わない部屋だ。入り口から部屋までが遠くて面倒なのだ。
「へー珍しい」
「行ってみるか?」
「ちょっと覗くか」
席を立ち、奥の部屋に向かう。
多分1年の誰かだと思った。
歩いている途中、なにやらあちこちから視線を感じるが無視だ。書記長になって前よりも視線を感じることが多くなった気がする。だいぶは慣れたけど。
「カナタは下界、あとは松浦と1年4人くらいか」
「じゃー1年だったら親睦深めるために一緒に食っておくかー」
「そうだな」
部屋に着き、意気揚々と「ハロー!」という言葉とともにドアを思い切り開けた。
ガタッと椅子の引く音がして、そして中にいた人物も俺たちも同時に固まった。
「……失礼しましたー」
開けたばかりのドアを閉めた。北村も何も言わないからコレでよかったのだろう。
中には椅子に座った松浦が、青木を向かい合わせで跨るよう自身に乗せていたのだから。服は着ていたが、二人は密着していて青木の腰に回された松浦の手が眼に焼きついてしまっている。
確かに寮の廊下で見た二人には何かあるだろうなとは思っていたけれど、身近な人間のそんなシーンが見たことないからモゾモゾとして落ち着かない。のど元が痒い感じ。
「……部屋でやって欲しいな」
「……そうだな」
「……見なかったことにしようか」
「……そうだな」
その後、俺と北村は二人の話題には触れることなく夕食を済ませた。
第1章 おわり
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